2/99
(2)店(みせ)
とある商店街である。コロナ禍で、すっかり客足が遠退き、主人の精之助は、『今日は店を閉めるか…』と深い溜め息を吐きながら思った。そういえば人波で賑わっていた街路は見る人影も消え、閑古鳥が啼いている。
「精之助さん、いるかね?」
そのとき、隣で店を出す薬屋の入川が出さなくてもいいのに顔を出して精之助を呼び止めた。
「ああ、お隣りの灸煙堂さん…」
「なんか、儲けがないんだが、あんたとこは、どうだい?」
「ははは…いやだねっ! 私とこも同じですよっ!」
「宣言が出てからは、どこも同じですかね…」
「ええ、そうですよ、どこも同じっ!」
「まあ、お互いに、めげないで頑張りましょう!」
「そうそう! そうですよっ! めげちゃいけないっ! めげないでいきましょう!」
「数年後に思い出話で笑っていられるように…」
「ああ、そうですねっ! それを信じてっ!」
二人は笑いながら握手はせず、片腕の肘同士をタッチし合った。
店の商いには、めげないで終息を信じて待つ根気が必要なようです。^^
完




