103:再び街へ。
「街に行くね!」
「お待ちください、アーサーさま」
時間があったし、街に行く用事もあったし、暇だったし、思い立ったが吉日ということでベラに一言断りを入れて行こうとするがベラに呆気なく止められた。
「そんな軽い感じで行けるわけがありません」
「王都じゃないからいいかなって」
「確かに王都よりかは安全ですが、それでアーサーさまがお一人でお出かけしていいわけではありません」
「分かってるよ。だからベラを誘おうと思ってたんだ」
「本当ですか?」
「本当だよ。約束だからね。さすがにベラを悲しませることだけはしないよ」
「……それにしては危ないことばかりしていますが」
別に危ないわけではないんだよ? 全能を持っているんだから。でも全能を持っているのは知られてはいけない。
ただ、ここまで強いと分かっているのなら安全な気がするんだけどなぁ。今の俺が明かしている実力で俺に勝てる奴はそうそういないだろ。
「『狭間の指輪』で変身されるおつもりですか?」
「そうだよ。でも街で友達になったルーシーお姉ちゃんくらいの人たちと遊びたいから、外見を変えるだけだね」
「かしこまりました。では私は『リアルタイムマップ』でアーサーさまをお守りしておきます」
「いやいや、ベラを誘ったんだから一緒に来てもらわないと」
「……では、少し離れたところでお守りしておきます」
「ううん、違うよ? ベラは分かっているよね? 僕が何を言いたいのか」
ベラは分かる人に分かるように嫌な顔をした。
魔道具『狭間の指輪』はどんな姿にでも変身できて、ルーシー姉さんくらいの年齢と遊びに行くということはどういうことか分かるはずだ。
「……何のことだか分かりません」
「本当に分かっていないの? 分かっているのなら正直に言ってほしいなぁ」
「……子供の姿は勘弁してください」
「やっぱり分かってたんだ。それなら、分かっているよね?」
俺はベラの子供姿というか、ベラが子供を演じている姿が見たいからこうして言っている。
「……見たいのですか? 成人した私が子供の真似事をするところを」
「見たい! 僕はベラの色々な姿を見たいって思っているよ! ほら、ベラが僕のどんな姿を見ても興奮するってことと同じだよ」
「アーサーさまは私の色々な姿を見て、興奮するのですか?」
「そんな感じかな。ベラの色々な側面を見れたらそれだけベラのことを知れているからね」
俺の言葉を聞いて、少し考えて口を開いたベラ。
「かしこまりました。では私は精一杯子供を演じてみようと思います」
「そんなかたっ苦しい感じじゃなくていいんだよ?」
「……頑張ってみます」
王都で俺とベラとグリーテンで変身した時は、ベラは年を変えているわけではなかったからそれほどでもなかったのだろう。
むしろ俺が上手く演じきれていたからベラに驚かれていたくらいだ。
今回、ベラがそんな感じで子供になるのか、楽しみだな。
ベラの過去は気になるけど、それはベラの口から聞くことであって俺が全能で見るものではない。
何でもかんでも全能に頼ったらすべて俺一人で完結してしまうから、あまり使わないようにはしないと思っているが魔道具はポンポン出している俺。