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各話で分けてない・・・

超趣味全開です^^w

「あー・・・退屈だ。」

ルシフェルはワイングラスを軽く揺らして赤いワインを眺めている。

窓の外をみながらそう呟くルシフェルにレヴィアタンはにこっと微笑む。

「そうかなぁ?結構楽しいよ~僕はさ」

天使長のルシフェルにこんな軽口を叩けるのは、レヴィアタンぐらいだ。

結構ルシフェルは謙遜されていた。別にそれに何らと思うわけでもなくルシフェルはのんびりとした生活を送っていた。

正直、ルシフェル自体ナルシストなので結構嫌われていたりする。

「そう思えるお前がうらやましいよ」

ただただそう言ってワインを飲み干すルシフェル。急に席から立ち上がってでてくので

あせってついていくレヴィアタン。レヴィアタンは幼いころにルシフェルに拾われ育てられたので

親子のようなものだった。あっという間に同じぐらいの年齢に見えるまで成長してしまったが、

ルシフェルのほうが年長である。それでも気楽にしゃべりあう姿は同じ年に見えなくはない

ルシフェルに育てられたわりには口調はゆるやか。ルシフェルのような固さや威厳さはなく結構

いろいろな天使に好かれていた。ルシフェルの部屋は天使長の部屋なのである程度豪華であるが、

ルシフェル自身が飾るのが嫌いなのかものすごい華やかさはない。

それがレヴィアタンにとっては結構居やすく落ち着くのでよかったが。

そんな豪華絢爛な部屋にいたら目がくらんでしまいそうだ。そのためルシフェルの部屋を気に入っていた。

レヴィアタンは下級天使であり天使長のおそばにいることなどかなわないのだが

ルシフェル自身が神に頼み込んでくれてここにいることができる。

ルシフェルはナルシストではあるが別に他の天使に情がないわけではなかったのだ。

レヴィアタンはどうやら気に入られているらしい。自分ではよくわからない。

歩き出した六枚の翼の天使長は美しい黒の髪を揺らしながら歩く。その姿は結構いろんな天使の目に止まる。

レヴィアタンは紫の髪に深い蒼の瞳をしていた。それなりの美しさではあるが天使長にかなうほどの美しさではない。

ルシフェルは長い髪をしているがどうやら戦うときに邪魔なので切ろうか考えているらしい。

切っても多分お似合いなことだろうとレヴィアタンは思想し、ルシフェルの後ろ姿を見ながらついていく。

「レヴィ、別に無理してついてこなくていいぞ」

ふと振り返り、レヴィアタンに声をかける。いつものことだ。

周りは緑あふれる庭。上級天使の子供達が楽しそうに遊びまわっている。

そうここは子供の遊び場なのである。真ん中に白い石で出来た道があり、とても美しい。

神が住む城は子供の遊び場や鍛錬場、他には闘技場などもありとても広い。

ルシフェルは神の城には住まず、自分で作り出した城に住んでいる。

神の城よりは小さいがそれでもまずまずなでかさである。

上級天使のほとんどがこの神の城で生活しているのだ。

下級天使や中級天使は城から離れた所でのんびりと暮らしている。

さすがに周りの目があるときは敬語を使わないとまずい。自分自身の身を守る為だ。

「ついて行かせていただきます。あなた1人だとなにするかわかりませんので」

天使長は静かに笑う。僕が言ったことが冗談ではないからかもしれない。

天使長はけっこういたずら物で双子の弟によくちょっかいをかけている。

それでたまに喧嘩をしだすことがあるのだ。とりあえず仲裁にはレヴィアタンがいつも入っている。

「今日は楽しくないぞ?」

天使長はそう言ったがそれでもついていくことにした。


部屋に入ると山積みの書類が一番に目に入った。そういえば天使長はいろいろな書類に目を通し調印を押さなきゃいけないらしい

しかしルシフェルはそういう仕事が嫌いでよくサボっていた。なので・・・気づくと大量にたまっているのだ。

「ルシフェル様・・・また仕事さぼっていましたね?」

レヴィアタンからのきつい口調の説教。ルシフェルは口を開いて反論する。

「安心しろ1つも期限はすぎてない。ということはサボってないという事になる」

たしかに期限までに出さなきゃいけない書類なので期限をまもればためてもいいということだが・・・

期限が明日までの書類がこの中でいくつあるのかと考えるとみているレヴィアタンも頭が痛くなってくる。

「大丈夫だ。今日中にすべて終わらせて見せる」

だから今日は面白くないといったのか。たまにこういう日もある。

仕事がたまっているので遊べないという日が。

「じゃあ、神の酒をお持ちいたしますね」

レヴィアタンが軽く笑いながら言うと即返答が帰ってくる。

「酒はわかっているだろ?」

神の酒はどんな神をも酔わしてしまうといとてもすごいお酒なのだ。

無論ルシフェルも例外ではない。酔わされてしまう。

普通のお酒では絶対酔わないのだがあの酒だけは酔いつぶれてしまう。

「えぇ」

「俺の仕事の邪魔をしたいのか?」

ルシフェルがあきれた様子で聞くのでレヴィアタンがおおげさにうなずいてみせると

天使長は素直にため息をついた。

「冗談ですよ?」

「わかってる。じゃあさっさと終わらせるから遊びに行っていいぞ」

ルシフェルが優しい言葉をかける。裏に何か潜ませてないか少しの間思考したが

結局なにもなさそうなのでお言葉に甘えることにした。といっても

この城の中で友達と呼べるものはいないので結局することがないのだが

仕事の邪魔をしてはいけないと思ったので出て行くことにした。


「あれは・・・サリエル様?」

レヴィアタンが見かけたのは目隠しをした大天使であった。

あの方は邪眼という天使にあるまじき力を持っているらしい。

だからいつも目隠しをしているようだ。それでも周りの状況がわかる所が

すごい所だと思う。邪眼は恐ろしいほどすごいと聞いたことがあるが実際にはわからない。

なにせサリエル様がそんなものを使ったことをみたことがない。

使わなくても十分に強いからだ。

「あ、天使長の副官さん、こんにちわ」

ふと声を掛けられたので身を固くするレヴィアタンにサリエルは静かに笑いかける。

「サリエル様、お久しぶりでございます。あなたに会えてとても嬉しいです」

「相変わらず天使長は仕事をさぼり気味ですか?」

サリエルの口から苦笑が漏れる。この人も丁寧な言葉遣いではあるが

ルシフェルにずばずばとものの言える人だ。そういえばルシフェル様はサリエル様が苦手らしい。

今度何故だか聞いてみることにしよう。

「えぇ・・・今日はちゃんと仕事をしてくださっているので僕も安心して外を歩けます」

サリエルは笑う。サリエル様のどこが怖いんだろうなぁと心中で呟く。

優しいし急に怒ったりもしないので邪眼を持っているといえど嫌っている天使は少なかったりする。

「そんなに頑張って見張らなくても大丈夫ですよ。仕事はちゃんとやらせますので」

やらせるって・・・意外と怖い人なのかもしれないなぁ。レヴィアタンはそう思いながら目の前の天使を眺めていた。


・・・。終わらない。

山積みの書類は一向に減ることがない。半分ぐらいの書類が明日までの書類なのだ。

何とかして終わらせなければとルシフェルの心があせる。

終わらせないとミカエルにまた怒られる。てかあいつにだけは負けたくない。

いくらなんでも俺はあいつより強いと思ってる。

「・・・ずるをしよう」

小さく呟いて書類に魔術をかける。するとさっき書いた自分の名前がたくさん宙に浮き他の書類の名前を書く欄のところに

すごい速度でくっついていく。心の中で楽だと呟いてたら、レヴィアタンとサリエルがしゃべりながら入ってきた。

「まずい。」

「何がまずいのですか?天使長?」

サリエルがにっこりと微笑んでいる。それはもう恐ろしい笑みだ。

まさか俺がずるすること知ってたんじゃないだろうな。と驚きをかくせないルシフェルに

サリエルは静かに言う。

「たしか術で書類を片付けることは禁止されていましたよね?」

「・・・い、いまのは勝手に文字が動いただけで・・・」

ルシフェルの苦言。結局みられてしまったのだから言い逃れは出来ない。

天使長でも仕事をサボりたいという気持ちがあるようだ。もしかしたら

天使長しか仕事をサボっている人はいないのかもしれない。

「お、俺は別に何もしてないんだ。確かに楽だなと思ったけどな」

ルシフェルがこの世の言い訳の例を挙げるように言う。あまりに無茶な言い訳。

レヴィアタンはあきれて物も言えなかった。こういう場合主人をかばうべきなのだろうか。

明らかにサリエル様を恐れているようだ。

「そうなんですか?でもこれはルシフェル様の術だとしか思えないのですが。

そうですねミカエル様を連れてくればはっきりしますね。僕はまだまだ未熟なのでまちがっているのかもしれません。」

サリエルは何気にそういう。ミカエルとルシフェルは犬猿の仲。お互い顔もみたくないというほど嫌いあっているのだ。

正直、天使長の座についてはもしかしたらミカエル様の方が向いているのかもしれない。

ルシフェルは絶対ミカエル様よりは強いというがそれが本当なのか最近怪しくなってきた。

「・・・ミ、ミカエル?・・・まじ?」

「大まじめですよ?」

サリエルが邪悪に微笑む。つまりミカエルに自分がサボろうとしたことばれたくなかったら

大人しくサリエルに従えということだ。不要な言い訳はするなってことだろう。

「・・・で?何すればいいんだ?」

ルシフェルが覚悟を決めた表情をする。なぜか目は書類の方に行っているが。

絶対サリエルの目を見ようとはしない。目隠しをしているので目を見ることは出来ないが。

「邪眼うけてくれますね?」

まじかよとルシフェルは心中で思いっきり恐怖を感じながら呟いた。

邪眼なんて受けたら精神崩壊じゃすまない気がする。

レヴィアタンは首をかしげていた。なぜそんなにルシフェルが邪眼を恐れるかがわからないのだ。

そんな首を傾げてるレヴィアタンにルシフェルは手招きをする。

レヴィアタンは少し戸惑ったがすぐ主の下へ行き耳を貸す。

「どうにかならないのか?」

みみもとで小さな声で言う。

ルシフェルがこんなに弱気なのはめずらしい。サリエルだけは本当にだめなようだ。

「どうしてです?邪眼なんて怖くないのでは?」

「・・・・・」

昔、ルシフェル様にサリエル様の邪眼のこと聞いたらあんなもんまったくこわくないと

ものすごい笑顔で笑いながら答えたことがある。だから怖くないものだと思っていた。

「・・・・実は怖いんだ」

「・・・。情けないですね」

レヴィアタンは静かに軽蔑の目を向けるとルシフェルは言い訳を始める。

「一回受けたやつにしかわからない・・・あの恐ろしさは!」

どうやらとてつもなく恐ろしいらしい。サリエルはこの会話が聞こえているのか聞こえてないのか

わからないがにこにこと微笑んでいる。たぶん、その微笑みはルシフェルからみたら

恐ろしい悪魔の微笑みにしか見えてないに違いない。

「ルシフェル様、往生際が悪いですよ。前にも言ったはずです法を守らないものには罰を下すと」

「・・・ただちょっと楽しようと思っただけだろ?」

「だめです。いい加減にしないとミカエル様ではなくカマエルをよびますよ」

「破壊と死と罰しかないやつをお願いだから呼ばないでくれ。わかったよ。受けるよ。俺も男だ・・・たぶん」

そういえば天使にははっきりとした性別がない。ルシフェルは男みたいだがもしかしたら女なのかも知れない。

「そうですか、ありがとうございます。だいぶ力の制御が利かなくなってきたところなんですよ。」

どうやらサマエルの邪眼はたまに力を発散しないといけないらしい。ルシフェルは知っているのかもしれない。

とてつもなく嫌そうな顔をしている。そしてレヴィアタンにルシフェルが静かに言う。

「・・・お願いだから俺の威厳が壊れる姿をみられたくないんだが」

ちらちらとレヴィアタンに目を向ける。つまりレヴィアタンに自分が邪眼で苦しんでいるとこをみられたくないらしい。

ルシフェルにも恐ろしいものがあることをレヴィアタンは知ったのだった。


1時間後、さっきの書類の山積みの部屋に入ると、放心状態のルシフェルがうわ言を言っていて

そのうわ言をサマエルが静かにめもっているところだった。

「もう・・しないので・・・お願いだからお許しください」

目がだいぶうつろなルシフェル。たぶんだいぶ壊れてるのだろう。

「えぇ、僕の心は寛大なのです許しましょう」

サマエルという天使がどんなに恐ろしい大天使なのかレヴィアタンはここで始めて知ったのだった。

絶対敵にだけはまわしたくないなと思い、その恐ろしい天使を眺めていた。


ルシフェルとミカエルの決闘


ミカエルは火のエレメントとして忙しい日々を送っていた。

ミカエルはルシフェルと違いどちらかといえばきっちりとした性格をしていたので

仕事をためたことは一度もない。部屋は綺麗に整頓されていた。

「・・・・」

真剣に書類を眺める。ルシフェルがサマエルにボロ負けしたことが書いてあった。

仕事をさぼって、ずるをしたことは報告してないがサマエルに負けたことは事細かに説明してある紙。

これにさらにさぼったとかいう言葉が書いてあったらミカエルはすぐに兄に怒りに行ったことだろう。

怒りに行くというか切りかかりに行くのだが。

これは、サマエルが書きミカエルに渡したのらしい。もしかしたら知っていた別の誰かかもしれない。

ミカエル自身、あんな何も出来ない人が自分の双子の兄だということと自分より位の高い天使長という座に

ついていることがとてつもなく気に入らなかった。無言の火のエレメントは長い銀の髪をしていた。

それに不思議な赤の瞳。銀の髪は後ろに1つで束ねられ、まっすぐとおりている。

「サマエルに勝てないようでは・・・天使長の資格など私はないと思います。」

1人で仕事を片付けながら小さく呟く。あんな、弱い人より自分が下だなんて信じられるはずがなく

ものすごい苛立ちを感じる。どちらかといえば大人しく冷静な天使なのだが兄のこととなるとどうしてもいらいらしてしまう。ミカエルが神の決定に対して異を唱えたのはルシフェルが天使長だということだけだ。

「いらいらしてるみたい。ミカエル。」

ドアを開けて入ってきたのはラファエルだった。のんびりとした口調でそういう。

「私の兄がサマエルに負けたそうなので」

ラファエルはうんうんとうなずいている。どっちかというと聞き上手なラファエルはミカエルの

愚痴をよく聞く。普段あまり不服をいわないミカエルなのでよく聞くといっても少量だが。

大抵、兄ルシフェルの愚痴が多い。仕事などに一切文句がない所がすごい所だと思う。

「なんであんな弱い兄が天使長などやっているのでしょう」

たしかにとラファエルは思う。ルシフェルはどちらかというと天使長というキャラではないと思う。

あまり人をまとめるのが得意ではないし、そこまで神を信じているわけでもない。

そういう者を神は天使長にしたのだ。ルシフェルへの不服を言うものはけっこうたくさんいたりする。

「まぁ、神様の考えだから。元気出して」

ラファエルは優しくそういう。ミカエル自身、兄のことをあまり普段は考えないのだがたまにこういうことがあると思い出すのだ。兄がどれだけ出来ない人なのか。

「えぇ、ありがとうございます。ラファエル。今度こそ決着をつけるつもりです。」

ミカエルは語尾を強め、静かな目に闘志を燃やしていた。

ラファエルは心の中でため息をついた。一回ルシフェルと喧嘩をしだすと

誰も彼らを止めることは出来ない。だから、静かに見守るしかないのだ。

それで2人とものストレスが晴れるならラファエルはそれはそれでいいと思うのだが

たぶん決着がつけば片方が嫌な思いをするので、あまりいい気持ちではない。

何度か戦っているが決着がついたことはない。どちらも同格の力を持っているようなのだ。

癒しの天使は頭を抱えてため息をつくしかなかった。


そのころルシフェルはレヴィアタンをチェスに誘っていた。

「チェスしないか?」

ルシフェルが急に人間界のゲームを持ち出す。レヴィアタンはいいですよと軽く受けた。

負けは目に見えてる。ルシフェル様は大人気ないので勝つと急に怒り出すので

別に勝つ必要はない。たまにいっしょにチェスするのだが僕が頭悪いのか

ルシフェル様が賢いのかいつまでたっても勝負になることはない。

のんびりとチェスをしていたら、ルシフェルの兵が駆け込んできた。とても荒い息をしているので

相当あせってきたのだろう。そこまであせることなのだろうか。

「何事だ?」

ルシフェルはチェスをしながら聞く。部下がこんなにあせっているのに無関心な所がすごいと思う。

「それがサマエル様があなたに会いたいと」

わざとらしく椅子から落ちるルシフェル。わざとらしいがわざとではないのだろう。目に恐ろしい恐怖の色を宿している。本当にサマエル様のことが嫌い・・・というか怖いらしい。レヴィアタンはそれであせってたのかと納得する。ルシフェルの部下はほぼ全員サマエル様のことをルシフェルが恐れていることを知っている。だからあせって知らせに来てくれたのだろう。

「あ・・・・いないって・・・いってくれるかな?」

急に弱い口調になるルシフェルに兵士が少し驚いた表情をしている

まさかここまで恐れてるとは兵士も想像してなかったに違いない。

「こんにちは、ルシフェル様」

兵士の後ろからサマエルが出てくる。兵士は驚いた表情をしてる。たぶん気づかなかったのだろう。

サマエルを見た瞬間、ルシフェルは突如窓のほうへダッシュし

「止まりなさい」というサマエルの一言で石のように動かなくなった。

硬直し、怖がっているのがわかる。

「用件をお話しますので、ルシフェル様はそこでいいですよ」

「・・・。あの俺・・・・すみません・・・ほんと悪かったんで・・・」

ルシフェルが冷や汗を流しなが言う。精神的にだいぶ追い詰められたらしい。

「この前言いましたよね何でも言うこと聞きますって」

サマエルは恐ろしすぎるとルシフェルは内心でため息をつく。

あの目は・・・・厄介だな。どうやればやっつけられるだろうか。

いい加減嫌なのでやっつけたい。でも結構身体も精神もいうこと聞いてくれない。

よほど恐ろしかったようだ。たしかに怖かった。

「で・・・なんですか?いったい」

「実はですね、ミカエル様があなた様に決闘を申し込みたいそうです」

サマエルは微笑みながらそういう。ミカエルはルシフェルの力を信じていない。

てか完璧に弱いと思っているようだ。もう何度も戦っているのに信じられないらしい。

何故自分が天使長ではないのか神に結構な不服があるようでそれはミカエル様のような天使では

あるはずがないことであった。絶対服従系の彼が不服を言うのはよっぽど嫌だったからだろう。

ルシフェルを倒せば天使長になれると思っているようでたまに決闘を申し込んでくる。

「受けてたつと返答してくれるかな・・・・?」

やはり少し弱気なルシフェル。だが目には闘志が宿っている。

ミカエルには絶対負けないと思っているらしい。

「わかりました。伝えておきましょう。」

そう言ってサマエルが出て行った瞬間。ルシフェルは椅子に崩れるように座る。

「大丈夫~?」

「・・・あいつは嫌いだ。絶対いつか仕返ししてやるんだからな」

「応援するよ~がんばれ~一生無理そうだけどね」

レヴィアタンはくすくすとおもしろそうに笑っていた。

ルシフェルではあの人には勝てそうにない。

「そんなことない。明日にでもぶっとばしてみせる」

ルシフェルは希望に満ちた目をしうっとりと自分自身のいった言葉に酔っていた。

そんな姿のルシフェルをレヴィアタンはみながら笑っていた。


少しだけ時間が経過しルシフェルが口を開く

「いい作戦を思いついたんだ。絶対ミカエルと戦うとサマエルが来るから、

ミカエルを殺そうとして手が滑ってサマエルを切る」

幼稚な作戦。ルシフェルらしいといえばルシフェルらしい。そんなことしたら

自分が大変な目を明らかに見るのに。

「それはいい作戦ではないと思うけど」

レヴィアタンはきっぱりとそういう。チェスがあれだけできるのに

何故こんなにも考え方が子供っぽいのだろうと心の中で不思議に思う。

「・・・う。やっぱ毒殺とか?」

サマエル様に毒なんてきくんだろうか。あの方が毒で苦しんでる姿など全く想像できない。

「こうなったら実力行使で俺の方が強いと示してみせる」

ルシフェルは目にすごく強い色を宿し、どうやら心で誓ったようだ。

実力行使じゃ勝てそうにないけどなとレヴィアタンはやれやれとため息を心の中でついた。

「ミカエルが先だな。少なくてもあいつは楽勝なはずだ」

ルシフェルは自信満々にそういう。これで負けたらきっとルシフェルは部屋に篭って

壊れたプライドを必死に集めようとしだすだろう。それはそれで面白い気がしてしまう。

ミカエル様も最近は腕を上げたらしいとよく聞くので面白い戦いが見れるかもしれない。

窓の外に鳥がいた。白い鳥。ミカエル様のところのペットかもしれない。

窓を開けてやるとその鳥が飛んできて手紙を落とす。帰り際に鳥がばーかばーかと大人気ない台詞を

吐いていたのは無視し手紙に集中する。どうやらミカエル様は結構いいかただがミカエル様が飼ってる鳥は性格が悪いらしい。ペットの性格は主人に似るらしいのでもしかしたらミカエル様の本性はそうなのかもしれないと心の中でレヴィアタンはそう思う。

「鍛錬場に来いと書いてある。面倒だ。」

ルシフェルがムカッとした表情で呟く。どうやら呼び出されたことに苛立ちを感じているらしい。

歩いてすぐなのにむかついているルシフェルをみながらレヴィアタンは笑う。

笑ったレヴィアタンを見てルシフェルはさらにムカッと表情をするとばっとドアを開けさっさと歩き出したので

レヴィアタンは焦って追いかけた。外は明るくまだ昼過ぎ。眠そうなルシフェルがレヴィアタンの前を歩いていた。


鍛錬場につくと何故か多くの観客がいた。

天使達が楽しそうにしゃべっている。ミカエルが呼び寄せたのかもしれないと

ルシフェルは思い周りを眺めていた。奥の方にミカエルがいるのでルシフェルは奥にすすむ。

レヴィアタンもその後ろをゆっくりとついていく。ルシフェルが入ってからさらに会場となっている

鍛錬場が盛り上がった気がする。もしかしたらどちらかにお金をかけてる天使もいるかもしれないなと

レヴィアタンは思いながらまっすぐ進む。奥の方に長方形にロープが引かれていて

その外にいっぱいいっぱい天使がいる。みんな見に来たらしい。

「観客がいっぱいだな。ちょうどいいお前が俺にボロボロにされてく様を見せてやるよ」

ルシフェルの強気な発言に向かいあっているミカエルがあからさまにいらっとした表情を浮かべる。

本当に大丈夫かなぁとレヴィアタンは思いながら心の中でため息をつく。

「サマエルにも勝てぬような貴方が私に勝てるはずがありません。」

ミカエルの横でラファエルはレヴィアタンと同じく心の中でため息をついていた。

2人の真ん中に立っているサマエルは楽しそうににこにこしながら二人を眺めている。

どうやらサマエルが審判をつとめるらしい。ルシフェルが切りかからないかとてつもなく心配だ。

2人とも専用の武器を使うらしい。ルシフェルは魔剣、ミカエルは聖剣を使うようだ。

どちらも神に貰い受けたものである。本格的にやるらしい。どちらも目にすごい闘志を宿している。

よほど2人は嫌いあっているらしい。先に動いたのはルシフェルだった。

大きく振りかぶるルシフェル。絶対あんな切り方をしたら相手に間合いに入られるような切り方。

だがミカエルは間合いに入らなかった。そのまま振り下ろされた剣を防ぐ。

何故かはわからない。罠だと思ったんだろうか。

「ルシフェル、胸ポケットに隠している短剣を捨てなさい。卑怯ではありませんか?」

「そんなものもってないが?」

ルシフェルは笑いながらそういう。隠し持っているようだ。つまりさっきルシフェルの間合いに入ったら左手で短剣をすばやく使い逆にミカエルが切られていたことだろう。さすがはミカエル。ルシフェルの行動は

お見通しなのかもしれない。ミカエルはルシフェルの剣を横に流して後ろに下がり相手の間合いからでて様子見る姿勢のようだ。ルシフェルはまた攻撃に出る、今度はさっきみたいに簡単に返せるような斬撃ではない。ミカエルはそれを軽く避ける。そしてカウンターに出るが、やはりルシフェルの剣がそれを防ぐ。

そのあとルシフェルがミカエルに向かって蹴りを入れるがそれをかわすミカエル。


「君はルシフェルの副官さん?」

ふと、ラファエル様がレヴィアタンに声をかけてくる。驚いて頭を深く下げ「はい、そうです」と答える。

ラファエル様はルシフェルと同じ地位なのだ。だから下級天使のレヴィアタンは頭を深く下げる。

「そうなんだ。君はどっちが優勢だと見る?この戦い」

ラファエル様は見ながらあきれた表情をしている。どちらも同格。レヴィアタン自身はそう思う。

「どちらも同じくらいの力を持っていますので優劣はないのではないでしょうか」

「それがさ、多分ルシフェルが有利だと思うんだよ。僕はね」

ラファエルは戦いを見ながらそういう。何故そう思うのかレヴィアタンにはわからない。

レヴィアタンはルシフェルに剣術をならっているがレヴィアタン自身そこまで強くない。

ラファエル様のほうが強いから何かわかるのかもしれない。

「ミカエルは必死そうだけどさ。ルシフェルは何か遊んでる感じに見えるんだよね。

もしかしたら、能ある鷹は爪を隠すみたいな感じなのかもしれないね」

たしかにルシフェルはミカエルを挑発しながら戦ってるように・・・見えなくもないような気がするけど。

レヴィアタンにはやっぱりわからなかった。ルシフェルはいつもあんな感じなので

あれが本気なのか本気じゃないのかはよくわからない。もしかしたらとてつもなく強いのかもと

レヴィアタンは心の中でそう思ったのだった。

いろいろラファエル様としゃべっているうちにルシフェルが行動に出た。

ただミカエルを切る行動じゃなく・・・手が滑ったと大きな声をあげて審判に切りかかったのだ。

反射的に頭を抱えるレヴィアタン。まさか本当にやるとは思ってなかった。

金属と金属が交わる音が響く。どうやらサマエル様が剣を抜いたらしい。

「ルシフェル様・・・あなたは最初からこのつもりだったのですね。剣を持ってきて正解でした。」

サマエルはルシフェルにそういう。目を今は隠しているのにルシフェルの斬撃を受け止められるなんてすごい。ラファエルは難しい顔をしている。なぜそうするのだろうと疑問を持った顔だ。

「どうかされました?」

不安に思ってレヴィアタンが聞くとラファエルが答える。

「んと・・・なんで今、声をあげたんだろうって思ったんだ」

いわれてみると、レヴィアタンも思った。相手は目を隠してる。

声をあげずにやったほうがうまくいく可能性が高かったはずだ。

なぜあんな大声をあげたんだろう。確かに疑問といえば疑問だ。

「やっぱり、ルシフェルは恐ろしい人だと僕はおもうなぁ。わざと手を抜いてるんだと思う」

ラファエルはルシフェルを眺めながらそう呟いた。ラファエル様の複雑そうな顔をみながら

ルシフェルがそんなすごい人だったとはとレヴィアタンは1人で驚いていた。


少しすると、引き分けとして戦いは終わったようだ。

口々に天使が楽しかったと笑いながら鍛錬場から出て行く。

「私が・・・貴方と引き分けなど。貴方が審判に切りかかるから悪いのです」

ミカエルはいらいらした口調でそうルシフェルに言う。さっきまで盛り上がっていた

鍛錬場はおどろくほど静かになっていた。ルシフェルはサマエルに脅されどやされ・・・

大分傷心しているようだ

「・・・。まさか防がれるなんて・・・俺の完璧な作戦が」

今何を言っても無駄かもしれないとレヴィアタンはルシフェルの様子を見ながらそう思う。

でも・・・それも演技かもしれないんだよなぁと思うとなんだかルシフェルが恐ろしく見えた。

そのあとルシフェルはまたサマエルに連れて行かれて城に帰ってきたときには

ほぼ壊れてような状況だった。こうしてミカエルとルシフェルの決着は相変わらずつかなかったのである。


ガブリエルとルシフェル


「ルシフェルとミカエルの戦いは相変わらず決着はつかなかったのですか?」

水色の長い髪の女は百合の花に水を上げながら自分の部下に聞く。

その表情はいまいち読み取りづらい。あまり表情が色濃くでる天使ではないのだ。

「えぇ。ルシフェル様の方がお強そうなのですが・・・何故なのでしょうか」

その天使の部下は不思議そうにそういう。水色の長い髪の天使・・・ガブリエルは

部下にとても優しく答える。

「あの方はあのように見えてミカエルを嫌ってはいないのでしょう。

もしかしたら愛しておいでなのかもしれません。」

相変わらず表情を変えないガブリエル。ガブリエルの部下は不思議そうな顔をした後

自分の仕事をしに戻っていった。百合の花は光を受けてきらきらと輝いている。

ルシフェルとミカエルの戦いは10日前。あっという間に時はすぎる。

そういえばここには夜という概念がないので暗くはならない。空は明るいまま月が輝く。

今は朝。太陽がまだ低いとこに輝いている。四大天使は1人に1つ庭が与えられている。

庭といっても神が創った別空間である。そこでは自らの城を持っていたりするらしい。

ガブリエルは百合の庭を造っていた。綺麗な花壇が丸や四角色々な形になっていてそこに

百合がたくさん咲いている。

「久しぶりに・・・ルシフェルに会いに行くとしましょう。あの方の副官にも興味がありますし」

そこでガブリエルはルシフェルに会いに行くことを決めた。


天使長の城では天使長が仕事から逃げ出してどこかに遊びに行っていた。

正直、あの戦いから本当はもっと恐ろしい人ではないかとレヴィアタンは思っていたのだが

全くもって恐ろしくない・・・というか苛立ちを覚える。仕事が嫌だといってじゃ、よろしくと

ルシフェルは窓から飛び降り消えた。このままルシフェルが見つからないのは困る。

探しに行かないと思って部屋から出て兵士達に命令してそのあと外にでようと城の門のほうに

行くと、女の天使がたっていた。レヴィアタンはガブリエルと一度も会ったことがなかったので

ただの女天使だとしか思えなかったのである。たしかに異様な美しさであったが。

「あの、どうかされたのですか?随分いそがしそうですが」

女の天使は優しい口調でレヴィアタンに聞いてくる。レヴィアタンは答えてよいものか迷ったが

結局答えることにした。結局、天界の天使全般がルシフェル様のさぼり癖を知っているので

言ってもいいだろうと思ったのだ。

「ルシフェル様が仕事から逃げてしまって・・・探しているんです。見かけませんでした?」

女の天使はくすっと微笑んだ。ルシフェルを知っているようだ。変わってないというように微笑む。

「安心してください、連れ戻してまいりますから」

レヴィアタンは驚く。いくらなんでも一般の天使にルシフェル様を連れ戻してきてもらうわけには行かない。

「あ、自己紹介がまだでしたね。私はガブリエル。もしかして貴方がルシフェルの副官さんですか?」

ガ、ガブリエル様・・・。レヴィアタンは一瞬にして表情を変え、固まった。その姿をみながらガブリエルは

笑う。きっと面白いのだろう。

「はい、ルシフェル様の副官です。・・・す、すいません。ガブリエル様とはしらず・・・申し訳ありません・・・」

レヴィアタンは固まったまま声を絞り出す。するとガブリエルは頭をよしよしとなでる。

驚いて上を見上げる。レヴィアタンはお世辞にも背は高くなくとても小さいほうだった。

逆にガブリエルは結構背が高いので遠くからだと親子みたいに見える。

「副官さんなのですね。いいのですよ。さっきのしゃべり方でもいいのです。

そんなにかしこまらないで下さい」

ガブリエルはとても優しく微笑む。どこかの大人気ない誰かさんとは大違いであるとレヴィアタンは思った。

「あなたがルシフェルの副官さんなのですか。ルシフェルとは仲良くやっていますか?」

とても優しい笑みを浮かべたままガブリエルはレヴィアタンに優しく聞く。

「はい、仲良くやらせていただいてます。あ、城にどうぞ、すぐ連れ戻してきますので。

飲み物など用意いたします」

ガブリエルは若き副官を見てくすくすとわらう。とても楽しそうだ。

城の入口に立たしたままではいくらなんでも悪いとレヴィアタンは気づき城にとりあえず

案内し、一刻も早くルシフェルを連れ戻さないと心の中で思う。

「いいのです。ルシフェルはすぐきます。一応、城に私がきていることはさっき私のペットに手紙を

運んでもらいましたので」

そういう話をしている間にルシフェルがひょっこりと現れた。レヴィアタンはとてつもなく叱り付けたい気分だったのだがガブリエル様が近くにいるのでそんなことは出来ない。

「久しぶりだな。ガブリエル」

ルシフェルは少し驚いた表情をしている。まさかこいつが来るなんてという表情だ。

それが思いっきりでてるので少々失礼ではないかと思うほどだ。

「驚かれたようですね。ルシフェル。ミカエルと引き分けだったそうなので久しぶりに会いたくなって

それにそこの副官さんにも興味があります」

ルシフェルがさらに驚いたように目を見開いた。

「お前、まさかこいつを連れ去りにきたのか?便利なこいつを・・・渡さないからな!」

ルシフェルは僕のこと便利だとしかおもってないのかな・・・あとで絶対・・・叱る。と心の中で

すごい腹立ちながらレヴィアタンは思っていた。ガブリエルはくすくすと楽しそうにしている。

「違いますよ。また城の中でこの子を外してしゃべりましょうね」

レヴィアタンは自分だけのけ者にされるのはあまり好きではなかったのだが

ルシフェル様もガブリエル様も自分とは地位が違う方なのでどうしよもない。

「そうしようか。」

そう言ってルシフェルとガブリエルとレヴィアタンは城に入ったのだった。


「いったい中でなにしゃべってるんだろう。恐ろしいなぁ」

レヴィアタンは1人でそう呟く。城の廊下の掃除をのんびりとしていた。

ほうきで廊下をはく。正直言って城はものすごく綺麗なので掃除する必要はないのだが、

なんとなく掃除したかったので掃除をしていた。

レヴィアタンもいろいろ考える。2人で僕の取り合いとかしてるのかなぁ・・・・。

そこまで僕自身に価値があるとは思えないレヴィアタンである。

のんびりと城の廊下をはいていることしかレヴィアタンは出来なかったのである。


「何であいつに興味あるんだ?」

城の自室でルシフェルはガブリエルに聞く。答えが来る前にルシフェルがガブリエルと自分の分の紅茶を用意する。ガブリエルはありがとうございますといって紅茶に口をつけて飲む。

「貴方がうまくやってるようなので。めずらしくて」

ガブリエルが静かにそういう。ルシフェルは不思議そうな表情をしていう。

「・・・めずらしいか?俺は結構みんなと仲良しだぜ」

豪華な椅子に座り足を組んでいるルシフェルをみながらガブリエルは静かに微笑み言葉を続ける。

「えぇ、結構仲良しですが・・・なんだかあの子に接する態度だけちがうような気がしました。

もしかしたら間違っているかもしれません。あなたは相変わらず手が読みづらい」

ガブリエルは苦笑しまた紅茶に口をつける。

ルシフェルも自分の紅茶をのみ、わざとらしくため息をつき、ガブリエルに言う。

「ガブリエル、お前は俺を買いかぶりすぎてる。そんな風に感情をうまく隠すことは俺は出来ない

不器用なんでね。」

ガブリエルはルシフェルが嘘をついているのはわかったが、これ以上詮索することは多分できないだろうと

踏んで、話題を切り替えることにしたのだ。昔からルシフェルはどっちかといえば読みづらい男だったのだ。

ルシフェルはどうやらこの話題が嫌いなようだ。表情は変わらないが必死で話題をずらそうとしてるのがなんとなくガブリエルにはわかった。

「そうですか。私の勘違いのようです。相変わらずミカエルとは仲が悪いのですか?」

ガブリエルは優しくルシフェルに聞く。ルシフェルはげっと言う表情を浮かべうなずく。

「本当は好きなんじゃないですか?いつも戦うときは手を抜いてるようですし」

ガブリエルはずばっとしたものいいで冷静にいう。ルシフェルは静かに足を組みなおし答える。

「好きな訳ないだろう。好きだったら何故戦うんだ?」

ルシフェルは表情を崩さない。ガブリエルにもルシフェルの心理を読むことは出来なかった。

何を考えてるのかいまいちわからない天使なのだ。どちらかといえばガブリエルは人の

心理を読むのが得意な方だったのだがルシフェルのだけはいまいちわからない。

「私の憶測の話になりますが・・・ミカエルは貴方を嫌っているようですからね。

貴方は彼女の頼みを聞いてあげてるのでしょう。倒されたくはないので毎回何かでごまかして

引き分けに持ち込む。それでうまくやれているようですね」

ルシフェルは首を横に振る。はずれとでもいうように。

「俺は嫌いだから戦うだけだ。あんな偉そうでまじめなやつは嫌いなんだよ」

ルシフェルはそう言い、また紅茶に口をつける。ガブリエルでも嘘か本当かよくわからない。

もしかしたら本当に嫌いなのかもしれないとガブリエルが思っていたらドアからトントンと音がした。

「あの、紅茶とお菓子をお持ちしました。入ってよろしいでしょうか?ルシフェル様、ガブリエル様」

レヴィアタンが外からそういう声をかける。どうやら落ち着かなかったらしい。

「いいぞ。お前の話はもう終わったからな」

ルシフェルはガブリエルに了承も取らず入っていいという。これ以上追求されないようにする為。

ああいう話はルシフェル自体が好きではないようだとガブリエルは思う。

「失礼します」

幼く見える副官は2人の目の前の大理石の机に紅茶を置く。そして机の真ん中にお菓子を置いた。

ルシフェルがぱっと手を出しお菓子をつまむ。

「ガブリエル、お前も食べたらどうだ?おいしいぞ」

ルシフェルはお菓子をほおばってとても幸せそうな表情をしていたのでガブリエルもなんだかすこし気が抜けてレヴィアタンが持ってきたお菓子に手を伸ばした。

レヴィアタンはルシフェルの横に立っている。

「レヴィアタン、座っていいぞ。」

ルシフェルが自分の隣の席を指す。座っていいのか迷ったが結局主の命令なのでありがとうございますといって座ることにした。ふんわりとした椅子に腰掛ける。さすがは高級な椅子とレヴィアタンは思う。

「そういえばお前の所有権は結局こちらが持つことになったから安心しろ。」

レヴィアタンは必死で顔に表情が出ないように心がける。ガブリエルは苦笑していた。

当たり前だそんな話していないのだから。ルシフェルはやっぱりこの子のことが大事なようだ。

「じゃあ私はそろそろ帰りますね。結構楽しかったですよ。ルシフェル」

ガブリエルはそう優しくいって静かに席から立ち上がる。

「そうか、また来いよ。結構暇だからな」

ルシフェルも優しい笑顔を見せる。レヴィアタンは立ち上がって頭を下げる。

「お前はここに残れ。ガブリエルの案内は他の兵にやらせればいいだろ?」

ルシフェルはいたずらにそういう。普通は副官かルシフェル自体が送らないといけないのだ。

「え、でも」と反論しかけたらガブリエルが「いいですよ」と優しく言ってくれたので

レヴィアタンは説得されそのままその場に残ることにした。

「じゃあ、また近いうちにきます」

そう言って百合の大天使はさっそうと歩いていった。


「さて俺に言いたいことがあったんだろ?」

レヴィアタンはぱっとしかりつけたいということを思いだした。

その瞬間すごい苛立ちが戻ってくる。

それが表情に出ていたようでルシフェルが少し困った表情をし、苦笑している。

「ルシフェル・・・あのさ。いくらなんでも逃げ出すのはやめてもらえる?僕探すの大変だったんだから

それに他の兵にも迷惑かかるんだから」

レヴィアタンの説教。あまり説教らしくないがレヴィアタンにはこれが手一杯だった。

「わかったわかった。突然の来客がいると困るから逃げないようにするよ」

ルシフェルはいたずらっぽく笑い、本当かどうかよくわからない約束をしたのだった。

それにしてもガブリエルとルシフェルは僕を抜いてどんな話をしていたのだろうと

レヴィアタンは不思議に思ったが聞けずそのまま時だけがすぎていってしまった。



ベルゼブブの剣術指導



「ベルゼブブ。久しいな」

人間界に旅に出ていたベルゼブブが城に帰ってきた。今はルシフェルの部屋の中。

ベルゼブブはルシフェルの右腕である。

強さはレヴィアタンの2倍ぐらいは強いだろう。少し怖い猫系の目をしている。

髪は灰色で目の色は黒に近い紫。髪は短めで耳にかかる程度だった。

いつものようにルシフェルは椅子に腰掛け足を組んでいた。二人の目の前に紅茶を出す、レヴィアタン。

「久しぶりです。ルシフェル様」

すごく幸せそうな顔をしている。本当に幸せそうだ。よほどルシフェルを敬愛しているのだろう。

レヴィアタンはそんなことを思いながら灰色の髪のベルゼブブを眺めていた。

少しだけベルゼブブをレヴィアタンは尊敬していた。ルシフェルの右腕というのとてもいい位置なのだ。

「レヴィも元気にやってたか?また剣術教えてやるよ」

ベルゼブブは楽しそうにくっくっと笑う。久しぶりに帰ってきたからかとても元気だ。

ルシフェルは人間界のものに結構興味があり、たまにベルゼブブに取りに行かせていた。

ベルゼブブ自身も人間界が普通に好きらしく別に行くことは苦痛ではないらしい。

「うん。元気にやってた。ルシフェル様が逃げ出したりして大変だったけどね」

「そうかそうか。ほんとに逃げ出しやすいやつだもんな」

ベルゼブブは楽しそうに笑っている。その笑ったベルゼブブをみながらルシフェルは苦笑していた。

ベルゼブブがレヴィアタンがついだ紅茶を飲むと静かに微笑み言う。

「レヴィは紅茶入れるのうまくなったな。昔はまずくてとても飲めるもんじゃなかったが。

今はとってもおいしいぜ。ルシフェルが教えたのか?」

ベルゼブブはルシフェルに笑顔で聞く。

「まぁな。結構大変だった入れ方教えるの。」

ルシフェルが静かに答えるとベルゼブブがぽんぽんと頭をなでた。

「ルシフェルの指導厳しくて嫌だった。ベルゼブブがやっぱりいいや。」

その言葉を聞いた瞬間ルシフェルが困り果てた表情を浮かべすがるように言葉を発した。

「お願いだから親離れしないでくれ。一応レヴィは俺の子供みたいなもんなんだからな。・・・寂しい・・・」

ルシフェルの言葉に困り果てたのはレヴィアタンだった。ベルゼブブだけは全部見透かしたように笑っている。半分はルシフェルの演技なのだ。半分は本音だろうが。

だがレヴィアタンにとっては演技では済まされない。

一応面倒をみてきてもらったのだそれなのに嫌いなどと言ってしまった自分に罪悪感を感じているに違いないとベルゼブブは笑いながら思っていた。

「ご、ごめんなさい。別にルシフェルのこと嫌いなわけじゃないんだよ~」

「よしよしレヴィはいい子だな」

ルシフェルは優しくレヴィアタンの頭をなでていた。楽しそうに笑いながら。

「んじゃ、レヴィ、剣術の稽古。せっかく帰ってきたんだからしばらくは俺が教えるぜ」

ベルゼブブは満面の笑みでレヴィアタンにそう言った。ルシフェルは椅子から寂しそうな表情で

ベルゼブブを眺めている。ベルゼブブは頭をぽりぽりとかいて「ルシフェルもこいよっ」と誘った。

「やっぱり俺がいなくては始まらないよな。」

ルシフェルは満面の笑みを浮かべて幸せそうにそう言い一緒についてきた。


ルシフェルが作った城にも一応鍛錬場というものがあるが普段は兵士がいっぱいでなんだか居辛いので

いつも中庭で木刀をつかい練習をする。レヴィアタンが弱くなければ木刀じゃなく本物の剣で勝負したことだろう。レヴィアタンは魔術はそこそこだが剣術は全く持ってだめだったのだ。

中庭につくと空に月が浮んでいる。夜のようだ。暗くならないので月が昇っているのか太陽が昇っているのかどちらかで判断しなくてはならない。それになれている天使達が人間界にいったら驚くことだろう。

「んじゃ、始めよっか」

木刀を握ったベルゼブブがにこにこしながらそういう。レヴィアタンはしっかりと前を見据え

切りかかった。ベルゼブブは避ける。そして切り返し。それを木刀で防ぐレヴィアタン。

木刀が十字に交わっている。ベルゼブブが本気を出せば木刀をへし折ってしまうかもしれない。

それをおらないように気をつけながら戦ってくれているのだ。何とかして流さないと。

力では勝てないのだ。レヴィアタンはそこまで力が強いわけじゃないのですばやさを主体とした戦い方をする。なんとかベルゼブブの木刀を流し体勢を立て直す。今度はベルゼブブが攻撃に来る。

防ぐのが手一杯で反撃にでることは出来ない。上からの斬撃それを交わすと横なぎが来て

それを木刀で何とか流す。流した瞬間ベルゼブブが目の前に踏み込んでくる。

木刀を戻そうとするが間に合わない。首筋に木刀の切っ先が当てられていた。はぁーと息を吐き座り込む

レヴィアタン。ベルゼブブは木刀を引く。

「相変わらずだなーレヴィは。もうちょっと強くなったかと思ったのだけど。」

ベルゼブブは苦笑する。それはある意味ルシフェルの指導が悪いということを言ってるように聞こえたのか

ルシフェルの機嫌が少し悪くなる。まわりに兵の姿はない。

「それは俺の指導が悪いといいたいのか」

ベルゼブブがルシフェルのほうをぱっと向く。

「まぁ、それもあるんじゃねぇかな」

平気でそういうベルゼブブにレヴィアタンは尊敬の念を覚える。

ルシフェルは大人気なく怒り出した。こうなると誰にもとめられない。

「レヴィ。今から特訓だ。終わったら・・・ベルゼブブに勝て。」

「へ?えっ・・・えーーーーっ。ちょっ・・・まってよ。無理だって全く歯が立たないのに」

レヴィアタンはとてつもなく嫌な表情を浮かべたが問答無用にルシフェルが木刀を握る。

まずい戦わないと・・・酷い目にあう。本能でそう気づいたレヴィアタンはあきらめて木刀を握る。

ベルゼブブは近くにあったベンチに腰掛け2人の様子を眺めていた。少し苦笑を浮かべながら。

「じゃあいくぞ・・・レヴィ。痛い思いしたくなかったら必死で戦うんだな」

「う・・・恐ろしい。」

ルシフェルの斬撃。かわすしかない。どう考えたって受けたらレヴィアタンの負けは目に見えてる。

すばやい太刀を避けると今度はカウンターが待っている。それも何とか避け木刀でルシフェルに切りかかる。ルシフェルはそれを弾きがら空きになった胴体に木刀を突っ込む。間一髪で横に避けたが

少しでも反応が遅れればものすごく痛かっただろうとレヴィアタンは思う。息をついている暇などない。

さらに過激な攻撃が続く。レヴィアタンはあきらかに防戦を強いられていた。

こんな過激な攻撃・・・カウンターできるはずがない。無理に決まっている。

自分自身ここまで戦えてるのが奇跡といえば奇跡だとレヴィアタンは思った。

「レヴィ・・・逃げてばっかじゃベルゼブブに勝てないぞ。さぁ、かかって来い」

確かに訓練じゃなくて特訓だと心の中で納得するレヴィアタン。恐ろしいもんだ。

「はぁはぁ・・・限界だって。ひっ」

また来た斬撃を何とか避ける。剣を翻しルシフェルのわき腹を狙うが弾かれる。

胴体に来た攻撃を伏せ避けると足払いを仕掛ける。ルシフェルはそれを避けた。

「ほう、だいぶ賢くなったようだな」

レヴィアタンは今度は下からの上へ木刀を持ち上げルシフェルを切る。

ルシフェルはそれをさっと身を引いて避けレヴィアタンとの間合いを一気に詰めすごいはやい

動きをする。木刀で何とか防いだが手がしびれて・・・木刀が地面に落ちる。

「はぁはぁ・・・疲れた・・・・」

レヴィアタンは地面に座り込みため息をつく。ルシフェルも結構息が荒い。

疲れているのは間違いないだろう。

「なかなかいい感じだったぜ、レヴィ。少し休んだらまた俺とやってみるか」

「え・・・まだやるの?」

レヴィアタンは正直もうごめんだった。疲れて頭がボーっとする。

「あたりまえだ。次はそいつに戦ってかつんだぞ」

答えたのはルシフェル。まだ怒っているようだ。

少し休んだらだいぶ楽になったので今度はベルゼブブとの二戦目が始まった。

ベルゼブブがすごい速さで間合いを詰める。そこから繰り出される一閃に戸惑うが何とか

避ける。間合いを詰めようとしたがつめる前に相手が間合いをはなす。今度はレヴィアタンが攻撃に出た。

小さく振りかぶり上からの攻撃から横の攻撃に途中で変える。変化した斬撃に少し驚いてはいるが

すぐに反応し左から来た斬撃を右側に身体を動かして避ける。

一歩踏み込むと木刀をベルゼブブが突き出してきた。それをまた何とかかわし足払いを仕掛ける。

ベルゼブブは足払いをかわすと上からの木刀を振り下ろした。

木刀で何とか防いだがどう考えたってこの状況は負けに等しい。

ベルゼブブが少しずつ力をこめていく。う・・・レヴィアタンは何とか絶えていたが手から木刀が吹っ飛び

あたりに静寂が包み込んだ。

「おぉー最初より持ったじゃねぇか。すげぇぞ」

そういって頭をなでてくれるベルゼブブあまりに優しい。ルシフェルのほうを向いたら案の定ムカッとした表情を浮かべていた。怖くなったのでレヴィアタンはとりあえずベルゼブブに助けを求める。

優しく頭をなでなでし優しく微笑むとルシフェルのところにいって、ルシフェルと会話しだすベルゼブブ。

それを聞いてたらだんだん眠くなってそのまま寝てしまった。


「う・・・・ん?」

ベルゼブブがお茶を用意してくれる。目がさめたのに気づいたらしい。

「大丈夫か?疲れちまったみたいだな。ルシフェルをなだめている間に寝ちまったからよ

とりあえず俺の部屋まで運んできてみた。お前の部屋って結構すごい状態だったからな」

レヴィアタンは顔を赤面させる。自分の部屋・・・それは散らかり放題の何もしてない部屋だ。

正直、最近ベッドにすら居場所がない。ゆっくりと体を起こすと身体の節々が痛む。

うっという表情を浮かべたら、ベルゼブブが苦笑する。

「筋肉痛だろうな。どうしよもないから我慢してくれ。はい、お茶だ」

レヴィアタンは渡されたお茶を飲み干す。すると大分楽になった。

「ありがとう、ベルゼブブ。」

「いや、すまん。俺もお前の身体のことも考えず攻撃してしまってな

今度部屋片付けるの手伝うぜ。今度からはしばらくここにいられそうなんでな。」

レヴィアタンは部屋を見られたのはだいぶショックで困った表情を浮かべていた。

こうして剣術指導?は無事終わったのである。



目の前に積みあがるデーモン。

たまにここに進入してくる。それを定期的に退治するのも

ルシフェルの仕事である。

「はぁ・・・ねむ。」

剣でなぎ倒しながらそうつぶやくルシフェル。

周りは一面荒野。ここは天界と魔界を繋ぐ場所。

だからデーモンが入り込めるのだ。

あまり数が多くなると天界の結界を破りデーモンが入り込む。

たまーに、ここで本物の堕天使や魔族を見かける。

もしかしたら天界に悪さしようとしているのかもしれないとルシフェルは思う。

いっそ悪さを起こしてくれたらこのつまらない天界も少しはましになるんじゃないかと思うんだが。

「ルシフェル。仕事をサボるな」

デーモンからはなれ結界を張って休んでいると大剣をもった大男が近づいてきた。

そして、大剣で結界を両断する。ルシフェルは苦笑いを浮かべる。

「ちょっとぐらいやすませてくれって」

「さっきからずっと結界の中だ。見てないと思ってたのか?」

大男は鋭い瞳をこちらに向けそう言い放つ。

ウリエル。四大天使の一人。地をつかさどっている。

たまに地獄に行って拷問をしたりするらしい。確かにそう見える。

「デーモンぐらい・・・ウリエル一人で倒せるだろ?」

ウリエルは近寄ってきたデーモンを軽く切り伏せる。

また、一体デーモンの死体ができた。焼いたら食えないだろうか・・・。

「あぁ。だが、お前の仕事でもある。お前の仕事までやってやる気はない」

そういって自分に切りかかってくるデーモンを交わしわざと俺のほうに蹴り飛ばす。

当然他の標的を見つけたデーモンはこちらに向かってくる。

デーモンは鎌を振り上げて・・・真っ二つになった。

ルシフェルの斬撃。すばやく敵を切る。

「次、結界で休めばお前を地獄につれてって恐怖の拷問をしてやる」

「そんなこと立場的にできないだろ?」

「できる。神にばれなきゃな」

鋭い瞳は本気だということを語っている。相変わらず恐ろしいやつである。

サリエルほどではないが。

「仕方ない。ちょっと遠くのデーモン倒してくる。」

そういってウリエルからはなれることにした。


目の前に魔族の群れ。人型の魔族だ。つまり会話ができる。

「あれは手を出さないほうがいいな」

ルシフェルはとても手を出したいがそういうことをすると

多分ウリエルに怒られる。拷問はいやだ。

黒い翼もこうもりのもの。よく見ると一人だけ堕天使のようだ。

デーモン倒すより楽しそうなのだが・・・。

「そこの出て来い。気づいてないとでも思ったか?」

どうやらご指名は俺らしいとルシフェルは感じ、木の陰から男の目の前まで進み出る。

枯れ木の陰に隠れてたので時期にばれるだろうとは思っていたが。

結構早かったな。

「俺は、デーモン退治しに来た天使だ。ついでにお前らも退治していいか?」

楽しそうにいうルシフェルに堕天使はため息をつく。

「天使にしては好戦的なやつだ・・・。別に我々は戦う気は無い」

そういって男はさっさと歩き出した。つまらない悪魔だと心の中でつぶやく。

その瞬間だった。黒い糸が体中を締め上げる。

ちっ・・・油断した。アラクネか。蜘蛛の悪魔。黒い糸で獲物を絡めとり食す。

食されたくない。あんな気持ち悪い悪魔に。

「くっくっくっ。天使か。うまそうだな・・・」

アラクネは蜘蛛の姿をしているが言葉をしゃべる。

人が蜘蛛の恨みや怨念により姿が変えられたものだといわれているが

実際のところはまったくわからない。

「放せ。汚い蜘蛛め。俺は蜘蛛が嫌いなんだ」

無意識に光の魔術を使う。白い玉が蜘蛛に直撃した。

蜘蛛は動じる様子も無い。ちゃんと集中して撃たないと魔術は威力が無い。

目を閉じ呪文を唱え始める。蜘蛛もさすがにまずいと感じたようだ

黒い糸が首を締め上げだす。苦し・・・と思いながら呪文を唱え続けてようやく

術が成った。鋭い風の刃が糸を引き裂く。

「天使・・食う、食うぅぅ!!!」

蜘蛛は暴れだした。糸を次々と吐き出し絡めとろうとする。

ちなみにアラクネは結構な大きさがあり、ルシフェルの3倍はでかい。

赤い目がぎょろりと動く。ルシフェルを捕らえようと画策しているようだ。

ルシフェルは剣を構える。蜘蛛の吐き出す糸をかわし、ついに蜘蛛の足元までたどり着いた。

軽く翼を広げ、飛び上がると目を魔剣で突き刺した。

「ぐがぁぁぁぁああ!!!」

蜘蛛の叫び声。黒い魔剣からは力があふれ出ている。

それが直に蜘蛛の体内へと流れ込む。

「俺を捕まえた罰だ。苦しむがいい」

ルシフェルは剣にさらに魔力を流し込む。そして蜘蛛は動かなくなった。

「油断してた。あいつらこいつの気配を感じ取ったからさっさと行ったのか」

後ろに気配。剣で切りかかる。金属と金属のぶつかる音。

「ウ、ウリエル」

ウリエルは首を眺めている。さっきの蜘蛛に縛られたからあとでもついているのかもしれない。

「お前。アラクネの糸に締められたのか」

「そうだが・・・」

目の前のウリエルは急に剣を弾き飛ばし首に触れる。

「知ってるか?アラクネは呪いをかける」

「呪い?」

ルシフェルは首をかしげる。・・・勉強不足か。

「その呪いを受けたやつは殺したアラクネに乗り移られると聞くがな」

「・・・俺。アラクネになるのか?!?!」

すごい驚いた表情でルシフェルは目を見開いている。

「なるんじゃない。乗り移られるんだ。精神をのっとられるというのが正しい。

ちなみにお前はもう・・・」

「そ、それ以上いうな。まじめに乗り移られてる気分になる」

ウリエルは首を触りながらため息をつく。

「俺は解けない」

激しい頭痛が襲う。首の辺りが急激に熱くなりだした。

これが、呪いか。首、絞められてる時より苦しい。

近くの剣を眺めていたらなんだか急に人を切りたい気分になってきた。

「ルシフェル。」

「・・・食う・・・。」

「乗り移られてるな。乗り移りやすいタイプなのだな。」

ウリエルは大剣を握り、攻撃を始める。仮にもルシフェルの体。強い。

剣での攻撃の仕方はルシフェルの攻撃の仕方と同じ。

すばやい。ああいうのを体で覚えているというのかと納得するウリエル。

「・・あ・・・俺・・・何やってんだろ?」

「俺にきかれてもな。あとで地獄でみっちりと教えてやる」

「うあ・・・そんな・・・まじ?」

迷いの無い剣筋が少し鈍る。地獄は嫌いらしい。

その剣をはじこうとしたが蜘蛛の精神がどうやらルシフェルを避ける方に動かしたようだ。

避けたルシフェルは斬撃を放つ。それを剣で防ぎ攻撃をまた加える。

「あ・・・首が熱いし、頭痛いし・・・最悪だ」

「そうか。こっちも最悪だ。」

ウリエルはしゃべりながら剣を振るう。ルシフェルは剣を剣で流し、間合いを置く。

「う、ウリエル・・・食う・・・」

「お前は、蜘蛛になるほうが向いてるんじゃないのか?」

「・・あ、そんなことない・・・・・たぶん」

一気に間合いを詰めてくるルシフェル。軽くかわしたウリエルは上から剣をたたきつける。

剣で防ぐルシフェル。

「う・・・あ・・・レヴィには言わないでくれ・・・」

「・・・お前。一回部下に弱いってこと教えてやったほうがいいと思う」

ウリエルは冷静に言葉を放ちながら、力を強く込めていく。

「・・俺は・・・強いって・・・」

手が痛い。ルシフェルは気づくと剣を落としていた。

はじかれたというのが正しい表現だろう。

「帰るぞ。そうすれば直せる」

ウリエルはそういって、剣でルシフェルを気絶させたのだった。


・・・首が熱くない!!頭も痛くない!!

「あー爽快、爽快」

ルシフェルは自室で伸びをする。呪いを解いてもらった瞬間、とても楽になった。

結局あの姿をレヴィには見られたが。ウリエルが俺をわざとレヴィの所に連れて行ったのだ。

「やっと目を覚ましたんですね。ルシフェル様」

レヴィが部屋に入ってくる。隣にはウリエルがいた。

げっという表情を浮かべたのがウリエルにはわかったようだ。

「一生、目を覚まさないほうがよかったか?」

「いや・・・それは・・・な」

困った表情をするルシフェルをレヴィはにこにこと微笑みながら見ている。

ウリエルは魔剣をこちらに投げる。

「これを返しに来ただけだ。すぐ帰る」

そういってウリエルは去っていった。レヴィアタンはそばに寄ってくる。

「ルシフェル、大丈夫なの?あ、ウリエル様がルシフェルは弱いって言ってたけど」

「大丈夫にきまってるだろ。なんかよくわからない蜘蛛に呪いかけられただけだからな」

ルシフェルは満面の笑みを浮かべて答える。油断したな。珍しく。

そう思いながらルシフェルは笑みを浮かべ続ける。

「それにしては苦しそうだったけど」

心配そうなレヴィアタンを見ていたらちょこっとからかいたくなってきた。

ルシフェルは首を触り、う、やっぱ苦しいと演じる。

「ルシフェル。無理して演じなくていいよ」

「レヴィが心配してくれるかと思ったんだが。やっぱり、俺は演じるの苦手だ」

レヴィアタンはため息をついて、もう無理はしないでねといい部屋を出て行った。

「ルシフェルが負けるなんて珍しいな」

レヴィアタンが出てくと同時にベルゼブブが入ってくる。

「少し油断した。悪魔としゃべってすぐだったからな」

ベルゼブブはあきれた表情を浮かべた。

基本、ああいうやつはしゃべったりかかわったりしてはいけないのだ。

それなのに、ルシフェルはしゃべりに行ったのだから。

自業自得としか言いようが無い。ベルゼブブはまぁ、やりそうだけどなぁと思う。

「それにしても、アラクネか・・・・。中級の悪魔があそこにいるなんて珍しいな

 お前が負けんのも珍しいが」

アラクネは中級悪魔。デーモンは下級悪魔である。

基本、天界と魔界の中間地点ではそれほど上級の悪魔は現れない。

ちなみに、ルシフェルがあったのは魔族であって悪魔ではない。

まぁ、曖昧なものだが。悪魔と魔族の差など。

「たしかに、それはそうだな。」

「なんだかよくないことの前触れじゃなければいいけどな」

ベルゼブブは少し不安そうにそういう。

「そうだな」

やる気のなさそうな同意。ルシフェルにとって

別によくないことが起ころうと楽しいだけである。

この退屈な天界が楽しくなればそれでいい。

「ルシフェル。お前。争いをよぶなよ?よんだら絶交だ。」

ベルゼブブの言葉にある種の気遣いを感じる。ルシフェル自体はその気遣いに気づいたのか

気づいてないのか、気の無い返事をする。

なにも起こさなければいいがと気を使うベルゼブブだった。


サタンとルシフェル

ルシフェルがアラクネに負けてから数週間が経った。

今ではすっかり元気になってルシフェルはまた仕事を抜け出すようになっていた。

いつものようにレヴィアタンは仕事を抜け出したルシフェルを探して、

天界を探し回る。

「んーどこいったんだろルシフェル。

仕事はさぼっちゃだめってあれほどいったのに」

ミカエル様にもウリエル様にも聞いたけどどこにいるか知らないらしいしなぁ・・・と心の中でため息をつく。ベルゼブブも探してるみたいだから

すぐ見つかると思うけど。ため息をつきながらもひたすら地道に捜索に集中する

レヴィアタン。それを木の陰から見ていたルシフェルはひやひやしながら

通り過ぎるのを待っていた。ちょっと暇つぶすぐらいいいじゃないか・・・。

実際ルシフェルは暇ではないのだがそんなことをのんきに考える。

仕事が山ほどたまってるのはたしかなのだ。

「ルシフェル、久しぶりじゃないか。こんなとこで何してるんだよお前」

この声は・・・サタンか・・・。後ろに金髪の男が立っていて、剣を構えていた。

「仕事の帰りか?その剣は」

小声で話しかける。レヴィアタンにばれるとまずい。

「あいつお前の部下か、俺様がかわいが・・・」

サタンがものすごく恐ろしいことを言い出したので、すかさず口を挟む。

「やめろって。お願いだから俺の部下をいじめるのはやめてくれないか」

サタンはつまらなさそうな顔を一瞬し、あきらめたのかため息をついていた。

剣は相変わらず構えたままだが。サタン自体、別にルシフェルに剣を向けてるつもりはなさそうだ。サタンの仕事は基本悪魔の退治。好戦的な性格を結構している。

昔は結構仲がよくて剣の稽古とか一緒にやっていたが、サタンが忙しい上に

身分が結構違うのであまりあわなくなっていた。たまにルシフェルの部下をいじめにきていて、よくベルゼブブがなかされていたのを思い出す。今勝負させたら

いい勝負になるのかもしれないなと思う。

「今日はいい天気だな。ルシフェル。俺様と遊ぼうぜ」

すっごく楽しそうにサタンはそういって俺のほうをみる。

期待しているようだ。久しぶりだからっていうのがあるんだろうか。

「仕事はどうしたんだ」

「サボりに決まってんだろ。どうせお前もサボりなんだろ。

でも俺様のほうが偉いぞ。半分は仕事してきたんだからな!」

類は友を呼ぶ。つまり2人とも仕事さぼって逃げてきたところを鉢合わせしたことになる。半分仕事してきたって自慢できることではない。

「あのな。むしろ俺みたいに全部しないほうが潔くていいと思うぞ。」

なんとなく反論してみる。この状況は50歩100歩という言葉がすごくよく似合う。

「お、考えてみるとそうかもな。今度から俺様も全部さぼるとしよう

どういう遊びにしようか。そうだな、かくれんぼとかどうだ!」

サタンは胸をはってそういう。かくれんぼって。

「かくれんぼって。サタン、お前子供だな」

ルシフェルが笑いながらいうとすかさず言葉が飛んできた。

恐ろしい言葉が。

「無論天界全体でかくれんぼだ」

「天界全体だと。どんだけ広いと思ってるんだサタン」

さすがにこうこられるとどうしたらいいかわからない。

とりあえず先に隠れるほうをとって・・・

「無論お前探すほうな」

自分が隠れるって言う前にサタンが言う。

「やだ。俺はいやだぞ!!」

「それじゃあお前の部下で遊ぶから俺様。」

サタンが楽しそうにいう。たぶんいじめるほうをしたいんだろう。

今のレヴィアタンじゃ勝てると思えない。ということはいじめられる。

考えてみれば別にレヴィがいじめられても俺問題なくないか。

あーでもたまには助けてやるか。

「わかった。かくれんぼやろうぜ」

ルシフェルがそういうとサタンは驚いた表情をした。

まさか受けて立つとは思わなかったのだろう。

「まじで。お前探すほうだぞいいのか?俺様勝っちゃうよ?」

「何いってるんだ勝つのは俺だ!」

ルシフェルは自信満々に言い切った。


数時間後。

「あー!!疲れた!!勝つなんて言い切ったけどやっぱ無理じゃないのかこれ!」

天界の大半を探したが、サタンは見つからず、何度かレヴィアタンに見つかりそうになりひやひやしながらなんとか探し続けている。

「そういえば制限時間とか決めてないけどこれいつまでやるんだ・・・

まさかこのまま永遠見つからないってことにならないだろうな・・・」

ため息が思わず漏れる。こうなったらサタンの弱みを握っておびき寄せるのが

一番簡単なんじゃないか。そうだ!そうしよう!

よく考えるともうかくれんぼって域を超えてる気がしたが気にせず

サタンの弱みを握るため天界を走り回ることにした。

あいつたしかカマエルのとこの部下だったよな・・・。

ルシフェルはカマエルのとこに向かうことにした。

「いらっしゃい。ルシフェル。君がここに来るなんてめずらしすぎて

殺したくなるよ。ほんとに。」

来て話してすぐに殺したくなるってどんだけやばいんだ。

俺嫌われてるのかこれ。カマエルはただ微笑んでいる。

「あのなお前の部下のサタンについて聞きたいんだが」

「サタン。あぁ仕事サボってどっかいった子だね。ちょっとお仕置きしないと

だめかも。何がいいかな悪魔に食わせちゃおうかな」

すごいにこにこしながらそういってるので本気なのかと錯覚する。

というより錯覚であってほしい。

「そんなことより、サタンのなんか恥ずかしいこととかしらねぇか?」

「恥ずかしいこと?あぁ、僕にいじめられてよくないてることぐらいですかねぇ

てかサタンがどうしたんです?まさか織天使長様に手出ししてないでしょうね。

そんなことしたらほんとに彼悪魔になっちゃいますよ」

カマエルは微笑んでいていまいち表情が読めないが悲しそうにも見えなくはない。

「いや、かくれんぼをしてて見つからなくて」

ルシフェルがそういうと急にカマエルが立ち上がって笛を吹く。

「これで飛んでくると思うよ。サタン。」

カマエルは冷静にいう。さすがはパワーズを収めてるだけある。

力天使をまとめる頂点それがカマエル。

破壊とやばいのとやばいのしかなくて俺は嫌いだが。

案外いいところあるじゃないか。

「まじで!?!?」

「えぇ。」

数分後サタンが現れた。すごく嫌そうな顔をして。

「俺様、呼ばれるようなことした記憶ねぇよ」

ついてすぐ言った言葉がそれだった。その瞬間カマエルの表情が変わったことは

いうまでもない。

「サタン。仕事半分サボったようだね。いい加減にしないとおとりにするよ?

悪魔集めるのに便利そうだから君。食われてもいいし。そのまま食われてくれれば厄介者が一人消えて、僕は楽なんだけどね。後処理は簡単、君が一人で突っ込んで行って死んだって言えばいいんだから。よくいるしね。力天使では堕天するやつ」

「俺様でもそこまで言われたらきずつくっつーの!!」

サタンがすかさず反論する。そして話をこっちに振ってきた

「そこにいる誰だっけあれだ織天使長だって仕事サボってるじゃねぇか!」

「あ・・・そういえば俺も帰らなきゃ・・・」

まずいと危険を察知し逃げようと言葉を無意識に発する。

しかし時すでに遅しだった。

「ルシフェル、殺す。破壊しなきゃね君も。仕事サボってたやつはどうなるか

身をもって教えてあげるよ」

カマエルはすごい微笑を見せる。人をいたぶるのが好きなのかこいつ!

どんだけやばい性格してるんだ!サタンがそばで笑っている。

これは確実に俺を巻き込む気だ。

こ・・・こういうときこそ!織天使長の地位の高さを教えてやる。

「俺は織天使長なんだぞ、そんなことしていいのか?」

「別に。破壊開始。」

カマエルに地位なんて関係なかった。ルシフェルはなぜ逃げなかったと

最終的に後悔していた。


「レヴィ・・・手当ての仕方が結構ひどいんだが・・・どうしたんだ」

ルシフェルはため息をつく。ベッドの上で傷の手当を自分の城で受けていた。

結局あの後サタンと一緒に散々カマエルに恐ろしい(口に出せないような)やばいことをされ、ぼろぼろになりながら自分の城に帰ったら怒ったレヴィアタンに

ぼろぼろの状態で説教され、そしてやっとベッドで手当てを受けてるという。

とても疲れた状況なのである。

「ルシフェルー仕事さぼっちゃだめっていったでしょ。

 自業自得だよ。サリエル様にばらそうかな・・・。」

やばく恐ろしい単語が聞こえた。

「やめて。お願いレヴィやめて。まじ悪かった!俺が悪かった!」

「もうさぼらないよねルシフェル」

レヴィアタンがため息をつきながらいう。

「うぅ・・・もうさぼらない。こんな散々な目にあうのはごめんだもう」

こうしてまじめなルシフェルが完成するはずだったのだが。

レヴィアタンの期待はただの空振りに終わっていた。

結局傷が治ったらまた仕事をさぼったりして遊ぶようになってしまったからだ。

結局ルシフェルが仕事をサボらなくなる日は一生ないのかもしれないと

少しあきらめかけたレヴィアタンだった。


マモンという天使

マモンは智天使であり、なかなかな力を持った天使だった。

「あぁ、どこかに金、銀、財宝落ちてないかな」

他に比類泣なきほど貪欲で浅ましく。それは天使ではないようだったようだ。

一人で財宝や金のことを考えながら歩いていた。

ある日思いついたのだ。

「そういえばルシフェルとかいう織天使、無機物を好きなだけ出せるってきいたことがある。つまり金銀財宝もおっけーってことだな!よっしゃあいくぞそいつのとこに。んで金を出してもらうんだ。」

これがマモンがルシフェルのとこにくるきっかけだった。


「ルシフェル、お茶持ってきたぜ。ちゃんと仕事しろよ」

ルシフェルの城の書斎ではルシフェルが珍しく椅子に座り、おとなしく仕事をしていた。それはレヴィアタンが見張りをせずベルゼブブが見張りをするようになったからだ。ベルゼブブはほんとに抜け目がなく。逃げようとするとすぐばれて、

書斎に戻されてしまう。お茶とかたまにもってきて俺の気を紛らわすが、それぐらいで俺はあきらめないぞと心の中で思うルシフェル。そこに客人が来た。

レヴィアタンがつれてきたのは一人の智天使だった。大して地位のなさそうな、

だけどとても目がらんらんとしている。灰色の髪をしている珍しい天使だ。

背はレヴィアタンより少し高いぐらい。

「ねぇーお兄さん。無機物なら何でも出せるんでしょぉ?

金だしてよだしてよ!」

「は・・・?」

あまりに突然のことですぐさま聞き返してしまった。

目の前の智天使は相変わらず目をらんらんとさせている。

「できないぞ俺。俺がだせるのはこの城を作ってる無機物だけだ」

「え・・・え!!!なんだおいら来る意味ないじゃん。よしかえろう」

「早いだろ・・・さすがに早いだろ・・・」

「おいら金にしか興味ないからね。きれいじゃん金銀財宝って。」

智天使はすごく楽しそうにそういってにんまりとする。

貪欲なやつなんだなということだけはよくわかった。

「名前はなんていうんだ?」

「マモンっていうんだよ。よろしくねぇ」

楽しそうすごく楽しそう。なんだかわからないなマモンは楽しそうだった。

「ねーためしに無機物だしてみてよ!」

マモンがらんらんとした目でいうのでしかたなく適当に魔術で無機物をだしてみる。自分が作る無機物は黒水晶みたいな見た目をしてるのでそれなりにきれいである。

「わぁーきれいじゃん。いいないいな。もらっていい?」

ほんとに好きなようだ宝石が。とりあえずよくわからんが。

「あぁ、別にいいが」

ルシフェルは作ったものを渡す。別に他人が触ったからって壊れるわけでもない。

「おいらルシフェルの部下になるよ!こんなの毎日見られるのおいらうれしいし」

何だこの桃太郎的なのりで仲間になるマモンという智天使は。

部下にしろって急に。何なんだいったい。

「部下っていってもな、今事足りてるんだ」

瞬時に断る。こんなのが毎日いられたらたまったもんじゃない。

「そうかーじゃあさ本当に必要なときおいら呼んでよすぐかけつけるからさ

あと金銀財宝の話とかあったらすぐおいらよんで、詳しいから力になれると思う」

なんだかすごく協力的だからありがたく気持ちだけ受け取っておこう。

「あぁ、わかった。ありがとう」

こうしてマモンは帰っていった。

そういえば天界にも鉱山があることを思い出す。

あんだけ宝石好きってなんだ、彼女にでも振られたショックでおかしくなってたのかあいつ。それともあれが普通なのか、天使なのに。

いろいろ混乱しながら、ルシフェルはいろいろ推測を立てた。


2日後

「ルシフェル!みてみて!」

急に押しかけてきたのはマモンだった。手には古びた地図をもっている。

まさか・・・

「宝の地図なんだ!一緒にいこうよルシフェル」

ルシフェルはどっちかというと肉体労働も精神労働も嫌いで、

休日というか仕事がない日はのんびりしていたいタイプである。

だが・・・マモンは容赦なく。宝の地図を見せびらかせいこうよって誘ってきたのである。頭が痛くなったちょっと。俺はなんて大変なやつを手懐けてしまったんだ。

少し絶望する。

「い・・いや俺、忙しいからさ。俺の部下といってくると思うぜ」

すぐレヴィアタンを呼ぶ。

「何でしょうか??ルシフェル様」

一応客人の前だからか敬語を使ってるレヴィアタン。

「マモンに付き合ってやれ」

ルシフェルの言葉に思わずため息をつきそうになったレヴィアタンは

いやそうな表情をしている。

「わかりました」

結局あきらめたのか、そういってマモンと一緒に部屋を出て行った。


「あの、マモン様」

細い洞窟確かになんかありそうに見えなくもない。

だけどここは行き止まりだ。レヴィアタンはため息をつく。

「なに?」

マモンは目の前の壁をしげしげと眺めている。

そして何を思ったか呪文を唱え始めた。聞いたことのない呪文である。

マモンの手から光があふれだし、壁に吸収されていく。

いや貫通してるのかもしれない。

「い、いや、ここは行き止まりですよね?」

おどおどとレヴィアタンは聞く。

「地図にはこの先には道があるってかいてあってねー!

だからいま精霊にたしかめさせてるんだよ!」

楽しそうなマモン。本当に宝石などが好きなんだろうなぁってレヴィアタンは思う。

マモンが使ってる精霊魔法は結構高度なもので、ルシフェルが見たら感心するぐらいの魔法なのだが、レヴィアタンはそれに気づくわけもない。

「あるよ!!この先に道が!」

突然、マモンが大声を上げるからびっくりしてレヴィアタンは聞き返す。

「え、本当ですか?」

「この壁とりあえず壊そうよ!」

そういって呪文を詠唱し始める。この呪文は・・・

「マモン様やめてください、そんな術うったら洞窟全体が壊れて生き埋めに」

炎の上級魔法、ハイバーストの呪文。広範囲爆発魔法という恐ろしい魔法だ。

ここは仮にも洞窟だ。爆発によって壁が崩れてきたらまじめに生き埋めになってしまう。詠唱をやめたマモンがため息をついた。

「大丈夫!!これでも魔法は得意なんだよ!!この壁だけ爆発させて見せるから!」

「ちょっ!」

そのときには詠唱は終わっていた。さっきの続きから唱えてすぐに。

魔力だけは有り余ってるようだ。すごい爆発音にしばらくレヴィアタンは

耳をふさいでうずくまっていると、目の前の道が開けていた。

「うそ・・・ハイバーストでここだけ壁を壊すなんて」

レヴィアタンもようやくマモンのすごさに気がついた。

「こんなもん簡単だよ!なんでみんなできないんだろうねぇ」

仮にも上級魔法であって、基本相当練習しないと撃てない魔法である。

属性があってたとしても難しいというのに。

それを凝縮し規模を変えて撃つなんて、ルシフェルぐらいしかできないんじゃないかって思ってたけど・・・この人案外すごい人なのかなぁとレヴィアタンは思ってマモンの方を見たら、もうだいぶ先に行っていた。

「遺跡かぁ・・・まぁ金目のものだけもってくかな!」


数時間後

大量の金銀財宝をもってマモンとレヴィアタンは帰ってきた。

今は部屋でマモンとルシフェル2人である。

レヴィアタンはお茶を入れにいった。

マモンの情報力はすごいものだ。とルシフェルも少し感心する。

「ルシフェル!みてみて!すごいよね!この輝きといいほんと宝石とか大好きだ!アメジストとかもいいよねいいよね!」

すごいハイテンションで宝石を見ながらルシフェルにいうマモン。

「あ・・・あぁ。確かにきれいだよな」

ルシフェルはとりあえず適当に話をあわせる。

「ルシフェル!これでおいらの実力わかっただろー!

さあ、部下にしてよ!」

マモンは胸を張りながらそういうのでなんだかすごくかわいいなって思うルシフェル。まぁ部下なんて何人いても困るもんじゃないし。

してやってもいいかと。そうルシフェルは思った。

「わかった。してやるよ」

「おぉ!ルシフェルーよろしく!」

マモンは満面の笑みを浮かべてそういった。

その後レヴィアタンが持ってきたお茶を飲みながら話をして

マモンが帰ってから、レヴィアタンから洞窟での魔法の話を聞いた。

「マモン、強いのか」

「んー、みたいだよ。すごかったから魔法」

レヴィアタンが感心したようにそういう。

「精霊魔法ってな超上級魔法なんだけどな。

知ってるやつすら少ないんだぞあれ」

話を聞いて理解したルシフェルが独り言のようにいう。

まぁレヴィアタンにはわからないだろうと思っていたが

案の定すぐ思ったとおりの言葉が返ってきた。

「精霊魔法?」

レヴィアタンは首を傾げてる。やはり知らないようだ。

「属性の守り神を召喚してるんだ。

一応意思をもっているとは聞くけどな。

俺は普通に人型の精霊出せるからそういう実体ない系の

精霊は使わない」

ルシフェルはそういうとやはり理解できないらしく、

レヴィアタンは首をかしげたまんまだった。

「えーと、強いってことなんだよね?ルシフェル」

一人で納得したように言い出すレヴィアタン。

「まぁそんな感じだ。適当に覚えておくように」

ルシフェルはそういって苦笑いし、あまっていた仕事の書類に手をつけた。

こうしてマモンはルシフェルの部下となって、またルシフェルの周りは騒々しくなったのだ。


サンダルフォンとメタトロンと創造主


ある日のことだった。ほんとに突然なこと。

ルシフェルのところにメタトロンが現れた。

そういえばルシフェルは神の使いがくると毎回目の色が変わる。

警戒したような。よくわからない表情を見せる。

神の代理人メタトロン。当然その話し合いに自分が入れてもらえるわけもなく、

結局レヴィアタンは廊下でうろうろしていた。

「レヴィ、大丈夫だからしばらく別のとこにいたほうがいいぞ」

ベルゼブブが後ろに立っていた。いつの間に近づいたのか疑問に思うほど

自分は考え事をしていたようだ。ベルゼブブの表情も微妙にいつもと違う。

メタトロンってそんなやばい人なんだろうか。

「どうしてなの?」

ベルゼブブは明らかに困った顔をした。

「それはな。ルシフェルが創造主とあんま仲良くないからだ。

メタトロンは創造主の代理人。つまりなんかよくないことが起こるかもしれない」

その言葉にうそはないのはわかるけど。

「僕だって守られてばっかじゃないし」

小さなプライドが邪魔をするとレヴィアタンは心の中でつぶやく。

「あのな。ルシフェルはお前を気遣ってるだぞ。珍しく。」

「うー・・・わかったいったん離れるよ」

レヴィアタンはそういって歩いていった。残ったベルゼブブはため息をついた。


「ふふふ・・・」

メタトロンは微笑む。

メタトロンは金髪の長髪に杖を持ち大きな翼を持った天使。

背はとても高い。

「何の用なんだ?神の代理人が俺に」

ルシフェルは警戒の色を強めていう。

とても唐突で珍しいことなのだ。メタトロンを派遣してくるぐらいだから

何かあるに違いない。

「あー創造主様がねぇ。君にあいたいそうだ。だから伝えにきただけ」

適当な感じのメタトロン。神に忠実ではあるがこの件に関しては

あまりよくは思ってないらしい。

「いやだといったら?」

「そうなったら僕と弟で力づくで連れくしかないね。

僕は面倒だからやりたくないけど。弟は結構乗り気だよ君を

痛めつけるの」

メタトロンはそういって、ルシフェルを見る。

「いつまでにいけばいい?」

ルシフェルは聞く。とりあえずいつまでにいけばいいのか聞いて

それまでにいろいろ準備しようと思ったのだ。

「今すぐですよ。」

「は・・・?」

ルシフェルは困った表情をする。呼ばれたらすぐ参上しなきゃ本当はいけないのだ

それを心優しい創造主様が許してくれると信じたいが、そんなこと信じるような

創造主ではないことぐらい知っている。支配。俺を支配してそんなに楽しいか。

「いやだ。」

「ならやるしかないですね。サンダルフォン!」

呼んだ瞬間、サンダルフォンがまるで影のように現れる。

銀の長髪、手には剣。背の高さは同じぐらいだが、正反対の弟。

こっちが圧倒的に不利なのは知ってる。

「ルシフェル。創造主様に逆らうやつは消す。」

そう一言いうとサンダルフォンは容赦なく切りかかってきた。

剣といって相手が持っているのは大剣だ。ルシフェルの長剣とはぜんぜん違う。

力で押されたらルシフェルは普通に負けてしまうだろう。

左に避けた。さっきいた場所に大剣が振り落とされる。そして銀色の炎が上がる。

魔法剣というやつである。銀の炎は破滅をつかさどる。

毒みたいなものだ。あんなもの受けたら本当に無理やり引きづられていくだろう。

「不利なことは自覚してるでしょう。あきらめたらどうです?」

「いやだ。俺はあいつ大嫌いだからな。」

ルシフェルの鋭い声。いいながらもサンダルフォンの大剣をかわしている。

呪文の詠唱により、闇の魔法を放つがそれはきれいに真っ二つに大剣で切り落とされた。隙があるとはいえ、相手は神の一番の配下。たぶん相当な防具を渡されているのだろう。ルシフェルの簡単に詠唱できる術など通すわけがない。

「そうですか。ならば僕もあなたを動けなくしなくちゃいけませんね」

メタトロンはそういって、重々しい呪文を長々と唱えだした。

ルシフェルはすぐ剣をメタトロンに向け、突撃する。

その手前にサンダルフォンが入り、大剣を振り下ろし兄への攻撃を防ぐ。

絶対防御といっても過言ではない。

「ここは一歩も通さない。兄様には手を出させない。ルシフェル消す。」

ルシフェルは剣を振るい、大剣を振り下ろす隙をついてサンダルフォンに一太刀浴びせた。サンダルフォンがよろめく、そのときだった。

真っ白な光が見えた。一瞬の出来事。

「なんだ・・・体がうごかねぇ」

光が体を縛っている。体内からしばっているのだ。

「ふふふ・・・僕の精霊が君をしばってますからね。創造主様にもらったのですよ」

自慢げにそういう。やはりメタトロンは創造主のことが好きなようだ。

「この状態で俺を連行するつもりか・・・」

解除する方法を探しながらそう聞く。同じように精霊で対処しようにも

魔法が使えない。というよりろれつが回らない。

体が動かないだけでなく体の機能まで制限されてるようだ。

「気絶でもさせてほしいんでしょうか?」

「いやだ」

その言葉だけは鋭く響くが、この状態ではただのばかなのかもしれない。

まったく動けない。光が体内を支配している。

アラクネに乗り移られたときのことを思い出していろんな意味でいやだな・・・。

「消す。ここで消そう。創造主様に会わせるまでもない。」

サンダルフォンが冷たく言い放つが、そんなことできないことぐらい

ルシフェルはわかっている。創造主が言うことは絶対なのである。

「ルシフェル。術を解除してあげてもいいよ。だけど条件がある。

ちゃんと僕らに従って創造主様に会ってもらう。ってやつ」

「やだね。つれてくなら勝手につれてけよ」

ただの強がりであって別に勝算があるわけではない。

「なら、眠ってもらって楽につれてくとしようかな」

そうメタトロンはいって、精霊に何か命令を下したらしい。

体の機能の停止。一時的な機能停止。現代でいえば仮死状態にしたのである。

「さてとこれで楽に持ち運べるね」

メタトロンはため息をついてそういった。


創造主。懐かしいものだ。昔はそう、別に好きだった。普通に。

嫌いになったのは、俺の部下を殺してからだ。

とても簡単なことである創造主に背いたただそんだけである。

簡単であるが重大でとても重い。

彼女を止め切れなかった自分にも問題がある。だけど、創造主にうらみはある。

十分。彼女は、とてもきれいな天使で。とても不思議な天使だった。

人間の感情でいえば彼女に俺は恋でもしてたのかもしれない。

彼女は、ただ普通の理由で神にそむいた。支配から・・・逃げ出すために。

天使は誰でも支配されてる。その支配から逃れることはできやしない。

創造主の支配から俺は逃げたい。だから、だから。

「・・・ここは・・・?」

神殿大きな神殿。それで気がついたここは。

「ここは私の住んでるところだよルシフェル。そんなことも忘れてしまったのか。

昔のお前は忠実でよかったのに。」

創造主は美しい姿をわざとして、静かにそういう。

「黙れ。」

殺気にみちたルシフェル。こんな姿のルシフェルをレヴィアタンが見たら

泣き出してしまうかもしれない。

「君の部下だって別に逆らわなきゃ殺さなかったし。

私は優しいと思うけどね」

体は相変わらず動かない。まるで地面に固定されたかのように起き上がることができない。創造主はこんなこともできるのか。

「どうして今更俺をここに呼ぶ、挑発でもしたいのか?」

彼女はここで処刑された。俺の目の前で。

「そんなことないけどね。最近仕事サボってるらしいし

お仕置きが必要かなって思っただけだよ」

こっちを向いて微笑む。まるで何かから開放されたかのように

体が動くようになった。術を解いたのだろう。

「お仕置き。何する気だ?」

ルシフェルは立ち上がり聞き返す。

「君の部下一人私に頂戴。一人で許してあげる。」

創造主がそういったのは、ルシフェルが部下を大事にしてることをしっていたから。

渡すわけがない。それぐらい創造主も理解している。

「絶対いやだ」

「いやならどうしようか。君の部下今すぐここにつれてきてもらってもいいんだよ?」

自分がいかに無力なのか思い知る。サンダルフォンとメタトロンに勝てるやつなんて天界を探してもそうはいない。ましてや俺の部下が逆らったところで

あっという間につかまるのがおちなことぐらいわかっていた。

「わかった。差し出す部下は選んでいいんだよな?」

確認を取るルシフェル。

「そうだね。それぐらいは許してあげてもいいよ。

猶予は3ヶ月。それ以上は伸ばさないよ」

創造主はそういった。そのときルシフェルは決めた。

俺はもう部下を失うのはごめんだから、だから。

戦ってやる。意地でも戦ってやる。

「わかった。」

「そう、じゃあ帰っていいよ」


「ルシフェル!」

目の前にレヴィアタンが紅茶を持ったまま立っている。

そういえば紅茶を出してくれって頼んだことを今思い出した。

「どうしたの?ぼーっとして」

心配そうにしているレヴィアタンが目の前にいる。

「いや、なんでもない」

ルシフェルはそういって紅茶を飲む。俺は俺の部下を失う気はない。

あいつなんかに渡す気はない。誰一人として、渡さない。

そう思いながら紅茶を飲んでいた所為か。

レヴィアタンが相変わらず心配そうにしていた。

「なんでもないっていってるだろ。さてと今日も仕事でもサボるかな」

「えっ!だ、だめだって!ルシフェル!」

レヴィアタンが見たときにはもう窓ガラスから外に逃げ出した後だった。

















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