ストロベリヰ
放り投げた苺をテグスを引いて戻す。投げる力が強すぎると引き戻す前にテグスから苺が離れてしまう。引き戻す力も同じ。強すぎれば苺は手元に戻る前に地面に落ちてしまう。無事引き戻せたとしても、喜び勇んで苺をキャッチしてしまうと手の内で潰れてしまう。
巷で話題の新スポーツ『ストロベリーハウンド』。参入者のまだ少ないうちに先駆者としての地位を確立し、関連業務(TV、雑誌等各種メディアでのPR活動)の専有化を目論む輩は多い。近所の広場で基本技となる「スロー&キャッチ」精度の向上に励んでいる田淵もその一人だ。
(スナップだけだとスローイングの距離が短くなって加点に期待できなくなる。かといって腕全体を振り切れば強すぎてドロップ(苺が地面に落ちること)で大幅減点を喰らってしまう)
田淵はテグスの苺を摘まんで頬張ると、パックから新しい苺を取り出し付け替える。新鮮な苺ほど空気抵抗を受けにくく、技の運びがスムーズになるのだ。
(明日はサービスデイだったな。3パック程買い足しておくか)
スーパーにおける苺の売り上げ高は昨年に比べ3倍になっていた。『ストロベリーハウンド』のおかげだと観る識者もいるが、農家の方は「苺の収穫量が上がったから単価が安くなっただけだべ」と語る。
いづれにせよ、ビタミンCを多く含み、疲労回復・動脈硬化防止に最適な果実苺の消費量増加は、大変喜ばしいことである。