(52)やってしまおう…
夏の猛暑の中、それでも桑岡は、めげないでやってしまおう…と蚕のように焼きソバを食べながら思った。めげないで思ったのはいいが、焼きソバを食べ終えると、昨夜の睡眠不足も手伝って、俄かに眠気に襲われた。いやいやいや、やってしまおう…と、桑岡は眠気に負けてはいけない…と思いながら必死に眠気を堪えた。対する眠気も負けてはいない。いやいやいや…ここは何がなんでも眠らせてしまおう…と、大内刈りをしかけた。ウトウトし始めた桑岡は、危ういところで大内刈りを凌いだ。そして逆に、袖釣り込み腰を眠気に掛けた。眠気は、おっと、危ねぇ~! と凌いだ。そして、裾払いにいった桑岡の一瞬の隙をついて内股を、エイッ! とばかりに掛け、桑岡を跳ね上げた。見事に眠気の大技は決まり、桑岡は心地よくスヤスヤと投げ飛ばされ、眠ってしまった。
「もうお昼よっ!」
母親の大声で、桑岡は、しまった! と目覚めたが、昼の時計チャイムが、審判が眠気に片手を上げて勝利宣言をするかのように鳴った。
「ああ…」
桑岡は、項垂れて眠気に頭を下げ、一本負けを認めた。
めげないでやろうとしても、生理的要求には耐えられないのが人です。無理に、やってしまおう…と思う独断は、返ってやってしまえなくなりますから、やってしまえるかどうかは十分、考えて判断しましょう。^^
完




