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全能で楽しく公爵家!  作者: 二十口山椒
全能の爆誕
12/109

12:授業開始。

 俺の莫大な魔力とバカげた魔法適性が知られて、ある一つの問題が浮上した。


「どうしたものかな……」

「どうしましょうかぁ?」

「別に私はすべてを教えても問題ありませんよ?」


 執務室にていつもの位置に座っているお父上様、俺の隣に座って悩んでいる素振りを見せず紅茶を飲んでいるお母上様、机を挟んだ俺の対面に座っているルフェイの三人で議論していた。


 いやお母上様を除けば実質二人だけどね。


「すべてを教える時間はあるのかい? 僕もそうだけど、どれか絞って鍛錬をした方がいいはずだ。その方が時間も有効に使える。特に固有魔法があるのだから、属性魔法や無属性魔法に時間はさけないよ」

「凡人とは違って才能があれば時間なんて必要ありませんから、すべての魔法適性を伸ばした方向がいいかと」


 俺が才能に溢れているせいで、どの魔法に重点を置くかを大人たちは頭を悩ませていた。


 まだ一つか二つの適性だったらそれに重点を置いて、臨機応変に他の魔法を習うとかできたはずだが、すべてに魔法適性があるとそういう問題が出てくる。


 別に鍛錬をしなくてもすべて完璧にできるのだが、それを今の段階で誰も知る由はない。


 これがすべての適性があるとかなら鍛錬できるが、俺の場合は全能だから鍛錬の必要なくすべてができてしまう。


「アーサーには魔法の鍛錬だけではなく、剣などの鍛錬もある。すべての才能を伸ばすのに時間は足りないよ」

「魔法を鍛えればそれらの鍛錬は要りませんよ。それに必要であれば私がお教えします。ですから私にアーサーさまを預けてみませんか?」

「結局それがやりたいだけだよね、どれだけアーサーのことを気に入っているんだい。アーサーをグリーテンに預けるのは論外で、ランスロット家として武器の鍛錬は外せない」

「私もかなり使えますよ? それこそ魔法剣士としてアルノさまより上かと」

「ババアみたいな年齢でそれを言っても説得力などないと思うよ」

「ふふっ、女性に年齢の話をしてはいけないと習いませんでしたか?」

「いたっ! 僕が悪かったから呪いを解いてくれ!」


 お父上様とルフェイが仲良く議論を重ねているが、俺とお母上様は蚊帳の外だった。


「アーサー?」

「なに?」

「あなたは何がしたいのぉ?」

「うーん……?」


 お母上様にそう聞かれて、どう答えるのが正解なのか悩んだ。


 どれをやってもすべてやれてしまうから、どれでもいいが……いや、すべてをやって俺の全能ぶりを見せつければいいのか。


「どれも、してみたいかな。どういうのが僕に合っているのか知りたいかも」

「そぉ? それならそうしましょうかぁ」


 今絶賛議論を重ねているお父上様とルフェイのことはいいのか?


「そういうことだからぁ、一先ずアーサーには色々なことを体験させてみましょうかぁ」

「……相変わらず、キミはマイペースだな」

「本当に、スザンヌさまには敵いませんね」


 お母上様の言葉ですべてが収まった。これはもしかしなくてもこの家を牛耳っているのがお母上様なのか!?


 いや確かにそんな感じはするよ? いつもはほんわかとしているのに、腹の奥でしっかりと考えている感じがひしひしと感じる。


「まずはぁ、魔法の鍛錬を始めましょうかぁ」


 その言葉だけで今後の方針が決まるのだから、ほわほわとしているのは相手を油断させるための罠なのは間違いない。


 ☆


 日は改まり、ルフェイがいる魔導室まで一人で来ていた。


 時間が重なればルーシー姉さんが一緒に来ようとしたが、ルーシー姉さんはお父上様と固有魔法の鍛練をしている。


 ランスロット家の固有魔法の鍛錬は同じ固有魔法を持っている者同士が一番いいのだろう。


 パスカルとの実戦では得られない経験値があるのだろう。


 ルーシー姉さんがあのルフェイの顔を見て少し、いやかなり心配していたがさすがに大丈夫だろ。二人きりだとは言え。


 もしルフェイがショタに興奮して手を出す変態なら、それはそれで興奮してしまう状況だとは心の中で思ってしまいました。


 ノックをして中からルフェイの声が聞こえてきたことで俺は中に入る。


「いらっしゃいませ、アーサーさま。さぁ、こちらへどうぞ」


 ルフェイに案内されて教壇の前にある机に座り、教壇に立つのかと思ったら俺の隣に座るルフェイ。


「今日から魔法の授業を始めます」

「うん、お願いします」

「とは言っても魔法の原理、魔法の使い方の説明が主になります」

「魔法は次から?」

「時間があれば今日教えたいところですが、今日はあまり時間が確保されていないようなので」


 もう本当にそうだよ。俺の今日の予定、というかたぶんこれからずっとこうなんだろうなぁって予定がかなりびっしりと詰まっている。


 ルフェイの魔法授業から始まり、マナー授業、一般教養授業、体を鍛える鍛錬、武器の授業が予定されている。


 今までのお父上様の甘やかしはどこへやら、シルヴィー姉さんとルーシー姉さんよりも自由な時間がなくなっている。


 これもお父上様が俺のためを思ってやってくれているんだろうが、正直言ってこれを毎日するつもりならルーシー姉さんから抗議が入るんじゃないのか? 弟と遊ぶ時間がないって。


 シルヴィー姉さんはどうだろうか。まあシルヴィー姉さんの弟で楽しむのは独特だからなぁ。


「時間は有限です。魔法の原理をご説明しますね」

「うん!」


 ルフェイは手のひらに魔法陣を出現させ、収納魔法のようで魔法陣から分厚い本を出した。


「魔法に必要な物は二つ。魔法の動力となる魔力と、魔法の式となる魔法陣の二つです。二つが合わさることで、初めて魔法は発動します」


 分厚い本を開き、魔法陣の絵を見せてくるルフェイ。この魔法陣は発火の魔法陣だ。


「魔力は昨日測定した、というよりは予測しましたね。その結果が最低値で三千。これほどの魔力があれば生きていく中で魔力が不足して困るということはないでしょう。魔力は大気中に存在している魔素から呼吸することで回復することができます」


 その魔素の吸収が多すぎて、俺の魔力がゼロになることはまずない。だが……魔素って尽きることはあるのか?


「質問があります!」

「はい、どうしましたか?」

「魔素ってなくなるの?」

「四歳でその質問とは、さすがです。魔素は無限ではありません。ですが魔素がなくなることはほぼありません。魔素は世界各地に存在している世界樹によって生成されていて、消費よりも生成の方が多いんです。むしろ年々増加しているくらいなので、魔素の心配は必要ないかと」

「へぇ……そんなものがあるんだ……」


 植物が酸素を吐き出すみたいな感じか。正確には光合成だが。


「ちなみに世界樹はアヴァロンにもありますから、興味があればぜひアヴァロンにご招待しますね!」

「すっっっごく興味ある!」


 千里眼とか瞬間移動で簡単に遠くから見たり直接見たりできるが、招待されて行った方が楽しいに決まっている。


「それならアルノさまの許可をもらい行きましょう! 約束ですよ!」

「はい、約束です!」

「あっ、世界樹の近くは魔素濃度が高いので魔素を吐き出す術を持っていないと魔素中毒になってしまいますから注意ですけど」


 でも結局俺が魔素を多く吸収していれば、ここら辺の魔素濃度が低くなるのではないのか? だけどルフェイが何も言わないということは特に何ともないのか。


「話を戻しますね。魔法に必要な物の一つが魔力。そしてどんな魔法を使うか、どう魔法を操作するかを定める式が魔法陣が二つ目になっています。魔法陣は頭の中で魔法陣を構築し、それをこういう風に展開して使います」


 そう言いながらルフェイは魔法陣を俺の前でまた作って見せた。


「これができなければどんなに魔力を持っていても魔法を使うことができません。ただ魔法陣の展開はそれほど難しくないので、アーサーさまは心配しなくても大丈夫です」

「なんで?」

「魔法陣の展開が苦手で魔法陣の展開の鍛錬に時間を回したとしても、お釣りが出るほどの魔法適性をアーサーさまは持っていますから」


 まあ、全然余裕でできるから無駄な思考ですけどね。とりあえず適当に質問していくか。


「魔法陣の展開ができないこともあるの?」

「あります。できない場合の問題がある能力は二つ、魔法陣展開力と魔法陣構築力です。魔法陣展開力が乏しい場合は構築した魔法陣を引っ張り出すことができません。魔法陣構築能力が乏しい場合はそもそも脳内で魔法陣が構築できないことになります」

「なるほど……魔法陣って、自分で展開するしかないんだよね?」

「他者の魔法陣を使えるようにするのが、魔道具になります。ただ道具に魔法陣を組み込むということは、それだけ人が行うことを道具にも要求していますから、魔道具を作り出すだけで難易度は高くなります。それに組み込めたとしても、単純な魔法陣しか組み込めません」

「へぇ……」


 確かに魔道具は作るのが難しいし、単純な魔法陣しか組み込めないのだろう。


 だが俺は違う。俺がやればどんなに複雑な魔法陣であろうと組み込めるというチートっぷりだ。


「さて、魔法陣について説明してもいいのですが、またそれは次の授業にすることにして、属性魔法や無属性魔法について一通り勉強しておきましょう」

「はい、お願いします!」


 そこからどんな魔法があるのか、どういう使い方ができるのかをルフェイから教えてもらったことで魔法の授業は終わった。


 ☆


 魔法の授業が終わり、自身の部屋に戻っていた。次はマナー授業と一般教養授業が俺の部屋で行われるから、何も用意せずに座って待っていた。


 そして時間通りに扉がノックされたことで「どうぞ」と返事をする。


「失礼します」


 入ってきたのはメイド服を着ていたいつも通りのベラだった。


「ベラが先生なの?」

「はい。僭越ながらアーサーさまにお教えする任をスザンヌさまより承りました」

「ベラはそんなこともできるんだ……」


 完璧メイドはこんなことまでできるとは、さすがベラだ。それにしてもお父上様じゃなくてお母上様なんだな。


「メイドに教えられ、ご不満はありませんか?」

「えっ、何で?」

「……いえ、今の言葉は忘れてください」


 ご不満、というよりはどうしてベラが選ばれたのかという疑問はある。だってベラはメイドなんだから他に仕事があるはずだ。それこそ教えてくれる先生を他に探してもいいだろうに。


「ご不満ではなく疑問でしたか」

「えっ、何で分かったの?」

「それはもちろんアーサーさまのメイドだからです」

「……メイドは全員分かるのか」


 なにこの、たまに見せるベラの異常な勘は。そのおかげで俺のマンガもバレた……そういうわけじゃないか。あれはただ俺がへましただけだ。


「ランスロット家のメイドになる前、平民である私はいい学園でいい成績で卒業したことで、このランスロット家の次期当主であるアーサーさまの専属メイドに就くことができました。ですからアーサーさまにお教えすることができます」

「いい学園?」

「有名な学園ですが、あまり気にしないでください」

「ふーん……」


 すっげぇ気になる。ただ有名な学園と言われて思い浮かぶのは王都にある王立聖騎士学園だな。そこで一番だったと言われても、俺は納得する。


「私についてのご質問の受付はもうしません」

「はーい」


 ベラは自分のことをあまり話さないが、俺のことをよく知っていることがどこか不公平な気がしてならない。


 でもそれは話したくないという感じがするから、深くは聞かないようにしている。いつか話してくれたら聞く、という感じだな。


「私がアーサーさまにお教えするのは、貴族としてのマナー、そして最低限の知識です。ただ、おそらくアーサーさまはすぐに終えられると思います」


 ……いや、この感じは別にバレたとかそういうのじゃない気がする。


「そうかな?」

「いつものアーサーさまを見られている人ならば、そう思うはずです。普段のアーサーさまがつい先日四歳になられたばかりだとは思えませんので」


 これも欠陥全能のせいだな……。まあそれは割り切るしかないから置いておこう。


「マナーの授業と一般教養の授業、その配分は私にゆだねられています。なのでまず一般教養から始めたいと思います。よろしいですか?」

「よろしくお願いします!」


 俺は全能であって全知ではない。だが全知を全能によって再現することは可能だ。


 世界のすべてを知らないが、世界のすべてを見ることはできるし知ることもできる。それに俺の全能は一度覚えたことを忘れないし、忘れることもできる。そこはさすが全能だ。


 ベラによって行われる授業は非常に分かりやすく、ブリテン王国の建国時から話してくれた。


 マナー授業と一般教養授業の二つ分の授業を行ったが、全く飽きることなくぶっ通しで授業を進めた。


 そのことをお母上様にバレ、ベラがほわほわと注意されていたことが印象に残った。

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