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10話 虎ノ門病院1014号室

マレビトは不死であるが、不滅ではない。男しかいない。女はいない。この世界ではそれは常識である。


登場人物初期設定


鏡子  唯一のマレビトの女、死ぬと記憶を無くす


コトブキ 刑事、自称500歳のマレビト


ハタノ  全身刺青の破滅型のマレビト


カガミ  千年の寿命を迎え、ヒトとなった美青年


カスミゴロウ  鏡子が昭和の初めに生んだ子ども


モリオ  子供の頃に鏡子助けられた。


軍団カラス  カスミゴロウが組織する私設武装集


 コトブキから鏡子への告白のその後


病室には静かな人工音と、わずかな陽射しが満ちていた。

鏡子は白いシーツの上に横たわっている。眠っているのか、ただ目を閉じているのか分からない。


ベッドの傍らで、刑事コトブキが彼女を見つめていた。

三つの小さなホクロが、彼の目元に沈んでいる。


そこに若い刑事が入ってくる。若い刑事は鏡子の身元照会の結果をコトブキに伝える。


「一番古いもので昭和45年っていうのが出てきました。犯罪歴ですよ。この女は少なくとも70歳を過ぎています」


驚く若い刑事を鼻で笑うコトブキは、「最近の美容整形はたいしたもんだ」とうそぶく。

若い刑事は何を言っているんだと言わんばかりの顔をして、「何を言っているんですか」と言った。

コトブキは構わず、「署に戻れ」と、若い刑事を病室から追い出す。


おもむろに鏡子の胸元に耳を当てるコトブキ、聞こえる心臓の鼓動に笑顔になり、鏡子の頬に左手を当てる。

コトブキの左手は包帯で覆われ、手の甲は赤く血が滲んでいた。


「起きろ」と、コトブキが言うと、聞こえたのか、鏡子は薄く目を開ける。

コトブキは紙袋をベッドに置き、早く着替えろと素振りで促し、病室を出る。


病室を出ると、上着の内ポケットから警察手帳と手錠を取出し、壁に備えられたダストシューターに投げ入れ、左脇のホルスターから拳銃も抜いて捨てようとするが、少し考えてホルスターに戻す。


病室のドアが空き、帽子を被った鏡子が恐る恐る顔を出す。

鏡子の目には、わずかな不安といくばくかの覚悟が混じっていた。

構わずコトブキは鏡子の手を引き、足早に病院を出る。


ロータリーの車止めに止まっている黒いワゴンがタイミングを計ったようにリアシートのスライドドアを開け、ふたりは滑りこむ様に乗り込み、車は立ち去る。

  





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