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第69話 降臨、そして終結(1)

 もう少しや。権さん。今行くけん、待っとってな。それにしても鬱陶しい弾幕や。


「ええい、鬱陶しい」


 なんや、手を一振りしたら、弾が横に曲がるやん。


「まっとれ、その船にいる奴。全員殺したる! しかも只じゃ殺さんで。一人ずつ内臓引きずり出して、恐怖を与えて殺したる。フフフフ、ハハハハ、ヒヒヒヒ」


 ん? なんや。人が落ちて行くやん。あれやったら、ペシャンコやろな。目が飛び出て、脳が出て、内臓も出て。ああして殺したるか。


「フフフフフ、ヒヒヒヒ、 …… 」


 えっ、あれは権さんないか。不味い、権さんを撃つな! 


「太白、権さんを助け。ウチはあの弾幕を止めるけん」


    ◇ ◇ ◇


 万華は、権蔵を助けるために太白を投げた。槍は、白龍に戻り間一髪のところで、気絶している権蔵をキャッチして、弾幕の届かないところまで運んでいった。


 しかし、万華の槍こと、第一世界 西方西海大竜大王 太白龍は万華の心を守る最後の砦であった。九天仙女が太白龍に命じた事は、『お前が万華の手にある限り、邪を放つ武器を退けろ』であった。


 権蔵を置いた後、太白龍は待った。主が自分を求めて『戻れ』と言うのを。しかし …… 


   ◇ ◇ ◇


「小娘が、天界の槍を投げた。しめた。妖槍を発射だ」


 小娘から、どうやって天界の槍を離すか、思案していたが、あの男を助けるために投げるとは、ハハハハ、馬鹿だ。


 さあ、妖槍を掴め! 妖槍ゲルンガンを。お前の一族の槍だ。


 スクリーンが真っ暗になった。公豹はファー出現時の衝撃波を避けるため4ThWCの旗艦を、一時的に次元結界の中に素早く移動させた。


 空は血の色になり、灰が降り始めた。巨大な妖気を放つ中心には、額に第三の目があり、黒い翼に、全身、鱗と毛に覆われた妖獣が浮かんでいる。その手には黒いオーラを放つ妖槍ゲルンガン。


 頃合いを見計らって戻って来た公豹は、旗艦から出て空中に浮かんだ。


「はははは、妖魔王女ファーの降臨だ。復活の宴に相応しい生け贄を差し上げよう」


   ◇ ◇ ◇


 ドラゴンズパレスが吹き飛んだ。敵の艦隊二艘を撃破して包囲網の抜け、万華の姿が見えるところまで近づいたところで、その万華から黒いオーラの衝撃波を受けたのだ。

 乙姫は、地上に激突しないように姿勢を安定させるのに全精力をつぎ込む。何度も印を結び、あらゆる、結界、防御陣をかけるが、しかし悉く黒いオーラによって無効化されてしまう。


 一方でかぐや姫の方は、デッキに掴まり念話を送り続けた。


「“万華、正気に戻るんや。万華、そないな奴に負けんといて、万華! ”」


 かぐや姫は、何度も、何度も、何度も、万華に念話を送った。そして通じた。しかし、その返答は言葉ではなく、獣のうめき声だった。それでもかぐや姫は万華に語りかけた。


「“万華、何時もの万華にも戻るんや。笑っている万華に戻るんや”」


 次の瞬間、かぐや姫の脳裏に三つの赤い目が現れ、脳みそを殴られたような激痛を覚え気絶した。


 もう激突は免れないと思った乙姫は、加芽崎とかぐや姫の周りに防御壁を発現させて、ショックを和らげようにする。もはや、ドラゴンズパレスの大破は確実と思った瞬間、船を包み込む、ゴム状の泡が発生する。そして、ゴム鞠が弾むように数キロに渡って地上を転がり、止まった。


 乙姫は大破は免れたと安堵し、助けてくれた人に礼を言った。


「湘賢、おおきに」

と乙姫は呟いた。


 医務室にいた湘賢は払子を一振りした後、また深い眠りについていた。


   ◇ ◇ ◇


 私は指を鳴らしファーの目の前に妲己を出現させた。すでに昏倒の術をかけたので、ぐったりしてはいるが。


「さあ,喰え。そいつには、まだ、妖力が残っている。お前への最初の供物だ」


 本来なら、魔王に覚醒した紂王に喰わせるつもりだった。その計画は姜子牙によって潰され、妲己は別世界に飛ばされた。それから数千年後、今回の計画を始動するにあたり、こちらの世界に戻した。その妲己は、久しぶりに会ったにも係わらず、私をご主人様と言い、慕ってきた。


 お前は魔王に捧げる最初の供物なのに。


 易姓革命の時、紂王を魔王にするには妖力を注ぎ込む巫女が必要だった。夜ごと、夜の営みで妖力を注ぎ込む者が。

 私は転生者である妲己に目を付け、私に恋心を持っているかように錯覚させた。そして妖狐の魂を受け入れれば、永遠の命を得て、私と暮らせると信じ込ませた。転魂の術で妖狐の魂を受け入れた妲己は、人を喰らい、転生者を喰らい、妖力を増して、夜ごと紂王を虜にした。最後には魔王となった紂王にお前は喰われるとも知らずにだ。

 

 あの時は失敗したが、今度こそ、妖魔王女の糧になれ。


「さあ、ファーよ、妲己を喰え」


 ファーは、妲己を喰う事を躊躇っているな。まだ残っている良心が、それを是としないのか。しかし体は、それを求めて涎を垂らしているではないか。後、一押しだ、妲己を喰えば、思考能力も良心のかけらも無い、完全な野獣になる。


「見ろ、天空に赤い筋が現れた。天罰の始まりだ。ファーよ、お前の両親を殺したのは天上神だ。その天上神が、お前も消そうとしている。さあ、それを喰え、そうすれば完全な魔族の王女となり、良心の仇を討てるのだぞ」


 まだ理性が残っているな。妲己を喰わないなら、私が見せてやろう。


「天界は、お前の敵だ。その証拠を見せてやろう」


 妖魔王アシュとティー妃、そして子供のファー。妖魔なりの幸せな情景。そして、公牙(・・)に痛めつけられるファー。八卦真陣を発現させた九天仙女(・・・・)に、その中で消えていくアシュ。断末魔の悲鳴を上げるティー妃。


 記憶の断片が繋がるように、少しずつ改ざんして見せる。


「さあ、ファーよ。妲己を喰らい、あの光りに妖槍ゲルンガンを投げるのだ。天罰を下すために天界が開けた穴。あれは第一平行世界と直通だ。天上神も馬鹿だ」


 するとファーが妖槍を構えるではないか。顔が険しくなり、怒りに満ちるている。そして妖気を妖槍に集め始めたぞ。


 私は事成れりと心の中で手を打った。妲己を喰らわなくとも天界に魔槍を投げ込むならそれも結構。天界の崩壊は、この星も破壊するだろう。すべての生物、仙人、そして天上神をも、ファーの妖力となる。もう誰も止められない。ふふふ。私は旗艦に戻り、次元結界で高みの見物だ。


 そう思って、旗艦に引き上げようとしたその時、私の後ろから、誰かがファーにかける声を聞いた。


   ◇ ◇ ◇


「ファー、止めるんだ。お前の中には母が子を思う優しさと、父の強さと残虐性が入っている」


「誰だ!」


「ファーよ。優しさを取り戻し、その強さで、残虐性を抑えろ。目を覚ませ」


 公豹は公牙の声を聞いたように思った。しかし振り向いた先には、白龍の鼻の上に立っている権蔵がいた。


「はあ?」


 さすがの公豹も一瞬呆気にとられたが、気を取り直し、ファーに向き直おり、天空を指差して叫んだ。


「見ろ、天罰はもう止められない。ファーよ。その槍で、父母の敵、天上神を葬るのだ。それしか道は無い」

「万華よ、公豹の嘘に惑わされるな。正しきを見いだせ」

「だまれ」

「公豹よ、許しを請え。俺が口添え()()()()


 公豹はこの言葉にカチンと来た。『兄貴面しやがって』と心の中が乱れた。


「お前、利いた風な口ききやがって。その龍もろとも、消滅しろ」


 公豹は印を結び、手刀を切った。すると白龍と権蔵の真下にあたる大地に八卦真陣が現れる。


 公豹はこの時、間違いを犯した。


万華は槍に満身の力を込めて投げる。しかし、その的は、八卦真陣だった。


 発動しかけた八卦真陣は、妖槍ゲルンガンの放つ妖気と激しく反応し、闇と光が溶けあった。そして、巨大なクレータのような窪みと、中心に突き刺さった妖槍ゲルンガンを残して、八卦真陣は小さく、小さく固まり、消えて無くなった。


 それを見た公豹は掌を堅く握り、苦虫を潰した顔で歯ぎしりをした。覚醒したファーが、天界に妖槍を投げ込み、破壊をもたらすと踏んでいたのに、権蔵の余計な言葉で台無しになったのである。


「貴様、またしても私の計画を台無しにしやがって! 許さん」


 その言葉を聞いた権蔵は、腕を組んで公豹に忠告する。


「お前さ、人を貶めて、人にやらせる事しか考えてねぇだろう? 黒幕気取りで、矢面に立たずに計画通り行かないと嘆くのは、虫が良すぎるぜ。もう諦めろ」


 その言葉を聞いて、公豹は怒り狂った。


「何処までも、私を弟扱いしやがって。ならばその目で、私が世界を滅ぼすのを見るが言い」


 公豹は、突然、権蔵に近づき、首根っこを掴んで投げ飛ばした。そして、両手を使って印を結ぶと旗艦の艦橋上部が光った。


「見せてやろう。私の実力を。無間獄に落とされた仙人たちを召喚し、受肉させる」


 公豹が払子を一振りすると空に地上に、黒い球体が溢れ出した。


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