118:駅設置
「ふぅ、まさかこんなにも早く駅をつくることになるなんて……」
「それは自業自得ではありませんか?」
「ごもっともで……」
お父上様からお願いを受けて飛行車に乗り降りするための駅を設置することになった。
お父上様が直々に作ってほしいと言ったわけではなく、これを知ったお母上様やゾーイさんがランスロット家とサグラモール家を繋いでほしいとお父上様にごねたらしい。
だから疲れていたし俺がこんなことをするしで色々疲れていたのだろう。……うん、次からはちゃんと言おう。じゃないとマジでお父上様が仕事を放棄しかねない。
公爵家当主の仕事だけではなく、奥さんのワガママを聞いたり、息子の奇行を受け止めたりとしているんだからさぞ大変だろう。
うん、そう考えたらちゃんと労ろうって気になってくる。俺がそんなことをされたらもう何もかもどうでもよくなるもん。
とにもかくにも、そんなお父上様の苦労を知って駅をすぐさま作ろうと思っているわけだ。
俺とベラは秘密の部屋に来ており格納庫1に入る。そうすればグリーテンが当然のようにおりうっとりとした顔で飛行車を見ていた。
「いいわぁ……」
まあグリーテンはそのままでいいや。気が済むまで飛行車を見ていればいい。
「それでアーサーさま、飛行車を停車する駅というものはどうするおつもりですか?」
「この秘密の部屋に作ろうと思っているよ」
「……いいのですか? ここから人が出るということになりますから、秘密の部屋ではなくなりますが」
「何も出る時は別の場所から出てもらえばいいんだよ。それに秘密の部屋へは行けないようにすればいいだけなんだからね」
考えるべきところは地上のどこから出るようにしようかってところだな。
まあ今は試作段階だからランスロット家の庭園の邪魔にならないところでいいか。
「この地下から飛行車が出て、地下に飛行車が入るのですか?」
「うん、そうだよ。空間を捻じ曲げてここに入れるようにするけどね」
構想的には地下から発進、空間を捻じ曲げて地上に出る、地上で飛ぶ、目的の場所にたどり着く、空間を捻じ曲げて地下に入る、地下で停車みたいな感じか。
もしもの時も地下の方が安全に対処できるだろう。ただこれをすれば他のところにも地下を作らないといけないんだよな……まあ他は別に地上に作ってもいいか……?
とりあえずここの駅は地下に作ろう。
駅は格納庫から直接飛行車を通せれるように秘密の部屋を作り直す。向こう側は何もないから自由に広げることができ、駅もすぐに作ることができた。
よく考えたら穴も掘ることなく材料もなく一秒も経たずに空間を作り上げるってすごいよなぁ。まあ今はその全能に感謝しよう。
「この格納庫から駅に行くのですか?」
「ううん、ここは飛行車だけが通れる道にしたよ。人間用の通路は別のところに作ったよ」
「もうお作りになられたのですね」
俺とベラはグリーテンを放置して格納庫1から出る。
「どちらに通路があるのですか?」
「秘密の部屋のアプリを更新しているから行き道は分かるようになってるよ」
この全能ってホントに便利だよなー。だって考えたことが、考えただけですべて実現できるし俺はネットワークにつながっているから何もかも自由にプログラムなどを変更することができるわけだ。
「……アーサーさまはどのように更新などをなさっているのですか?」
「端的に言えば、スマホからしか接続できない世界は僕が作ったんだ。だからその世界を自由にできて、こうして更新ができるんだよ」
「なるほど……」
全く間違っていないし嘘もついていないから何も考えずに伝えた。
ベラは秘密の部屋アプリを開いてどこに通路があるのか見つけた様子だった。
「あちらですか」
「うん、行こっか」
ベラと手を繋いで秘密の部屋を歩く。
それにしても屋敷の中は改造してもほぼ同じだったがこの秘密の部屋は完全に俺が作ったものだから達成感がすさまじい。
スマホやら魔道具はあるが規模が違う。これほどの規模は今までではあり得ない。まあお父上様に無断でやったけど。
「地図を見れば、この秘密の部屋は部屋が多いですね」
「うん。そっちの方がいいかなって」
「でも使いませんよね? これほど大きくする必要はあったのですか?」
「大きな方がいいじゃん!」
誰に何と言われようとこういう場所は広くないと面白くない。むしろ狭かったらこんな地下に作る必要はないからな!
「そういうものですか……」
「やっぱり貴族の屋敷も大きくないといけないでしょ?」
「ですがここはそれほど大きくしたところで無駄にするだけではありませんか?」
「それはそうだけど……」
全くのド正論だ。俺はここに誰もが招待するわけではないからな。
「あっ、静寂さんみたいな人たちが使うかもしれないよ?」
「そんなに数がいたら世も末ですね」
くっ、ベラはこういうロマンを分かってくれないからな。まあこの世界の価値観で分かってくれる人は精神年齢が低そうだけど。
「ここですか」
一本道を進んでたどり着いたのは一つの扉の前だった。
「この扉もスマホで開けることができるよ」
「スマホがないと扉を開けることができないのですね」
「うん、そうだね。でもスマホを持つ人が増えてくれば、特定のスマホでしか入れないようにはするかな。部屋は特定の人しか入れないようにしておこうか」
「……スマホを持つ人が増えるとは思えませんが……」
「何を言ってるの? ベラ。娯楽都市はみんながスマホを持っていることを想定しているんだよ」
「はい? ……そんなことをすればスマホが悪用されますよ」
「大丈夫。そういう人にはスマホの機能を使えないようにするから」
そもそもスマホの仕様も変えると思う。信用できる人はどこでもネットを使えるようになっているが、そうじゃない人は娯楽都市でしかネットが使えないという仕様にする。
「そこはキチンとアルノさっまとご相談ください」
「それはするよ」
俺を何だと思っているんだ。まあ周りを見ればそう言われても仕方がないと思うが。
ベラは手慣れない感じで扉のすぐ横にある端末にスマホ掲げれば扉が開く。
そこはすぐ先に駅のホームが存在している場所で正規な出入り口ではない。関係者専用出入り口みたいな感じだな。
「……本当にアーサーさまはこういう独特な造形がお上手ですね」
「何となくこうなった!」
もう少しこの時代に寄せてもいいかもしれないな。こっちの方が俺が見慣れている。
「あそこは飛行車が通る場所ですか」
「うん、そうだね」
駅の中はこれからのことを考えてお店など置けるように、何本か飛行車が止めれるようにしてある。それを使うかは別だけど。
「作れたからお父さんに写真を送ろ」
どうせだから駅のホームを背景に俺とベラのツーショットにしよう。
「ベラ、こっちに来て」
「はい」
俺がしようとしていることが分かったようでいい位置に立ってくれ、俺は駅を背景にベラとのツーショットをとった。
そしてそれをお父上様に送ったことで駅完成を伝えた。
……こんなに早く伝えなくても良かったのではないかと送った後で気がついてしまった。だって俺がこんなに早く作れることを分かっていなかったはずだ。
屋敷も一瞬で作り替えれると言ったが、ゼロから作るのは何も伝えていない。この秘密の部屋もどれくらいで作ったかを言っていないし。
「……こんなに早く作らなくてよかったのか……」
「そうですね。これほど早く作られるとは思われていないかと」
「そうだよねー……」
その証拠にお父上様からメッセージが来て『元々作っていたのかい?』と言われるほどだ。
……お父上様に申し訳なく思って張り切ってしまったわけだ。
「あれ? もしかしてこのあとって……」
俺の想像通り、お父上様からメッセージが届いた。
『飛行車でこちらに来てサグラモール家にも駅を作ってくれないか?』
あぁ……やっぱりこうなったか。




