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全能で楽しく公爵家!  作者: 二十口山椒
全能の爆誕
7/109

07:スマホ、見つかる。

 お父上様に急な要件が入ったから、部屋から追い出された。


 歩きながら、持たされたスマホを手にして少し考える。


 もうこれ子供だから分からないって言えば何とかなるんじゃね?


 魔力で動くスマホを渡せば離れた場所でも話せる魔道具の完成で、インターネットを作り上げれば情報発信が可能という魔法がある異世界あるまじき世界になってしまう。


 地球のスマホを俺の全能の力で改良すれば余裕で世界各地で圏外とか関係なくつなぐことができる。


 それ、普通にやばくないか? この世界で情報伝達手段は人か動物が伝えに行くしかないから、それをタイムロスなしでいけるというわけだ。


 でもインターネットで世界各地の人と繋がりたい!


 あれ? もしかして元の世界のネットと繋がることは……無理だな。


 となれば一歩ずつスマホを浸透させるための世界にしないといけないのか……。


「アーサー。それなに?」

「スマホだよ」

「すまほ? 何それ?」

「スマホって言うのは通話とかメールができる――」


 あれ? 俺今誰と話してる? えっ、話してる? いやまさかそんなわけが――


「つうわ? めーる? 何よそれ?」

「ッッ⁉」


 背後から俺の手元を覗き込んでいたルーシー姉さんがいたことに、声にもならない悲鳴を上げそうになる。


 だが寸前のところで収まる俺は偉い。えっ、どうすんの? もうルーシー姉さんの記憶を消すしかなくない?


 ていうか何でこんな漫画のしょうもないネタをしてんだよ。確かに演技の能力は使ってるけど、自動で受け応えする能力なんて使ってないぞ!


「とても気になる! それは何なのよ!?」

「あ、うん、それはね……」


 ……だが待て。これはいい機会なんじゃないのか?


 ここでルーシー姉さんに『僕はこれを作り出せる固有魔法を持っているんだよ!』と言って、二人だけの秘密にしてしまえば、スマホユーザーを一人確保だ。


 ルーシー姉さんなら結構好奇心旺盛だから……いける!


「ルーシーお姉ちゃん! こっちに来て!」

「教えてくれるのならいいわよ」


 幸い、ベラは俺の近くにはいないから、その隙にルーシー姉さんを俺の部屋に連れ込む。


 ルーシー姉さんを椅子に座らせて、俺はその隣に椅子を持ってきて座る。


「僕ね、誰にも言ってなかったけど、固有魔法を使えるようになったんだ」

「えっ!? ほんと!? どんな固有魔法!?」


 ぐいぐいと来るルーシー姉さんを受け止めつつ、右手にあるスマホと同じスマホを左手に出した。


「こうやって僕が考えたものを作り出せるんだ!」

「へぇ……すまほ? ってやつね」


 新しく出したスマホをルーシー姉さんに渡し、ルーシー姉さんはそれを不思議そうに見ていた。


 その間に右手にある俺が生後一ヶ月で出したスマホを改良する。


「これはどうやって使うものなの?」

「まずここを押してみて」

「うん……このコチコチ、癖になりそう……」


 あー、まあボタンみたいにポチポチするだけのものが売り出されているわけだからルーシー姉さんの言うことは分かる。


 売り出せば売れるのでは? 前世でもそういうガチャガチャがあったはずだ。


 ガチャガチャ? それも娯楽に飢えている人なら買うんじゃね? 一儲けできる予感。


「うわっ! 光った! 文字が浮かび上がってる!」


 ただ画面を見ただけでこの反応、いける!


「それから画面をこうして、スワイプしてみて」

「スワイプ? ……こう? うわっ! 画面が変わった! なにこのいっぱい四角い正方形が色々と……面白いわね!」


 ふふふふふっ、そんなことで驚いていたらいけないぜお姉さま。


「ほら、横にスワイプしたら動くよ」

「うわぁぁ! ほんとだぁ!」


 うわ、すごい速さで横にスワイプさせてる。


 だがそんなにスワイプさせても、この世界の人たち用にかなり頑丈に作ってあるから問題ない。


「お姉ちゃん、次はここの緑の場所を軽く押して放してみて」

「このよく分からない平べったい器みたいなところね」


 そーっと綺麗な人差し指を画面に置いてすぐさま放すと、数字がプッシュホン形式の配列で並んでいる画面が出てきた。


「こ、ここここ、これはどういうものなの……?」


 ワクワクしながら俺にそう聞いてくるルーシー姉さんを可愛く思いながら、説明する。


「それが通話するための画面だよ」

「これがつうわなのね……! それでつうわってどういう意味?」

「簡単に言えば、こうして近くにいなくても人と話すことができるんだよ」

「近くにいなくても……? 念話みたいな感じ?」


 あー、あっちの世界だと当たり前でも、こっちの世界だとあまり想像がしずらいのか。辛うじて念話という魔法があるからわかるくらいか。


「実際にやってみよ!」

「そうね! やってみた方が分かるわ!」

「僕があっちの部屋の角に行って、お姉ちゃんがあっちの部屋の角に行くとして、角に行ったらこの数字の画面、0と1を押して、また緑の電話の画面を押せば、通話が始まるから。始まったらこうやって耳元にスマホを当ててね」

「0と1で緑……分かったわ!」


 俺とルーシー姉さんは部屋の対角線上に移動して、ルーシー姉さんを見ているとたどたどしくスマホ画面をタッチしていた。


 そして三回画面をタッチしたところでこちらを見ながらスマホを耳元に当てた。


「うひゃぁ! な、何か聞こえてきたわ!」


 スマホを耳から離して驚いているルーシー姉さんから、電話番号が02で来たことで応答を押して耳にスマホを当てる。


「もしもし、ルーシーお姉ちゃん?」


 ルーシー姉さんの方を見ながら電話に応じると、驚いていたルーシー姉さんが恐る恐るスマホを耳に当て直した。


 この距離なら俺の言葉も聞こえていないはずだが、スマホから俺の声が聞こえてきたのがわかったんだろうな。


「もしもし?」

『あ、アーサー?』

「アーサーだよ」

『み、耳元の物体からアーサーの声が聞こえてくるわ……な、何だかくすぐったい感じね』

「それが通話だからね。スマホを持っている人同士ならどんなに遠くても会話することができるのがこのスマホの利点だよ」

『えっ、ど、どんなに遠くても!?』

「え、う、うん……でも相手が応じてくれないと通話にはならないけど……」


 そんなに食いついてくるとは思っていなかった……。


『じゃ、じゃあ私が王都に行っていてもアーサーとお話ができるの!?』

「できるよ」

『アーサーが王都に行っていても!?』

「もちろん」

『お、おトイレに行っているときも!?』

「それは出てから話したんでいいんじゃないのかな? でもできるよ」

『す、すごいわね……魔力はいらないの?』

「動力源は魔力だよ。一応魔道具というくくりだけど、魔力はそれほどいらないよ」

『へぇ……! 三歳でこれを作るアーサーは天才だったのね……!』


 ふふふっ、これでスマホユーザーを一人確保だぜ!


 だけど口止めすることも忘れないようにしておかないと。


「この通話を終わるときには画面の赤いところを押せば終わるからね」

『えっ! まだアーサーと話していたいわよ!』

「えっと……うん、そうしよっか!」


 うわぁ、これはあれか、夜遅くまで電話する彼女とかそういう感じか? でも顔を見ながら電話しているという意味不明な状況だ。


 ……ま、ルーシー姉さんが楽しそうに話しているからいいか。


 ☆


 やべぇ……何がやばいかってルーシー姉さんのスマホのはまり具合がヤバイということだ。


 一応ルーシー姉さんには誰にもこのスマホのことを話していないから二人だけの秘密だということを約束して、二人だけの秘密という点でルーシー姉さんは満足そうに返事をしてくれた。


 だけど……誰にも言わないようにして誰にもバレないようにしてくれてはいる。でもルーシー姉さんは時間があれば俺に電話を掛けてくるのだ。それはもうかなりの頻度で。


 鍛練の時間でさえもかなり頑張って早く切り上げて俺に電話を掛けてくるのだ。


 その頑張りはお父上様も目を見張るもので、その原因を俺に聞いてくる辺りルーシー姉さんのことをよく分かっていらっしゃられる。


 急にそうやって頑張って、コソコソとしていたらそれはルーシー姉さんが何かしているってバレるのは時間の問題だ。


 バレないようにしてくれているのも分かるけど……けどバレる、たぶん絶対に。


「あっ、ルーシーお姉ちゃん?」

『もしもし? なにアーサー? アーサーからかけてくるなんて珍しいわね』

「うん、ちょっと話があってね」

『んー? なにー?』


 もう現代人さながらの電話の受け応えをしているルーシー姉さんに本題を切り出す。


「ルーシーお姉ちゃんって、今すっごく僕に電話かけてくるよね?」

『えぇ、だってこれどこでもアーサーと話せて楽しいのよ!』

「あー、うん、僕もお姉ちゃんと話せて楽しいよ」

『そうよね!』

「で、でもね? ルーシーお姉ちゃんが急に鍛錬とか頑張って時間を作り始めたら、周りの人たちが不審に思わない?」


 もう三歳児がするような話ではないが、ここはこう言うしかルーシー姉さんに伝わらない。


『あー、そうね……』

「だから少し――」

『もう周りの人に伝えればいいのね!』


 あー、そっちにいったかぁ……。でもそういうことじゃないんだよね、これが周りに伝わったらすっごく大変になることはその七歳の頭でも分かるよね?


 確かにこの公爵家なら、お父上様やお母上様ならスマホを丁重に扱ってくれる。


 でも問題は、ルーシー姉さんは盲目的に俺が変なことを言っても疑問を抱かずに聞き入れているが、お父上様やお母上様がスマホの説明をした時にどう考えるか、ということだ。


 まだこの世界にあるもので、未知のものを作るならアウトになりそうなセーフだが、スマホは完全にこの世界で作られるにしても何世紀も後の話で、未知というにはいささか言葉が足りない。


『アーサー?』

「……お姉ちゃん、実はね、もっとすごいものを作ろうとしているんだ」

『すごい、もの……⁉ つ、通話よりも⁉』

「そうだよ……!」


 せめて五歳、成人まで待ってほしいところではあるがそれは無理だろうからから出来る限り時間稼ぎのために説得する。


 それにスマホに備え付けられているカメラ機能なんかも十分にとんでも代物だ。それから通話の進化系、ビデオ通話。スマホだからアプリを入れないと始まらない。


「だからね、完成するまで秘密にするのを手伝ってほしいんだ」

『うーん……これだけでもすごいんだけど……』

「お願い、お姉ちゃん」

『うっ……わ、分かったわ。できるだけ秘密を守れるようにする……』

「ありがとう! お姉ちゃん!」


 ふぅ……案外説得するのが簡単だったなぁ……。説得というよりも弟大好きな姉に弟攻撃を仕掛けただけだ。


『ねぇ、どんなものを作ろうとしているの⁉』


 やっぱり食いついてきた。少しずつ開示して行かないと姉の我慢が限界に達する可能性がありそう。


「一つはね、このスマホに外の光景を読み取る機能を付けようと思っているんだ!」

『外の、光景……? 絵みたいなこと?』

「そんな感じ! 人が描かずに、パって出来上がる感じだね!」

『おぉ……そんなものを作ろうと……!』

「できあがったらすぐにお姉ちゃんに見せるからね!」

『楽しみに待ってるわ!』


 カメラ機能でだいぶ時間が稼げそう……いや、もっとハマらせようとするのは本末転倒じゃないのか? あの姉が我慢できるとは……思えない。


 あー、どうしよ……でもこれはルーシー姉さんに頑張って隠してもらうしか道はない。ああやってバレてしまったのだからどうしようもない。

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