(66)暑中見舞い
暑中見舞いの弱い台風が暖気のない涼しい風を送ってきた。予想外の涼しさを得て、猫手は、天から暑中見舞いを受け取ったような気分になった。というのも、ここ二週間ばかり猛暑の影響で冷たいものを多量に摂取し、食欲が完全にダウンしてしまっていたのである。なんとか流動物で凌いでみたものの、身体が気怠く、動きも思うに任せなくない。猫手は猫の手も借りたくなっていた。
猫手が朝、庭の水遣りをしていると、酒屋の八俣が御用聞きにやってきた。
「これは、これは猫手さん、ご精が出ますなっ! 注文のビールをお届けにっ!」
「大蛇屋さんか、いつも、すまないですねぇ~。お勝手が開いてるから、置いといてよ…」
「分かりました。それにしても台風で、急に涼しくなりましたなぁ~。お日様の少し手加減ですか、ははは…」
「そうそう! これ以上、暑い日が続けば、お日様が悪者になっちまいますっ! そういや、お日様から暑中見舞いが届きましたよっ! 五日ほどお盆休みだそうです」
「どういうことですっ?」
「いや、なに…。冗談、冗談っ!」
「冗談ですかっ! 冗談じゃなく、五日ばかり今日のような日にして欲しいものですなっ!」
「確かに…。暑さにめげず、頑張って下さいっ!」
「そいじゃ、先を急ぎますんで…。毎度っ!」
「ご苦労さんですっ!」
二人は庭の垣根越しで別れた。
めげないために、暑中見舞いは欠かせない。^^
完




