後日談 <閑話>
魔王を倒してから、一週間、新聞、ニュース、WEBにもアラキタ倉庫の事は、全く載っていない。俺達が告発したとしても、恐らく証拠は残っていないだろう。犠牲者の事を思うと心が沈む。
「権さん、これもや」
万華が、俺の暗い思考を晴らすかように明るい声で話しかけてきた。
今日は万華とナリーナのショッピングにつき合わされている。洋服屋で試着して、小物を覗いて、2人で喋って楽しそうだ。俺は荷物持ち件、専属ドライバーになっているところ。店を数件回り、既に4袋を持たされている。
そう言えば、和子にも、ショッピング、つきあったっけな。俺を引っ張って、何時も笑ってた。
「ところで、万華、お前、変幻自在なのに何で洋服を買うんだ?」
どんな人間にも、どんな服装にも変化できる万華が、取っ換え引っ換え洋服を試着している。それに気に入った物は買っているのだ。
「権さん、乙女心が分かってへんな。こうやってナリーナちゃんと話ながら色々見て、買うのが楽しんやで」
と4000歳の乙女が宣わりました。
そして、ちょっと小声になって、
「ウチは、変化はできるやけど、デザインはでけへん。せやから、こうしてええなと思う物を物色してるんや。本当はぁ、着ただけでコピーできるやけどな、それだけでは悪い思うんや。せやから気に入ってコピーしたのは買っとんのや」
ああ、なるほど。あの萎れた花の刺繍じゃあ、洋服のデザインも無理かもな。でもまあ、ちゃんと律儀に買っているところは見直した。
「権さん、なにをニヤついとんねん。気色悪。なあ、ナリーナちゃん」
ナリーナは笑って頷いていた。
「ほな、次の店、行くで」
と万華が先頭きって街を歩いて行った。
ブーーーーーン、ブルブルブルブルブルブル
「ギルマス、ギルマスではないか。こんな所でクエストか?」
知った声がしてきたかと思えば、原付バイクに乗った勇者だ。バイクの後ろを見ると『お手前館』。流行の配達パートナーだ。
「俺は、万華とナリーナさんの付き合い。お前は配達か?」
「そうだ。ギルマスのクエストがないときは、こうやって配達の仕事を請け負っておるのだ。勤労は良いことだとコンシェルジュに勧められてな」
異世界から来た勇者が配達パートナーか。元の世界なら、盛大な凱旋パレードがあって王侯貴族のような暮らしになったかも知れねぇな。こっちじゃ、新聞にも載らないってのは気の毒なことだ。
ところで、勇者と聖女は、いつ元の世界に帰るのだろうか。それを考えると、ちょっと寂しくもある。




