(63)精一杯
めげないで精一杯やる・・という心構えが一番いい訳だが、どうしてもめげてしまうのが人の哀しいところだ。オリンピックも終わりに近づいているが、いろいろな試合を見ていると、こんなところで…という脱落の場面を目にする。不注意による失点、思いもかけない大逆転の勝利etc.だが、そこに人の生きざまを見られる一瞬はオリンピックだからだろう。そんなアスリートの皆さんには、ただただ脱帽である。^^
暑い日差しが厳しい昼下がりの、とある家の居間である。
「どうにかならんのか、この暑さは…」
「私に言われても、どうにもなりませんよ、父さん…」
「こんなところで精一杯が嫌いなお前に愚痴を言ってもなっ! どれっ! 我が家の洗い場で水を浴びるとするか…。滾々(こんこん)と湧いてよく冷えよるからのう、家の洗い場の水は…」
ご隠居の恭之介は息子の恭一を冷や目で見ながら、洗い場の方へと去っていった。
こちらは、少し離れた洗い場である。孫の正也と愛奈が水浴びの真っ最中だ。二人は海水浴のように大いに盛り上がっている。滾々と湧き出る水源近くには西瓜が、よく冷えてますよ、食べて下さい・・とでも言うかのように浮きつ沈みつしている。
「おうっ! これはこれはお二方、ご精が出ますなっ!」
老人は敬語遣いで二人を窺う。
「じいちゃん、西瓜が冷えてきたよ…」
「どれどれ…。おう! よう冷えとるわいっ。未知子さんに言って切ってもらって下さらぬか、正也殿!」
恭之介は孫の正也へ精一杯に遜る。西瓜が食べたいからだ。
「ご老人、分かり申した…」
十分、水浴びした正也が、恭之介へお武家言葉で返す。正也が台所へ向かうと、愛奈はお兄ちゃん、お兄ちゃん…と、正也の後を追う。
「どれどれ、…おう! いい湧き水じゃ…」
精一杯やらなくても、めげない環境のいい地方も、まだまだあります・・というお話でした。^^
※ 本日も、ご存知、湧水家のお二人に特別出演していただきました。^^
完




