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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

海の華

作者: 白月 安芸

 遠くで海の音が聞こえる。

 そのさざめきはどこか寂しそうに聞こえる。

  この海では5年ほど前に女の人が流れてしまったのだ。


  今から5年前

 「お前がいなければ私はあの人と結ばれたのに!だからお前を消せば、あの人と私は・・・!」

 黒谷 華(くろたに はな)瑠動院 春(るどういん はる)を崖から突き落とした。

 「キャーーッ」

 音の鳴る波に春は飲み込まれてしまった。


   *   *   *


 「うぁぁぁーー 春ぅー!春がいなくなったら僕はどうすればいいの?春ぅー帰ってきてよぉーー。」

 珠音 響銘(しゅおん きょうめい)は春が流されたという海へ訪れ、ただ叫んでいた。

 「響ちゃん。落ち着きなって。もう春がいなくなって一年たったんだよ?

  もう立ち直らなきゃ春が悲しむよ?」

 「・・・。」

 響銘はそのまま立ち去ってしまった。

 華は春を崖から突き落としたことを後悔していた。

 そんなことをしなければ響銘と友達のまま楽しく過ごせたかもしれない。

 - 一瞬 - 華の頭にあることが浮かんだ。

  今なら響銘を私の彼にできる。

 そもそも、そのために春をぁぁしたのだから。


   *   *   *


 「春のことが忘れられないのは分かるよ?でも、いつまでも引きずってる訳にはいかないでしょ?だから私と・・・」

 ・・・付き合って?

 そう言おうとした言葉は最後まで言い切る事ができなかった。

 歩道で立ち止まって話をしていたせいか、トラックが響銘を突き飛ばして店に突っ込んでいた。

 響銘はそこで血だらけになって倒れていた。

 「響ちゃん!だ、だいじょうぶ?いま救急車呼ぶからね。」


 「響ちゃん・・・気がついた?」

 「えぇっと・・・あなたは...誰?」

 響ちゃんは私のことなど覚えていなかった。

 私は忘れられるほど大切ではないのだ。


   *   *   *


 風が吹いている。

 今思えば記憶を無くしたのは都合が良かったのかもしれない。

 けど、私は忘れられるほど大切ではないのだ。

 良いな春は。大好きな響銘に『大好き』って言われて、いなくなったときもあんなに泣いてもらって。

 私がもし春と同じことになったら、響銘は春の時より泣いてくれるだろうか。

 ・・・あぁ...実際にやってみれば良いんだ。


 チャポン・・・

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― 新着の感想 ―
[一言] 華がちょっと可哀想でした。                                     次回作も楽しみにしています。
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