(43)傷(きず)
人の傷には、見える傷と見得ない傷がある。怪我をして身体の一部が傷ついたり、病気で身体の臓器が傷ついたり、厄介な見えない心の傷さえある。早く治ればそれに越したことはないが、長びくケースも多い。それでも人は、めげずに傷を治そうとする訳だ。
とある未来の地下病院の病室である。長期入院患者二人が隣同士のベッドで話し合っている。
「去年も、この潜望鏡から桜を見てましたな…」
「はいっ! 地上の木は丈夫でいいですなぁ~。ウイルスに関係なく何百年だって生きられる…」
「さよですなぁ~…人はウイルスの傷に弱い」
「そのとおりです…。しかし、私はめげませんよぉ~! 来年、この桜が見られるかどうかは分かりませんがね、ははは…」
「ははは…私だって同じですよ。それにしても、ウイルスは、もはや人類と戦争状態にあります…」
「2020年から始まった人類とウイルスの戦争ですが、こうして生きてること自体、不思議ですっ!」
「地上の人類は絶滅したっていうじゃありませんかっ!」
「地下病院の私達だけです。あとは私達を看護するロボットのみ…」
「ロボットはいい。ウイルスは関係がない…」
「ですなっ! 私もウイルスになりたいですよ…」
「いや、この見えない戦いに勝たねばっ! めげずに頑張りましょう!」
「はい、まあ…」
勝てるとは二人とも思っていなかったが、口から出す言葉と笑顔だけは、めげていなかった。
皆さん、ウイルスは私達を滅ぼそうとしています。勝てないかも知れませんが、彼らが与える傷に、決してめげてはいけないのです。^^
完




