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第42話 万華の色仕掛け(3)

 万華の話がスパイ映画のようになってきた。勿論、R15だ。しかし、こんな修羅場を踏んできたとすると、俺なんか子供みたいなものだな。実際4000歳の万華から見たら、赤ん坊にもならないところだろうけど。


「万華、蓬莱の仙人は大変な場面を掻い潜ってきたんだなぁ。俺の言うことなど、甘チョロいと言う事を痛感したよ」

「そんな事あらへん。転生者はウチら蓬莱の仙人の依り何処なんやで。それに記憶からは消えてるんやけど、転生者も相当な修羅場を超えてきとるんや。ウチ、思うやけど、記憶ではあらへん、もっと深いところで経験として残ってる思うんや。これは権さんもやで」

「そうなのか」


 俺はそれを聞いて、ホッとしたが、拠り所である責任を感じた。『権さんも』はこの時は普通に付け加えただけだと思った。


 俺が、そんな深刻な思いをしていると、

「万華、それで如何したんや? 脱いだんか?」

とかぐや姫が、両手で口を隠して聞いてきた。


 すると、万華は

「ちょっとな」

と答えた。


   ◇ ◇ ◇


 大嶽丸の部下が居なくなったところを見計らって、

「ちょっと、酔ったかしら。暑いわ」

と万華は上着を脱ぎ始めた。


 そして、絹よりも滑らかで透けて見える着物を、緩く腰紐で止めた肌着だけになった。少し上気したピンク色の肌と乳房が見え隠れする。勿論、この時代では、パンティなど履いていない。


「ねえ、大嶽丸さま、如何して坂上田村丸の『黒漆剣』に勝てるのかしら?」


 最早、大嶽丸の血液は股ぐらに集中し、正常な思考はできない。


「鈴鹿御前、そんな事より、俺が楽しませてやるよ」

と我慢できず、飛びついた。


 しかし、万華はするりと抜けて

「あら、私、こう見えても天女なの。そこらの人間の女の様に力で、捕まえることはできないわ。私をものにしたいなら、私を納得させないと駄目なのよ」

と首を少し傾げ答えた。


 大嶽丸は、風のように手からすり抜けられて呆気にとられ、話しを聞いて悔しがり、それでも、目の前の肢体を諦められず、

「分かった。教えてやろう。俺には三明の剣がある。あれは神仏の加護が宿っていて、持つものを守るのだ」

と答えた。


 大嶽丸は、それを誇るかのうように言うが、目は万華の体に釘付けになっていた。


「大嶽丸様は、私をお守りしていただけると、仰ったと思うんですけど、三明の剣を私にお預けいただいて、守って頂けるのかしら。それとも、その剣がないと大嶽丸様でも、坂上田村丸には敵わないのかしら」


「そんな事はない。あんな小童、三明の剣などなくてもひねり潰せる。しかし、剣を渡すのは ……」


 大嶽丸は、自分が強いことを売り込まないと、目の前の食べ頃に実った二つの果実を逃してしまうと思った。しかし、三明の剣を渡すことには、まだ抵抗がある。


 一方で、万華はもう一押しと思い、大嶽丸から手が届かないギリギリ所に、手を後ろにつき、両膝を立てて、少し仰け反った形で座った。薄い滑らか肌着は重力で下に引っ張られ、乳房と乳首のラインをハッキリと描き出す。そして、足を僅かに開いた。


「ねえ、天女のここって、知っている?」


 見えそうで見えない天女の妖姿媚態に、大嶽丸は爆発しそうである。もう他のことは、どうでも良くなった。


「剣を渡す。そうしたら ……」

「そうね、坂上田村丸を討ってくれたら、ひと月、それこそ天に昇る気分にさせてあげるわよ」

「えっ、坂上田村丸を討ってからか?」


 万華は、両足を倒して、体を起こし横座りになった。胸を押さえて、肩を大嶽丸のほうに向けると、肌着がはらりとはだけて、首筋、肩、そして背中が露わになった。


 目線を下にして、肩越しに恥じらいを見せながら、

「だって、命狙われているじゃ、燃えないじゃない」


 一呼吸おいて、

「…… それに私が三明の剣で守られて、坂上田村丸が攻めあぐねている所を挟み撃ちすれば簡単に倒せますわ。そうでしょう? そうしたら …… ね」


 大嶽丸は、だらしない顔になり、

「分かった。これだ。これを持って行け」


 大嶽丸は手を振って、三つの剣を呼び寄せると、3振りの剣は空中を飛び、万華の前に置かれた。


「有り難う。うっふ」

と言って、ピンク色の唇を少し尖らして応えた。


 そして、三明の剣をサッと抱えて、

「じゃあね。私の屋敷に戻るわね。楽しみに待っているわ」

と言って、一瞬のうちに元々着ていた羽衣になり、飛んで行った。


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