#1 プロローグ _出会い
初の執筆です。自分の書きたいように進めているので、温かい目で見守ってください。
物語がどれくらい長くなるのかも未定です。
ついにこの日が来た。この日のために今まで血の滲むような努力をしてきた。透は静かに今までを振り返る。「局」に入るため、そして「彼女」の隣に立つ為。やれることは全てやってきた。名前すらなかった自分に名前を与えた。自分を守る力、自分に害をなすものを排除する力を手に入れた。
そして今、廃ビルにいて薄暗い廊下の突き当たりの部屋へと静かに歩いている。外では雨が降っているが、建物の中は異様に静かだった。自分の足音がやけに響く。
突き当たりにたどり着いた。肩まで伸ばした紺色の髪を結び、深呼吸を一つ。目の前にはデザインのない鉄製のドアがある。そして身だしなみを確認して、ノックする。
「入れ。」
短い返事が聞こえた。ドアを開けて入ると、そこには艶のある黒髪をまっすぐ伸ばし、切れ長の目をした彼女__雨宮 朔がいた。殺風景な部屋だった。真正面にはシンプルなデザインのデスク、手前にはパイプ椅子が乱雑に並べられていた。雨宮は奥のオフィスチェアに座って資料を手にタバコを吸っていた。
やっと会えた。透が昔から、影すら追えなかった人に。透はイメージと大きくは離れていない雨宮にやや安心しつつ一呼吸おいた。
「あ、あの、私、新しく入った執行員の透、です。よろしくお願いします。」
まずは挨拶。透は軽く頭を下げた。
「…..遊びじゃないんだけど。やる気、あんの?」
雨宮が聞き返した。煙を吐く。この動作一つに余裕が溢れていた。
「はい!それで、今回、雨宮さんの下に配属されました。」
透はできるだけやる気を見せるように顔を上げて言った。雨宮に目立った反応はない。
「ふうん......。言っとくけど私、優しくするつもりないから。」
雨宮の声は冷たい。どうやら透は歓迎されているわけではないらしい。それはそうだ。透のような特例なんて、雨宮にとっては面倒なだけだろう。
「なんで局に入ったの?」
雨宮が目を資料に落としたまま尋ねた。淡々と、事実を確認するだけの質問。
「え?」
透は面食らった。雨宮から何か訊かれるとは思ってもいなかった。
「志望理由。書類では来てるけど、本人の口から聞いておこうと思って」
「それは……」
透は一瞬だけ迷った。透のことをよく思っていないであろう相手だ。これは初対面で言うべきものなのか……。
「雨宮さんに、憧れていたからです」
紙をめくる音が止まった。
「ふうん……私に?」
「はい」
雨宮は初めて、まっすぐ透を見た。
「どうして?」
「雨宮さん、私の居たところでも有名で。かっこいいなって、すごいなって思ったんです。」
「実際に一緒に仕事をしたこともないのに?」
透は言葉に詰まった。確かにその通りだった。透が勝手に憧れているだけと言えばそれまでだった。
雨宮は再び書類に目を落とす。
「まあ、別に。憧れるのは自由だから」
「……はい」
「ただし仕事では、私への憧れなんて何の役にも立たない。」
「はい。よろしくお願いします」
「それはさっき聞いた。で、配属されてすぐ執行員、か。」
普通、局が新人を採用する際は候補生としての研修期間を経て執行員として正式な役職を言い渡される。しかし透は元々の実力が評価され、候補生の期間を飛ばしていきなり執行員として配属された。そして実際に現場で活動する雨宮も執行員で、現場で任務を遂行するいわば主戦力だ。透は雨宮が局でも随一の敏腕だと聞いたことがあった。
「はい、ありがたいことに評価してもらって。」
本当に幸運だった。こうして雨宮と組める日が来るとは透は夢にも思っていなかった。このことを昔の透に教えたら信じるだろうか。
「あ、そう。んで私達、というかお前に初任務来てるから。明日23時、ここに来い。遅れても待たない。」
初任務、と聞いて透の目が輝く。最初の山場だ。ここで雨宮に実力を認めてもらって信頼を勝ち取ることを透は決意した。
「はい!!」
力強く頷く。
「では、また明日。」
部屋を出て帰路に就く。ふと透が腕時計を見るとすでに真夜中を回っていた。任務まで24時間を切っている。心なしか周りの風景がのんびりに見えた。借りているボロアパートに着くと、薄いドアを開けてベッドに直行する。狭い部屋だ。緊張の糸がようやく切れた気がする。透はキッチンに歩いていくとエナジーバーを取り出した。無造作に口に放り込んで水道水で流し込む。明日が任務だからといって特別なことはしない。髪を解いてベッドに倒れ込むと、ふーっと息を吐いた。そのまま着替えもせずに眠りについた。明日、上手くいくことを願いながら……。
第一話、読んでいただきありがとうございます。もしよかったら、コメント、リアクション、ブックマーク、評価などしていっていただけたらと思います。執筆のモチベーションとなります。




