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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

時の女神シリーズ

だから女神は時計を巻き戻す

作者: 茂木 多弥

 勇者アルスは体中の痛みを抑えて両手で剣を構える。頭から流れる血が視界をぼやけさせる。アルスの鋭い視線の先には角が生えたオーガ。アルスが切り落とした片腕をものともせず、巨大な斧を構え、闘志は衰えない。


「うおぉぉ!」


 アルスは自分を鼓舞し、オーガに向かって走り出す。呼応するようにオーガは斧を頭の上に構える。オーガから振り下ろされた斧をアルスは()(くぐ)り、オーガの肩口から斜めに剣を振り下ろした。


「よし!」


 オーガは体に振り下ろされた剣の勢いと共に膝をつく。アルスが決着が着いたと力を緩めた時、オーガの腕が振り上げられた。迫りくる斧がアルスの目の前に迫り、苦痛に歪むアルスの顔は頭ごと吹き飛んだ……

 


 勇者アルスは、ぼんやりとした意識から覚醒すると焚火の前にいる事に気付いた。


「そうか……俺は死んだのか……」


 アルスは神からの()()()()の祝福を受けていた。勇者である限り、死んだら記憶だけを残して、一定の時間が巻き戻る。他の勇者のように人の何倍もの力を手にするようなものではなく、単に時間が巻き戻るだけの祝福だが……


「アルスどうした? 死にそうな顔をして?」


 体格の良い大剣を携えた剣士がアルスの傍によってくる。アルスはその状況を見て、咄嗟に剣を構えて立ち上がる。


「全員、迎撃準備! 囲まれている!」


 アルスが声を上げると同時に一本の矢が剣士に向かう。アルスはその矢を叩き落とし剣士を守った。


「あぶねえ! アルス……助かったぜ!」


 剣士は現れたゴブリンの群れに向かって剣を振るう。魔法使いが魔法で辺りを照らし、弓使いが弓に矢を番える。


(よし、これでいい。()()()は、ここで剣士を失って苦戦を強いられた。これで俺は更に前に進める)


 戦闘は勇者達の優勢に進み、このまま戦闘は終わるかに思われた。しかし、一本の毒矢がアルスの首を掠め、アルスは地面に倒れた。


「俺はまだ死ねない……ま、魔王を倒すまでは……」


 アルスは剣を震える手で掴もうとするが、毒の効果の為に力が入らない。流れる血が意識を奪い、アルスの意識はここで途絶えた。



 神の国の塔のテラスで、けだるそうに人間界を見下ろしている女神は、手に持っている時計の針に指を掛けようとする。その様子を見ていた天使が女神に話しかけた。


「時の女神ノルン……なぜ? あのような人間ごときを構うのですか?」

「私は自分の力で立ち向かう姿が好きなの。()()()勇者は楽しいわ」


 そう言って、女神は時計を巻き戻した……

読んで頂きありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] 懸命に奮闘する勇者の時間を巻き戻すのは、「今回の勇者は楽しい」から。 純粋すぎる時の女神の動機が印象的でした。
[一言] 神々の遊びかぁ〜。 私たちの人生ももしかしたら『神々の遊び』なのかもしれませんね。 勇者でもないし時計巻き戻らないと思いますが。
[良い点] 勇者登場や時間が戻る系のファンタジー、自分は読むのに気合いが要りますが、茂木 様 作品でかつ文字数千字なので、安心して物語を楽しめました! けだるげな女神様の暇潰しのお遊び、カッコいいです…
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