(91)思い出
めげないためには、若いうちから思い出を多く作っておく必要がある。それらの多くが防波堤となって、生き辛くなった現実から我が身を救ってくれることになる。元号が変わろうとも、お札が変わろうとも、勝手にやって下さいっ! と、撥ねつける力を持っている。それが多くの思い出である。^^
とある会社の屋上である。定年前の二人の平社員が缶コーヒーを飲みながら話をしている。
「お札が変わるらしいなっ!」
「よく知らねぇ~人だなっ!」
「なにも、人にしなくったっていい訳だろっ! 花とか鳥とか建物とかさぁ~」
「ああ。まあ、決まりはないが、表は人物で、裏がそうなってるなっ!」
「明治天皇とか聖徳太子とかさぁ~、誰でも知ってる人がいいんじゃねえのっ!」
「お上の方で勝手に決めてんだから、俺達にはどうしようもねぇ~さっ!」
「知らねぇ~人では、給料もらっても、めげちまうなぁ~。働く気がしなくなったよっ!」
「キリがいいところで去るか…」
「そうだな…。どうせこの先、何年も残ってねぇ~し、そう出世も出来そうにねぇ~からなっ!」
「若い頃はよかったなっ!」
「ああ、あの頃はバブルでいい思い出が多い時代だったなっ!」
「だなっ! あの頃の気分で、どうだ一杯っ!」
「おっ! いいなっ!」
愚痴を思い出で吹き消しながら、二人は、いつもの小料理屋へと向かった。
人々は、いい思い出があるから、辛くても、めげないで生き続けられるのである。^^
完




