(72)寒暖
人とは勝手なもので、寒暖に敏感だ。少し暑いと、ああ、暑い暑い…と愚痴を零し、少し寒いと、ああ寒い寒い…と、これまた愚痴を零す勝手な生き物なのである。私なんかだと、特にそうだ。^^ 愚痴を零さず、暑さ寒さにめげないで動いておられる方々には、ただただ脱帽したい思いがする。^^
とある鰻屋である。二人の老人が席に座り、特上の鰻重を美味そうに頬張っている。
「ははは…暑いときはコレに限るっ!」
「そうですか? 私は寒いときでもコレですが…?」
「いや、そりゃ、そうですっ! 私だって寒いときでもコレですよっ! ははは…」
二人は食べ終えると、レモンとイチゴのカキ氷を注文した。
「鰻のあとはコレですよっ! そうそう、コレっ!」
二人は美味そうにサクサクとカキ氷を食べ終えると、いつものようにお代を払い、店を出た。
「毎度っ!」
鰻屋の店主にすりゃ、いい客である。明日も来ることが分かっているから、送り出す声も愛想がいい。鰻屋にカキ氷は不似合いだが、いつの頃からか、この二人に合わせ、品書きを増やしたのである。すると商売とは妙なもので、カキ氷だけの客も次第に増え出したというのだから商売はやってみないことには分からない。
店主の読みどおり、次の日も、そのまた次の日も、二人の老人は来店した。二人にとって寒暖は口実で、ただ、食べたかった訳である。こんないい店とお金があれば、寒暖にめげないから、いいですよね。^^
完




