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全能で楽しく公爵家!  作者: 二十口山椒
都市開発本格始動

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120/120

120:龍車

 ベラの体に満足したからベラを落ち着かせても放してくれることはなく、そのままサグラモール領に入った。


 ランスロット家からサグラモール領までは馬車でそれなりにかかるがこの飛行車なら飛行船よりも速く到着することができ搭乗時間は短い。


 スマホは飛行車に設置されているから脳内からお父上様に『もうすぐつくよ』とメッセージを送り無駄に飛行車を走らせているグリーテンに声をかける。


「グリーテン。サグラモール家の少し上空に止めれる?」

「何とかやるわ!」

「何とかではなくちゃんとしてください!」


 グリーテンの適当な言葉に俺が絡んでいるからゲキオコなベラ。


「大丈夫だよベラ! この飛行車はぶつからないようになってるから!」

「……それなら納得します」


 俺がそう伝えれば落ち着いた様子を見せるベラ。


 まあでも、基本的にはサポートしてくれるプログラムが組み込んであるだけでぶつかろうと思えばぶつかれる。


 それにぶつかっても、ぶつかられてもこの飛行車は壊れることはないから問題ないんだけどね。


 お父上様から『もう来るのか。それなら出て待っておく』とメッセージが来たためあちらの準備もバッチリの様子だ。


 そして飛行車はサグラモール家が肉眼でも見える距離まで来ており高度も下がっていた。


 サグラモール家はランスロット家ほどではないが大きな屋敷だった。


 グリーテンはいい感じに屋敷の前の上で停車させた。


「到着ー! これいいわね!」

「……これほど速くサグラモール家にたどり着けると考えるならいいですね」


 ベラは運転手がグリーテンだったから少し文句があるのだろう。


「あっ! お姉ちゃんたちがいる!」


 モニターには下の光景が映っており主要な人物や使用人たちがいるが口を開けて見上げていて内心笑ってしまった。


「どのように降りるおつもりですか?」


 飛び降りようかと思ったがそれではあまりにもシンプルか? いやここでヒーロー着地を見せるのもありか。


「カッコよく飛び降りるよ」

「カッコよく……?」

「漫画の一コマにできるくらいにかっこよく着地を決めるってこと」

「……アーサーさまは難しいことを仰りますね」

「ならこれは勝負ね。誰が一番かっこよく降りれるか」

「そんなことはしません。大人しく降りてください」

「つまらないわねー」


 一番年上が一番年下の言葉にノリノリという事実。


「まずは僕から行くね」

「お手本を見せて頂戴」

「うん!」


 俺は一番初めに飛行車の出口から飛び、ちょうどみんながいる前になるように調整したのち回転を始める。


 そして地面が近くなると体勢を整えて右ひざと右手が地面につくヒーロー着地が成功した。


 前世ではこういうことはしなかったがやっぱりこういうポーズは男の子の憧れだよな。


 さらに俺に続いてグリーテンは俺の横でヒーロー着地を一発で成功させた。ベラは速度を落とす魔法を使ってゆっくりと降りてきた。


「私の着地はどうかしら!? アーサーを真似したのだけれど」

「すごくカッコよく決めれたと思うよ」

「……グリーテンさま、みなさまの前ですよ」


 グリーテンはみんなの前だが気にすることはなかった。


「ようこそアーサーくん!」


 誰もが唖然としている中で一番早くに俺に話しかけ、もとい抱き着いてきたのは久しぶりに見るノエルさんだった。


「久しぶりですね、ノエルさん」

「メールではやり取りをしていたけれど本当に久しぶりー! 随分と成長してる! 才能もかなりのものになっているね……!」


 俺の体をベタベタと触って確認しているノエルさん。


「人の弟に何してるのよ!」


 だがそれに待ったをかけるのはもちろんルーシー姉さん。さらに追い打ちをかけるようにシルヴィー姉さんがこちらに来た。


「ぶー、アーサーくんが嫌がっていないんだからいいじゃんかー」


 二人に来られてはノエルさんは勝てずに俺から引き離される。


 そして俺はルーシー姉さんとシルヴィー姉さんにピッタリと引っ付かれる。


「嫌がっているに決まっているでしょ!」

「アーサーは優しいから言わないだけ」

「もー、久しぶりなんだから少しは許してよー」


 鉄壁な守りに愚痴を言うノエルさん。


 今のところこの姉二人に勝てる同世代はいないからな。


 チラッとある人を探せばやっぱり後ろの方でこちらを窺っている人がいた。


「クレア」


 俺の呼びかけにビクッとしたクレアだが、誰しもがクレアに注目したからおずおずと前に出てくる。


「元気?」

「……はい、元気です。アーサーさまはいかがですか?」

「僕はこの通り元気だよ! 元気すぎて上の乗り物を作ったくらいだからね!」


 周りに人がいるから砕けた口調ではないが俺との距離は自然と近くなっている。


 これがまた愛らしいが人の目があるから今はやめておく。クレアが恥ずかしくて引きこもってはいけないからな。


「あれがアイの言っていた飛行車ですか」

「そうだよ」


 アイがいるからこちらにも色々と伝わっているか。


「ねー、アーサーくん」

「どうしました?」

「飛行車を実際に見たらいい名前が思いついたよ」

「聞きましょう」


 特にこだわりはないし飛行車だって適当につけた名前だから何かいい名前があるのなら聞いてみたい気持ちはある。


「まずあれを見た時に龍だと思ったんだよね。見慣れない人もそう呟いていたし」

「確かに龍には見えますね」


 あのフォルムはきっと飛びやすいように、速いように進化の過程でなったのだろうな。


 遠くから見ても龍に見えるからこれが何かわからなければ悪さをする奴らもビビるかも。


「だから、アーサー&ノエルの愛の龍車というのはどうかな?」


 ん? なんだか変な文字列がノエルさんの口から出てきたんだが。


「あぁ、ノエルはこういうことが絶望的にうまくないのよねー」

「自覚なし」


 そういうことね。ネーミングセンスがないのか。しかもそれが変だということを分かっていない様子のノエルさん。


「別に変じゃないよね?」

「誰でも呼びやすくて短い名前がいいと思いますよ。最後の龍車とか」

「愛もあった方がいいと思う」


 いやー、そこが一番いらないところだろうな。


「龍車、いいわね!」

「龍車。それがいい」

「私も……龍車でいいかと」

「じゃあ龍車にしましょう」

「ぶー」


 子供たちの意見が龍車として纏まったことでそれを見守っていた親たちがこちらに来た。


「アーサー、来てくれてすまないね」

「ううん、龍車の試運転ができたから大丈夫!」


 お父上様が俺にそう労いの言葉をかけてくる。


「あんなものを作るなんてアーサーはすげぇなー……」


 エリオットさんが見上げながらそうつぶやく。


「やっぱりスザンヌの息子ね。男として格が違うわ」

「うふふ~、そうでしょ~?」


 お母上様の息子で、今までの開発でゾーイさんからの評価はかなり高いと自負している。


「それよりもアルノ、こんなものを作っていたなんてどうして教えてくれなかったんだ? 教えてくれていたら駅とかいう設置もすぐに取り掛かれていたものを」

「……僕もさっき知ったところだ」

「は? どういうことだよ。こんなものこっそり作れないだろ」

「……あぁ、そうだね。だから今さっきアーサーが作ったらしいよ」

「はぁ!?」


 そういえばエリオットさんに俺の規格を知るのはスマホ以外になかったか。


「ど、どういうことだ……!?」

「それがアーサーを知るということだよ」


 その言葉には重みがある。さすがはアーサーのお父上様だ。


「それなら駅も……?」

「そういうことだ。すべてアーサーが作ってくれる」

「おいおい……神様かよ」


 全能だから神と名乗っても過言ではないかもしれないな。名乗るつもりは一切ないけど。


「その前に乗りたいわ! スザンヌ乗りましょう!」

「アーサー、いいかしら~?」


 これは駅を作る前に乗せろということなのだろう。


「いいよ。どうせだから気になる人全員乗ってもいいかもしれないね」

「アーサー、そこまで大っぴらにするつもりなのかい?」

「うん。これで他の領土への行き来が簡単になったらいいなって思ってる!」


 これはさすがにスマホほどではないからお父上様には何も言われないだろうと思った。


 それにここに駅を作れと言っている時点でそうなることは分かっていただろう。


 本当は秘密で作ってほしかったのかもしれないけど。まあそれは俺の計画ではないから却下だ。


「分かった。それが可能となれば確実に交流は進むだろうからね」


 よしよし、第一段階は成功だな。

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