(57)忘れ物
忘れ物をするという行為は、字義が示すとおり、忘れて気づかなかったとき、心がすでに亡くなっているということになる。^^ そこには、必ずと言っていいほど魔の存在が介在している。もちろん、その魔は人の目には見えず、見えたとしても他の存在を利用しており、直接、『ははは…私が魔です』などと挨拶はしない。^^ フェアに、やってもらいたいものだ。^^ 忘れても、気づかないか、『大したものじゃないから、まっ! いいか…』と諦めてしまって取りにいかない・・この二点に魔が邪魔をしている事実が認められる。めげないで取りに行く場合は、魔を征した状態となり、金メダルな訳である。^^ それ以上、魔はその人に介在することが出来ず、スゥ~~っと消え去る他はない。^^
とあるお墓である。お彼岸ということもあり、大そうな人で賑わっている。アチラコチラと線香の煙が棚引き、遠目から見れば、ボヤかっ!! と騒ぎになりそうな棚引きかたである。
「んっ!? 数珠がないぞ…。しまった、お墓へ忘れてかっ!!」
禿山は、お墓参りをして家へ戻った瞬間、数珠をお墓へ忘れたことに気づいた。数珠はそのまま忘れ物には出来ないから、これはお墓へ取りに戻るしかない。仕方なく禿山は車をUターンさせ、お墓へ戻った。幸い、数珠は盗られることなく、そのままお墓に存在し、事なきを得た。そして、数か月が過ぎ去り、お盆の季節となった。例年、春と秋のお彼岸、お盆の念三回はお墓へ参る禿山だったから、お盆も当然、お参りをしていた。そして、お墓参りをして家へ戻った瞬間、浄水入れ用のペットボトルをお墓へ忘れたことに気づいた。たかがペットボトルのことである。数珠と違い、取りにお墓へ戻る・・というほどのものでもない。次のお彼岸に別のペットボトルを浄水入れにしてお墓参之りをし、忘れていたペットボトルを持ち帰っても、別に問題にはならない訳だ。まさか、空になった忘れ物のペットボトルを盗る人はいないだろう…と、禿山は束の間、思った。だが、そのままにしておくのも如何なものか…と国会答弁のように思え、禿山は、めげないでペットボトルを取りにお墓へUターンした。実は、そこに魔の狙いが潜んでいたのである。戻らなければ…と、魔は横眼から虎視眈々(こしたんたん)と魔が刺せそうなお墓参りする人を探していたのである。だが、禿山が、ペットボトルを何事もなかったかのように手にしてお墓から去ると、『チェッ!』と舌打ちする他はなかった。こういう舌打ちするような墓の魔の舌は、冥府十三王庁の決めで引き抜くことになっている。魔としての資格を剥奪されるという決めもあった。ただの地獄の亡者となつてしまう訳だ。それを考えれば、禿山がお墓へペットボトルを取りに戻ったことは、魔が禿山に助けられたとも言える。
めげないで忘れ物を取りに戻るという行為は、大事な物、そうでない物を問わず、いい結果を導くことになる。ただ、落とした物は忘れ物とは違い、探すのは勝手だが、場所が特定できず、その限りではない。^^
完




