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Drive  作者: Lucy
3/3

【3】革命

リストラされた4人が会社への復讐として社長の息子を誘拐しようと計画した。入念に準備された誘拐作戦はいよいよ実行されたのだった・・・。

「はい。品川です。」

「もしもし。赤坂です。」

「おお。久しぶりだな。そっちはどうだ?」

「まあ、なんというか・・・それより品川さんはどうなんですか?次の就職先はまだ決まっていないんですか?」

「痛いところつかないでくれよ。なかなか厳しいもんだよ。」

「そうですか・・・」

「立川たちも元気でやってるか?」

「・・・。品川さん。ちょっと聞いてくれますか?」



 赤坂の話によると、新しくきた係長が社長のコネでその地位にいるため、全く管理能力がないこと、給料も以前より20%も下げられたこと、休日も格段に減ったこと、特に品川の直属だった立川と大田に対し、あからさまに強くあたるのだという。もう我慢ならないといった表情が電話越しからでも伝わってくる。



「なるほど。そいつは理不尽だな。」

「自分は品川さんの直属というわけではないのでまだましなんですが・・・。それでもこれは明らかに不当ですよ。」

「その新係長さんにはその不平は伝えたのか?」

「はい。しかしこちらが何か言うとすぐ用を思い出したからまた後で、と逃げるんですよ。」

「うーむ。」

「それでですね。昨日立川と大田が係長を逃さないように囲んで不平を訴えたんです。そしたら係長が突然、



『お前たちは解雇だ!』



って言い出しまして。」

「なんなんだそいつは。お子様すぎるだろう。」

「ええ。そこへタイミング悪く社長が現れましてね。係長の奴あることないこと社長に言ったらしいんですよ。立川と大田について。」

「それでどうなったんだ?」

「立川たちの言い分も聞かずに昨日付けで解雇ですよ。狂ってますよあの社長。」



「そんな馬鹿な!」



「まだ続きがあるんですよ。立川たちへの解雇通告を聞いて自分は納得がいかなかったのでこれは不当解雇だと社長に訴えたんです。そしたら社長に歯向かうとはいい度胸だなっていいながら自分にも解雇通告を突きつけてきたんです。自分はもう呆れてしまいました。」

「・・・言葉もないよ。結局は俺が気にくわなかったってことか。」

「そうみたいです。元からあの係長の下にいた連中は休日も今までどおりで、別段強く当たられることもないようですし。」

「・・・。まああの会社のことは忘れよう。所詮はそんな程度の会社だったってことさ。」



「・・・品川さん。悔しくないんですか?」



「・・・悔しいけど仕様が無いだろう。次を探そう。」

「自分はこのまま引き下がることなんてできません。何とかしてあの淀川源次に一泡吹かせたいんです。」

「一泡吹かせるって言ったってどうやって?」

「管理部の藤原って奴いるの知ってますよね?」

「ああ。藤原澪って男か。そいつがどうした?」

「あいつ話が分かる奴でしてね。自分たちは不当解雇だって賛同してくれたのそいつだけなんですよ。あとはみんな恐れて何も言えない中でですよ。なかなか熱い奴でしてね。しかも社長の家族となにやら付き合いがあるらしいんですよ。」



「・・・赤坂。お前何を企んでいる?」



 そこで俺は赤坂が淀川源次の息子を誘拐し、奴の慌てふためく顔が見てみたいという、とんでもない告白を聞いた。電話の用件はそれに乗るか乗らないかというものだった。立川と大田は乗ると言っているらしい。俺は最初何を考えているんだという口調で赤坂をなだめたが、俺の中にも一泡吹かせてやりたいという思いがあったのだろう、いつしか赤坂に同調するようになっていった。



 今の俺には何か起爆剤が必要だった。この生活から抜け出したいという一心しかなかった。革命家になってクーデタを起こしてやろう、全ての労働者の代表となって抗議してやろう。そんな思いに駆られていた。



『会社を変える、社会を変える。』



というのは凄まじいエネルギーが必要だ。並のサラリーマンでは到底不可能なのだ。



 だが今の俺はどうだ?

 ニート同然の生活に陥れられたおかげでエネルギーは有り余っている!

 今の俺にならできるのではないか?

 それに俺だけじゃない!

 赤坂や立川や大田だっている!

 藤原という心強い味方だっている!できる!!

 

 いや、

 やるなら・・・今しかない!!!







 そうだ・・・。


 ずっと思っていたことじゃないか。


 価値のある会社なんて一握りしかないんだ!


 それ以外はゴミ同然の企業!


 社長だけが私腹を肥やし、社員は低賃金で残業!


 それが今の日本の現実!


 そんな社会のどこが幸せか!


 どこが平和か!


 俺が社会を変えてやる!!


 革命を起こしてやる!!!


 古き社会をぶち壊し、新たな社会を築くんだ!!!



 俺はかつての係長に戻り、彼らを束ね、作戦会議を重ねた。個人を本名で呼ぶのは危険なのでコードネームで呼ぶこと、事前調査は入念に行うこと、連絡は常に取り合うことなどを取り決めた。

 また藤原からは、社長やその家族周辺について色々聞き出した。彼に誘拐作戦に参加するかと問うと、彼は誘拐はよくないといって参加してくれなかったのは残念だが、これだけ情報があれば充分だろう。



 俺たち4人がいれば容易にできるはずだ!

 万が一失敗したって、これがニュースに流れるだろう・・・。

 そうすれば、どこかの企業のどこかの社員が、きっと同じことをやるに違いない・・・。



 捕まったって無駄じゃない!

 これは革命のハジマリなのだから・・・。

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