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4-01:それぞれの日々~リーフィアの帰郷~

大ッ変長らくお待たせしました。

執筆が進まず、全然4章の全量を書ききるには足りていませんが、不定期で更新を再開します。


とりあえず、今日は2話出します。3話目以降は現状未定です。

 レオナルト率いる魔族兵たちにリーファを加えた一行は、王都を後にして7日ほどをかけ、大陸中央の高山地帯にある帝国城へ戻ってきた。

「第三皇子、レオナルト殿下のご帰還である。開門!」

 およそ他種族が訪れることのない場所ではあるが、ゼロではないため、普段は城門は堅く閉ざされている。城門の横に門番がひとり交代制で配置されており、レオナルトが近づいてくるのを確認すると、城門の中にいる兵とともに城門を開け放った。

「レオナルト殿下、無事のご帰還、心よりお喜び申し上げます!」

「うむ、ご苦労。その言葉、姉上にもかけてやってくれ」

 門番の兵がビシッと敬礼をして一行を出迎えると、レオナルトは鷹揚に頷き、自らの後方に続くリーファを見やりながら言う。

「リ、リーファ様!? よくぞご無事で戻られました!」

 レオナルトの言葉で初めてリーファがいることに気づいた門番が慌てた様子で解きかけた敬礼をやり直す。

「ええ、ご苦労様。ふう……本当は戻るつもり、無かったんだけどな」

 弟と同じように見張りの兵を労った後に続けて小さくつぶやいたリーファの声は、無事の帰還を喜ぶ兵たちの声にかき消されて誰にも届かなかった。


「皇帝陛下、第一皇女リーファ、ただいま戻りました」

 一行が帝国城に到着してから半日も経たないうちに、リーファはレオナルトとともに皇帝エスペラードに謁見していた。

「うむ、リーファよ、勇者に敗北しながらもよくぞ無事で戻ってきた。レオナルトも、任務ご苦労であった。さて、レオナルトよ、そなたは下がってよい。他の者も、しばらく席を外してくれまいか。私はリーファと2人きりで話がしたい」

 謁見の間にはエスペラードとレオナルトやリーファの他にも、トーギャンをはじめとする側近たちが数名並んでいたが、エスペラードはレオナルトとリーファにそれぞれ労いの言葉をかけると、レオナルトと側近たちに下がるよう申し付けた。


「ここからはもう公式な謁見ではない。リーファよ、この父にもっと顔をよく見せてくれ。――1ヶ月ほどしか経っていないが、ずいぶん変わったな。さて、改めて言おう。リーファよ、よくぞ無事で戻ってきてくれた。勇者に敗北したという報告を聞いたときにはさすがに焦ったぞ。だが、その勇者の温情があったとはいえ、かの者の従者になったのはいただけぬ。我ら魔族の吸精が効かなかったのは予想外だとしても、魔法を至近距離から放てば仕留められたのではなかっただろうか。そのあたり、お前はどう考えているのだ?」

 余人を排し、父と娘2人きりで久しぶりの会話が始まる。話題は、必然的にリーファの出撃の目的であった勇者の討伐戦と、その後について。

「確かに、結果だけを見れば、あの場で攻めなかったのは私の失敗でした。ですが、あの時は吸精が通用しなかったことで気が動転してしまい、何をしてもかの者を倒せる気がしなかったのです。それならば、一度敗北を認めて従者、というか旅の仲間として行動をともにし、スキを突いて仕留める。そういう心積もりでいたのです。それもかの者が創造神より受けた祝福による、異常な成長力にすべてご破算となってしまったわけですが」

 リーファは失敗を潔く認めたうえで、従者としてふるまった理由を話す。

「そうであったか。して、かの勇者は何のために創造神に喚び出されたのか、その理由は聞き出せておるのか?」

 エスペラードは深く頷くと、次の質問に移った。

「はい。お父様が進めておられる、大陸統一を成し遂げさせないために、かの勇者2人はこの世界に喚び出されたようです。しかし、方法までは問わないそうで、私が付き従った勇者トーマは、力で止めなくても、対話で止められるならそれに越したことはない、と言っていました」

 リーファは頷きを返し、以前にトーマから聞いていた話を伝えた。

「まあ、おおむね思っていた通りであるな。我ら魔族のみを冷遇するあの創造神のやることだからな。では、最後の質問だ。リーファよ、お前は今後どうするつもりだ?」

 エスペラードは自身の想像が間違っていなかったことを確認すると、リーファに今後のことを訊ねる。

「どうする、とおっしゃいますと?」

 それだけでは質問の意図を掴み切れなかったリーファが聞き返すと、

「おそらく、お前はかの勇者との暮らしに未練を残しているのだろう。だが私はヒューマン、エルフ、獣人、ドワーフの4種族を支配下に置き、大陸を統一する方針を変えるつもりは無い。だからもしお前が勇者側に付くというのならば、第一皇女の地位を剥奪し、処刑もやむを得ないのかもしれぬ。だが、いくら継承権に関わらない皇女とはいえ、我が子の中でただひとりの愛娘だ。それを手にかけるなど、したくはない。だから、問うのだ。お前は我が帝国か、それとも我が帝国の覇道を阻まんとする勇者に付くのか、どちらであるか、と」

 エスペラードは真意を明かす。彼には4人の子がおり、第一皇子ヴィルフリートはすでに皇太子としてエスペラードを補佐している。第二皇子マインツ、そして第一皇女リーファ、第三皇子レオナルト。第二皇子マインツはアンナ抹殺任務に送り込まれ、任務失敗で死亡している。これ以上血を分けた子を失いたくないものの、帝国の方針に従わないのならば処刑もやむなしと考え、リーファの回答を待つ。

「私は……勇者の側に付きます。ただ、かの勇者――トーマさんは、お父様の大陸統一を止めようとするにあたって、魔族ごと攻め滅ぼそうという考えはないようです。魔族もヒューマンも関係なく、互いに手を取り合って共存することは不可能ではないはず、そういう考えに私は深く共感し、皇女としては二度と戻らないつもりでした。次に帝国の地を踏むのは勇者のパーティとともに、お父様の説得にあたるときだ、と思っておりましたので。トーマさんの望む平和な未来を見ずして死ぬわけにはまいりませんので、処刑は困りますが、それ以外であれば追放でもなんでも、いかようにも処罰を受けましょう」

 リーファは少し言いよどんだ末に、勇者トーマに付く、という決断をした。帝国を捨てる意思を正式に表明したことになる。

「ハッ、共存など、できるわけがなかろう。子供の絵空事にすぎぬ。止むを得ん、リーファよ、ひとまずひと月ほど、自室で謹慎せよ。その間に、考えを改めるのだな」

 するとエスペラードは勇者トーマの掲げるヒューマンと魔族の共存などあり得ぬと鼻で笑い飛ばした。そのような考え方に傾倒している愛娘の目を覚まさせるため、ひと月の自室謹慎をもって処分とすることにした。

「謹慎したって、考えを改めるつもりはないんだから……!」

お読みいただき、ありがとうございます。

4-02:それぞれの日々~俺たちの1ヶ月~

1/29 14:00に更新します。

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