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第2話-1 探偵 蘇生す

ん? ここは、白い壁、いや天井か。さっきのは、夢だったのか。


「先生、先生、来てください。目を覚ましました」

と足下の方で女が声を上げた。


 すると、今度は男の声で、

「千野さん、大丈夫ですか? 聞こえますか?」

と言いながら、目にライトを当てて来た。


 眩しいじゃねぇか。何だ、この禿オヤジは。


「聞こえているよ。ここは何処だ? 何処かの平行世界なのか」


「ここは、渋谷の右脇病院ですよ。混乱されているかもしれませんが、千野さんは胸部を刺されて、一時は心肺停止の重体でしたが突然息を吹き返し、ここに救急搬送されてきたのですよ。それからは信じられない回復力で、もうすっかり良くなっています。いや、驚きました。そうだ、 …… おい君、千野さんの社員の方とご家族の方をお呼びして」


「俺の家族?」

「ええ、可愛い娘さんが心配されていましたよ。本当に良かったですね」


 妻に先立たれた。子供も居ない。娘って誰だ? と考えているうちに看護師が点滴以外の装置を外してくれた。


 そして

「本当に驚きだ。信じられない」

と言いながら、医者と看護師は病室を出て行った。


 それと入れ違いに、パソコンオタクの声がした。

「ボス、大丈夫ですか? いやビックリしましたよ。上坂京子のライブ配信を見ていたら、ボスが刺されて、それで救急車で運ばれて行くもんですから。もう少しで他の探偵事務所を探すところでしたよ」


 こいつ、案外、薄情な奴だな。


「それで、犯人は?」


「現行犯逮捕です。熱烈なファンだった様ですが、現実とお伽話が混同して犯行に及んだ様ですね。しかしその後が悲惨です」

「と言うと?」


「取調中に死んだらしいですよ。伝染病で死んだとされ遺体は親族に看取られることもなく火葬にされました」


 そんな事があるか? 伝染病ならもっと大騒ぎしているだろう。とは言え、気の毒であることには違いねぇ。


「ふーん。俺を刺した奴だが、ちょっと気の毒だぁ」

「そうそう、明るいニュースも。さっき娘さんが、みえられて心配されていましたよ。やだな、あんな可愛い娘さんがいらっしゃるなんて、知りませんでした」


 はあ? こいつまで何を言っているのだ。


「でも、何故か関西弁ぽいですよね。むしろ変な関西弁? ボスは生粋の江戸っ子って言ってませんでしたっけ。複雑なお家の事情? まあ、これ以上は詮索しませんけど」


 関西弁だ? そう言えば、あの天女も関西弁ぽかったな。『どアホ』という声が今でも耳に残ってやがる。いやいや、現実と夢を混同しては、俺を刺した犯人と同じなっちまうよな。

 それに久保田の顔には『詮索したい』が、ありありと出ているから、ここはキッパリと否定した方が良いだろう。


「俺には娘などおらん」

と少し顔を背けて応えた。


「えっ。そうなんですか。と言う事はボスの財産目当ての詐欺?」


 俺に財産などない。あえて言うならスバル360 スーパーデラックスくらいだな。間抜けな詐欺師だ。俺が目を覚ましたから、もう現れないだろう。

 

 久保田から顔を背けて外を眺めていると、久保田の少し上ずった声が聞こえてきた。


「ボス、娘さんが …… 来ましたよ」

「えっ?」

と振り返り、俺は絶句した。


 そこには、あの夢で見た天女とそっくりの学生服を着た美女がいた。


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