ようやく救助されました
脳震盪になっていた上に、後頭部を強打された男は、ピクリとも動かなくなった。
強く叩きすぎたのだろうか?
出血はあまりしていないようだけど、大きなこぶができているようだった。
子どもの力で肥満体の中年男を撲殺するのは難しいか。
どうしよう…。もう一発殴っておくか?
いや、決してこの男を殺したいわけではない。
起きられると、面倒臭いことになりそうなので、できる限り長い時間お眠りいただきたいだけなのだ。
男を見て、殴るか殴らないか思案していたところ、再び寝室の扉が開いた。
今度は、先ほどとは違い、バンッという大きな音を立てて、勢いよく開いたのだった。
「っ!!!!!」
突然聞こええた大きな音に、ビクッと肩が跳ねあがり、心臓がどきどきしている。
めちゃくちゃびっくりした…。
すると、大きな声を上げて軍服のような黒い服を着た男女が、室内になだれ込んできた。
うおぁ!!今度はなんだ!?
突如現れた軍人たちは、変わった形の火縄銃のような、マスケット銃のような、なんとも言えない形の鳥銃を構えて、腰にはサーベルを帯剣している。
中には、指揮棒のような形の、いかにも魔法使いが使いそうな杖を持っている者もいた。
扉をあけ放ち、最初に室内に入ってきた女性軍人は部屋に私と肥満男しかいないのを確認すると、彼女の後ろについていた部下と思わしき人たちに、何やら指示を出し始めた。
指示を受けた部下たちは、勢いのいい返事をした後、それぞれ行動を開始した。
部屋を調べるもの、部屋の外に出て部屋の防衛を固めるもの、この部屋以外の部屋を調べに行くもの、みんながみんな軍人然とした動きで、自らの仕事を遂行しようとしている。
部下たちが動き回る中、彼女は2人傍らに引き連れて、私の方に歩いてきた。
まず、私の隣にいる気絶した男を調べ始めた。
部下の一人が呼吸と脈を図り、生死の確認を取る。
上司に向かい、一度頷いたところを見ると、男は生きているらしいことが分かった。
この男が生きていたからと言って、私は良かったとも、残念だとも思わなかった。
上司の女性は、部下二人に指示を出す。
彼女の指示を受けた部下の二人は、巨漢の男の両腕と両足を掴み、担架を持つようにして部屋の外へと運びだしていった。
男が連れ出されたのを確認すると、女性は私の方に向き直った。
彼女は私を見て、心配そうに眉根を寄せ話しかけてきた。
「えげつないケガねえ…。可哀想に…。」
この人の言っていることは聞き取ることができた。
なんだか若干なまっているような気がする。
彼女は、私が裸であることに気づき、自分の上着を被せてくれた。
上着からはふんわりと甘い花の香りがした。
どぎついにおいではなく、上品にほのかに香り程度で、香りのおかげ気持ちが落ち着くような感じがした。
助けてくれたことや、気遣ってくれることに関してお礼を言いたいのだが、私には伝える言葉がない。
もどかしく思いながら彼女を凝視していると、私の視線に気づいたらしく、彼女はふんわりと微笑んで私の頭を軽く撫でたのだった。
「君を傷つける人 vcdしゅl。君 vfhすgヴぃうぐ 安心しいやね。」
重要な部分が分かってよかった。
ちゃんと聞き取りことはできなかったが、彼女たちは私のこと保護してくれるようだった。
嘘をつくような感じには見えないから、安心していいのかもしれない。
ようやく気を抜ける状態になったことがわかると、急に疲労感が襲ってきた。
ケガのせいで体力的に、もう限界だったらしい。
急に眠気が襲ってきた。
強い睡魔に抗うことができず、私は意識を手放した。