3話 コトブキから鏡子への告白
マレビトは不死であるが、不滅ではない。男しかいない。女はいない。この世界ではそれは常識である。
登場人物初期設定
鏡子 唯一のマレビトの女、死ぬと記憶を無くす
コトブキ 刑事、自称500歳のマレビト
ハタノ 全身刺青の破滅型のマレビト
カガミ 千年の寿命を迎え、ヒトとなった美青年
カスミゴロウ 鏡子が昭和の初めに生んだ子ども
モリオ 子供の頃に鏡子助けられた。
軍団カラス カスミゴロウが組織する私設武装集
虎ノ門病院
の病室。
ベットで横になる女の前で、それをただ見ている男、刑事、名前はコトブキ。
コトブキの少し痩せすぎな頬には、押したような3つのホクロがあった。
コトブキは女の前で、独り話し出す。
「鏡子、俺の話はきっと後で役に立つ。だから聞いてくれ」
女の名前は鏡子、本人から聞いた訳じゃない。
ただ、この女を探すものは、どこからともなくその名前を知る。
「ええか俺はマレビトになって、大体500才や。500年前、俺はヒトとして織田信長に仕えとった。いや、マジやで。そんで俺は、寝屋川の戦いの時に死んだ。戦争やからな、みんな死ぬ。直ぐ死ぬ。あほみたに死ぬ。俺もそう、刺されて死んだ。で、生き返る。そこからがマレビトの始まりや。誰が言い出したんか、“無垢の死”って言うんや。子供、大人、老人、いろんな年齢のマレビトがおる」
コトブキは、シーツを掛けられた鏡子の胸にそっと耳を当てる、心音は聞こえない。
「死ぬ事に回数に制限は無い筈や、手足くらいやったらくっつくで。逆に身体を欠損したままマレビトになると、身体の欠損はそのままや。片腕無しでマレビトとして蘇ったら、その片腕は蘇る事はない。マレビトになって、刺青なんか入れても、生き返る時に消える」
鏡子にかけられたシーツを右手が出るくらいにめくると、華奢な腕には刺青が隙間なく彫られている。
「そして、俺達は千年経つと死ぬ。後、俺達はヒトを絶対に殺せん。それはマレビトの不文律や。理屈や無い。
さて、じゃあ、俺たちは誰が産むか?それはヒトの女や、つまり、マレビトに女は居ない」
はだけたシーツを戻してやるコトブキ。
「俺が出会ったマレビトは男しか居らんかった。マレビトは男しか存在せんのか、って思ってたんや?それが、なんや、目の前にいるお前はなんや?鏡子。お前は女や、マレビトの女や。お前を見た瞬間、夢を見た。お前の為なら死んでもいい、ほんまやぞ」
風もない静かな室内で、鏡子に掛けられたシーツの胸元が微かに揺れる。
それを見て、微笑むコトブキの目は逆に暗く。いずれ目を覚ます目の前の女のこれからを暗示する様だった。
「ほんまやぞ」