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3-09:今後の活動指針[キャラクターステータス付]

 屋敷の部屋割りは、思ったよりすんなりと決めることができた。

 屋敷の2階は、中央の階段を挟んで東西対称の構造になっており、東側に4部屋、西側に4部屋。階段の正面には倉庫やトイレがある。今でこそ、王都の建物のトイレはほぼ全てが水洗になっているようだが、この屋敷が建てられた頃はおそらくそうではなかったと思われる。トイレだけ、屋敷のほかの部分と比べて真新しい。現代日本風に言えば、そこだけ集中的にリフォームしたのだろう。

 俺たち4人は、屋敷2階の東側に固まるようにして部屋を決めた。俺は階段がある北側の一番端。隣にアンナ。向かいにはリーフィアが陣取り、最後に斜向かいをユズが取った。正直、アンナとリーフィアあたりはもっと揉めるかと思ったが、部屋割りごときで揉めるほどのことも無い、ということか、それとも俺が自意識過剰なだけなのか。まあ、何事も無いに越したことは無いからいいんだけど。

 ちなみに、階段がある北側の最西端にはアドルファスさんが、その向かいにはテリーサが入った。もっとも、仕事熱心な2人はともに部屋は寝るときだけしか戻ることはないだろう、って言ってたけどな。残りの2部屋は空室。屋敷の倉庫代わりにはなるだろう。

 俺としては、これ以上同居人を増やすことは無いと思っている。もし仮に創造神さまが勇者の素質を持つ者を新たに召喚したとしても、よほど近しい知り合いでもない限りは迎え入れることはしない。



「さて、新たな拠点も決まったし、今後の行動指針を決めていきたいな。みんな、何かある?」

 ひとしきり落ち着いたところで、俺たちは今後のことを話し合うために俺の部屋に集まっている。

「わたしは、ジャイアントスパイダーの討伐で得たまとまったお金で、この屋敷にある鍛冶や錬金の設備を整えて活用してみたいと思うわ」

 すると早速アンナが意見を出してくれる。確かに、いずれは鍛冶や錬金もやってみたいと思って、そういうリクエストを出した俺としても、悪くない提案だろう。俺やアンナは例によってスキルポイントで好き放題にできるし。そういや、レベルが上がってた気がするけど、チェックしてないな。後でチェックせねば。

「またアンナさんとお兄ちゃんが何か企んでるカオしてる……。あたしは引き続き魔法を習得することに挑戦したいな。この前は上手くいかなかったけど、たぶん、というかほぼ間違いなく普通の魔法使いが魔法を習得するための媒体――魔法書みたいなのがあると思うの。それがあれば、あたしでもどうにかなるんじゃないかな」

 スキルポイントという、今んとこ俺とアンナだけに許された反則的手段チートを活用しようと考えてるのをジト目で指摘したユズが自分のやりたいことを提案する。うん、ユズの魔法習得もそれができるんであれば戦力増強に繋がるし、必要だよな。

「私は……今すぐにやりたいこと、というのは無いですね。なので、ユズキの魔法習得に向けた手伝いをしようと思います。確かに、ユズキの言うとおり、魔法書そのものはありますね。私たち魔族の間でも出来の悪い子へのわかりやすい教え方として魔法書が活用されていましたから。メーチェ村にいたときそれを言わなかったのは、忘れていたのが半分と、あそこのような小さな村では手に入るような品物でなかったことが半分です」

 するとリーフィアがそんなユズを手伝うと申し出た。魔法書が見つかれば、ユズでも魔法を習得できる可能性があるということなんだな。問題は、その魔法書がどこにあるか、ということなんだが……ま、王都ならなんとかなるだろう。

「んー、そうすると二手に分かれて行動するのがちょうどいいのか。まあ、別にいつもパーティで固まって行動している必要もないし、当面はそれぞれにやりたいことを追いかけることにしようか」

 現状やりたいことをまとめると、俺とアンナは鍛冶や錬金といった屋敷の施設の利用。ユズは魔法習得に向けて魔法書探しで、リーフィアはその手伝い。それならば、俺とアンナ、ユズとリーフィアの二手に分かれて行動すれば、お互いの目的をスムーズに達せられるだろう。

「わたしはそれでいいと思うわ」

「ええ、私も特に問題はありません」

「えーっ、お兄ちゃん別行動なのぉ?」

 アンナとリーフィアは頷いたが、ユズがやや不満そうな声を上げる。

「ユズ、なんかお前こっちで再会してから、以前にも増して俺に依存していないか?」

 俺は大学進学を機に実家を出て一人暮らしを始めたのだが、それ以前から何かと俺へのスキンシップが激しかったように思える。異世界で再会を果たした今はというと、俺と離れて行動することを嫌がる傾向がより強くなったのではないだろうか。別行動を取ろうとするのは再会後初めてのことだが、日本にいたときはここまでではなかったはず。

「仕方ないじゃない。お兄ちゃんはこの世界では勇者で、あたしはただの一般人なんだから。強いお兄ちゃんに守ってもらおうと考えることの何がおかしいの?」

 するとユズは開き直って自論を展開する。

「ただの一般人が魔物を調教して仲間にするなんてことは普通はないと思うぞ? それに、今回は別行動と言っても街の外に出るわけでもないし、何の問題がある? まあ、街の中だからバサきちやボアたんはいないが、リーフィアが同行してくれるって言ってるんだ。チンピラに絡まれたところで返り討ちにしてやれるだろう?」

 別に急ぐ必要性は無いので俺が折れても構わないのだが、ユズだって戦えないわけではないし、そもそも街の中で行動するのだから、チンピラとの小競り合い程度は起こっても、魔物との本格的な戦闘になることはまず無いと言える。小競り合い程度ならユズひとりでもどうにでもなるだろうし、そこにリーフィアが同行すれば磐石だろう。


 そんな感じでゴネるユズを論破し、俺とアンナ、それにユズとリーフィアの二手に分かれての行動を始めた。


 ユズやリーフィアと分かれて屋敷1階にある工房へ入ってみると、中はさらに2つの小部屋に分かれていた。エントランスに通じる手前側が鍛冶工房、奥側に錬金工房。いずれの設備もアドルファスさんたちがしっかり掃除をしておいてくれていたようでホコリひとつない。また、動力源は作業者の魔力のようで、軽く魔力を注いでみると、ブゥン、という駆動音がして設備が起動した。

 鍛冶工房には全部でそうした炉が4つ設置してあった。金属を精錬するための炉と鍛造を行うための炉。それを2人まで同時に作業できる設備。師匠夫妻が弟子とともに生活していたらしい屋敷だからな。きっと師匠と弟子が同時に作業を行うこともあったんだろう。だが、室内を調べても鍛冶の道具、ハンマーや金床、砥石がどこにも見当たらない。師匠と死別した弟子がここを出るときに持って行ったんだろうか。

 また、錬金工房も同じような感じで、2人分の作業台が並べられてはいたが、やはり錬金に使う小道具の類は全て失われていた。そうした道具を買い揃えつつ、鍛冶の素材になる金属や錬金の素材になる薬草とかも買ってこないとならないのか。

「とりあえず、アンナ。俺は鍛冶をやろうと思うけど、アンナはどうする?」

 俺もアンナもスキルポイントで手軽にスキルを習得してしまえるが、お互いポイントには限りがあるので、同居して一緒のパーティで活動していく以上はそこの役割分担はアリだろう。俺の希望を伝えた上で、アンナの出方を待つ。

「それなら、わたしは錬金をやるわ。鍛冶より錬金のほうが面白そうだしね」

「よし、そうと決まったらスキルを習得して街へ買い物に出ようか」


 俺は鍛冶のスキルをレベル3まで、アンナは錬金のスキルを3までそれぞれ一気に習得することにした。

 結果、今のステータスはこうなっている。


【名前】トーマ=サンフィールド

【Lv.】23

【SP】22

【HP】765(306)  【MP】1785(714)

【STR】488(195) 【VIT】383(153)

【AGI】318(127) 【DEX】247(115)

【MAG】893(357) 【LUK】81(70)

【スキル】剣術4 格闘4 魔法剣3 法闘術3 火魔法4 水魔法4 風魔法4 土魔法4 無属性魔法4 空魔法1 回復魔法3 身体強化3 魔力強化3 魔力回復2 鍛冶3 索敵3 結界魔法 生活魔法 観察眼 料理1 投擲1

【補足】HP・MP・STR・VIT・AGI・MAG 各150%上昇

    DEX 115%上昇

    LUK 15%上昇



 鍛冶のスキルを習得したことでDEXとLUKにボーナスがついた。DEXはともかく、LUKは初めてのボーナスだな。

 そうこうしている間にアンナもどうやらスキルの習得が終わったようだ。


【名前】アンナ=ブラックウッド

【Lv.】25

【SP】42

【HP】618(247)   【MP】2170(868)

【STR】375(150)  【VIT】309(124)

【AGI】533(213)  【DEX】398(185)

【MAG】1085(434) 【LUK】133(116)

【スキル】長柄武器4 料理3 家事3 火魔法4 水魔法4 風魔法4 土魔法4 光魔法3 闇魔法3 無属性魔法4 聖属性1 回復魔法4 生活魔法 身体強化3 魔力強化3 魔力回復3 毒耐性2 錬金3 索敵4 観察眼

【補足】HP・MP・STR・VIT・AGI・MAG 各150%上昇

    DEX 115%上昇

    LUK 15%上昇


「トーマ君、ユズキちゃんのこと、あれで良かったの?」

 アンナと2人で街を歩いていると、アンナが訊ねてきた。

「ああ。確かに俺やアンナは勇者の素質があるとかで、それが無いユズよりかは強い。けれど、ユズだって戦う道を選んだんだ。もし戦うのがイヤなら、世界を渡るための身体的な負担が無くなるまで、創造神さまに責任を取ってもらって生活をサポートしてもらいながら街で穏やかに過ごしていることだってできたはずなんだから。習得できるスキルを身に着けて戦う道を選び、今はさらに強くなるために魔法を覚えようとまでしているんだ。そうまでしながら俺に依存するのは間違ってるだろ?」

「確かに、そうね。でも、ユズキちゃんはまだ15歳、これからようやく高校生になるところなんだから、少し年の離れたお兄ちゃんに甘えたいって気持ちもわからなくはないかな。わたしにも、7歳離れた兄さんがいるから、トーマ君と知り合う前の高校時代は兄さんに結構甘えていたもの」

「まあ、甘えさせすぎず、突き放しすぎずのバランスを見極めていくしかないか。っと、失われた鍛冶や錬金の道具を探すのは商業ギルドが有力だろうから、行ってみようぜ」

 ユズに対する接し方を話し合っているうちに、王都第三区の北側に建物を構える商業ギルドの前に到着していた。ここで道具を揃えられればベスト、無ければ取り扱っているような場所の情報を聞けばいいかな。

「うん、わかったわ」


 すでに時刻は昼を回っているせいか、商業ギルドの中は割と閑散としていた。

「いらっしゃい。用件はなんだい?」

 ややヒマそうにしていた受付カウンターの青年が俺たちに気づいて声をかけてくる。

「いくつか聞きたいことがあるんだが、いいか?」

「うん? 答えられるかどうかは内容によると思うが、まずは話を聞こうか」

 青年は軽い口調で先を促してきたので、自分たちがこれから鍛冶と錬金を始めるにあたって、許可証の類が必要か否か。それと設備類は工房にあるが、細かい道具が無いので探していることを伝え、青年の返答を待つ。

「まず許可証の類は特に必要ないな。けど、商業ギルドへの登録だけは必要だ。2人は見たところ冒険者だな? 冒険者ギルドのギルドカードがあれば出してくれ。それに情報を書き足して、共有できるようにするから。それと、鍛冶と錬金の小道具の類はギルドでの取り扱いはしていない。この第三区の西側に、トラスコ古道具店っていう店があるから、そこでならある程度揃えられるだろう。しかし、工房の設備はあるのに道具が無いなんて、珍しいこともあるもんだな。普通は逆だろうに」

 青年はそう答えた。突っ込んで聞いてみると、商業ギルドは入会に銀貨50枚、会費が年に金貨1枚かかるらしい。まあ、商人が集まるギルドなわけだし、そのくらいはポンと払えないと商売なんてできやしないか。で、道具はギルドには無いのか。まあ、入手できそうな店の情報があるだけマシと考えよう。

「俺たちは冒険者で、いろいろあって第三区の西側に工房付きの家を手に入れたんだが、その工房に必要な道具が残されていなかったんだ。据え付けの設備は生きてただけに道具が無いのが残念でな。俺が鍛冶、彼女が錬金の心得程度はあるから、道具を手に入れたらまた来るよ。鍛冶に使う鉱石や錬金に使う触媒とかは取り扱ってるだろ?」

「ああ、それなりの素材は取り揃えているつもりだ。ええと、トーマにアンナ、だな。ようこそ、商業ギルドへ。俺はロビン。ロビン=パウエル、ってんだ。よろしくな」

 スキルで割といい感じに習得しているので本当は「心得程度」ではないが、そんな事情まで軽々しく話す必要はないので、一部真実、一部適当な話で誤魔化しつつ、ギルドカードに商業ギルドでの情報を書き込んでもらう。商業ギルドにも冒険者ギルドと似たようなランク制度があるようで、俺たち2人とも商業ギルドでのランクはFということになった。似たような、というのは商業ギルドにはリーフィアが最初つけられたようなF-ランクが存在しないのと、上の方も最高ランクがAまででS以上のランクも存在しない。つまりFからAまでの6段階しかないようだ。また、登録に必要な情報のひとつ、屋号はアンナと相談した結果、<ニッポニア工房>とすることにした。最後に青年はロビンと名乗り、俺たちが商業ギルドに来た際に担当をしてくれるようだ。ひとりの職員が複数の顧客を担当している仕組みだそうで、同じ職員が担当している顧客が重なったり、5席ある受付カウンターが満席でない限りは待たされることはほぼないので、開業時間中ならいつでも来てくれとのことだ。

 ただし、ロビンが「開業時間中なら」と言った通り、冒険者ギルドと違って24時間いつでも開いているわけではない。朝6時の「1の鐘」から夜9時の「6の鐘」までが商業ギルドの開業時間となっている。

 さて、それじゃあトラスコ古道具店とやらに行ってみますか。

お読みいただき、ありがとうございます。

次回…3-10:魔法書探し

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