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手枷は鈍器に該当します②

寝室の扉が開かれる。


その中から現れたのは、肥満体の中年男性だった。

白いバスローブを着て、その手には、マフィアなどがよく吸っているような葉巻がある。

屋内でも歩きたばこをするタイプの人間らしく、葉巻は煙を上げていた。


あのおっさん、いかにも嫌な奴って顔してるなぁ。

なんか…、嫌いな気がする!!


彼の顔を見て、私は初対面にも関わらず彼のことが嫌いだと感じていた。


その肥満の男は、私の顔を見て少し驚いたようだった。

直後、男は満足そうに下卑な笑みを浮かべた。


扉から2mほど離れたところにあるテーブルに置かれた、これまた高級そうな灰皿には葉巻を捨てると、こちらに向き直った。

ベッドは扉に足を向ける形で部屋に配置されており、男は扉からまっすぐに、ベッドの足側まで歩いてきた。

にんまりと下品な笑みを浮かべながら、男はこちらに近づいてくる。


近くで見るとデカイな。

いかにも、いいもん食ってます!って体つきだ。

遠目で見ても性格悪そうな顔してると思ったけど、近くで見ると余計に性格の悪さが伝わってくるな。


私は近づいてきた男を冷静に観察していた。


見る感じ、男は40代半ばから50代くらいの中年男性だと思われる。

メタボの典型と言えるような、だらしない体をしていた。

歩くたびに、腹部がたゆたゆと揺れている。

太っているせいか、実際の身長よりも大きく見えるような気がした。


顔はお世辞にも美しいとは言えない。

顔についた脂肪のせいか、両瞼は重く垂れさがり、頬はパンパンに膨れていた。

鼻もつぶれて上を向いてしまい、印象は豚のようだ。

頭髪は生え際が多きく後退している。

毛髪は薄いのに、バスローブから覗く腕や足、若干見えている胸毛は豊かだった。


The悪代官って感じ。


男に対する私の印象は、完全にマイナス評価だった。


いやいや、人を見た目で判断するのはどうかと思う!

もしかしたら、見た目に反していいやつかもしれないし…。


男に対して勝手な弁護を考えていると、ベッドの足側の際に近づいていた男は、私に向かって

話しかけた。


「おぉ!起きていたのか!強く %hsじkhふ てしまって死んだかと思ったぞ!」


ん?なんて?


一瞬何を言ったのか全く分からなかった。

聞き取れた部分から、私を心配するようなことを言っていないのはよくわかった。

しかし、聞き取れなかった部分は、全く知らない言葉を聞いたかのように、意味を理解することができなかった。


何とも言えない表情をしているのであろう私を無視して、男は話を続ける。


「高い買い物をしたんだ、すぐに jkfふれい ては困る。」


高い買い物とか行ったか今。

状況から察するに、買い物って私のことだよな?


男はどうやら、私を“買った”らしい。

しかも結構高い額で。


私のこの男に対する評価が、急降下している。

こんなに幼い子どもを買うような奴がまともなわけがない。


自分の身に危険が及び始めていることを、私はひしひしと感じていた。

気づけば男は、ベッドの際に座りっている。

こちらにより近づいてきていた。


「あぁ、やはり bvfdbgぅいrs が美しい。綺麗なものが rgyfsvl は bchdsg。」


いよいよ何を言っているのか分からなくなった。


何も言い返すことができず、男はべらべらと話しかけ続けている。


「私の hふfがlsぢふn、bかよfjふぃあう、もっと dhさふぃうぎぃ。そうだ!ふぇうfふいあlヴぁうひvんvんkhvdlifwんk!!」


何やら熱弁している…。全く分からない。


「なぁ?そう思うだろう?」


えぇ!?

ここで同意を求められましても!!

全くなんて返したらいいか分からないよ!!


最後の回答を求める部分だけ分かった。

しかし、それまでの会話が全く分かっていないのだから、返答のしようがない。

仕方ないので、素直になんて言っているのか分からない、と言ってしまおうと思った。


《いや、さっきから何言ってんのか全く分からないんですけど。》


私が答えると、今度は男の方がよく分からない、といった表情を見せた。


あらあら?通じてない?

聞き取れなかった??


もしかしたら、聞こえなかったのかもしれないと思い、私はもう一度言っていることが理解できないという旨を、男に伝えた。


「fhdすいhがい?」


私の、お前の言っていることがよく分からない、という言葉は、男のよく分からない言葉で返答されてしまった。


《いやだから、なんて言ってるのか分からないんですって。》


「さっきから、なんて dhすいg?それに、なんだかcdしゅふぉあfbvofvyfsd?」


ところどころ聞き取れるのに、肝心なところが分からない。


日本語パッチがちゃんと作用していない、海外のフリーゲームのような状況になっている。

海外のフリーゲームの方が、数百倍はましだ。

意味の分からない言葉があったら、辞書で調べれば何とかなる。

しかし、今は男の話す言葉を調べる術がない。


さらに、私の言っていることも男には全く通じていないようだった。

ある可能性が頭をよぎる。


ここは異世界で、日本語は全く通じない。

そして、私はこの世界の言葉に対応していない。


ナンテコッタイ!!!

言葉が通じない!!!


私が軽く絶望しているのに気付くことなく、男は一人で話を続けている。


「まぁ、いい。 fhわえいfg が vbさvぃ ていて hfsづあ からな。うむ、やはり奴隷は fhづふぉ がいいなぁ。」


お?いま奴隷とか言ったか?

奴隷って私のことか?


状況的に、奴隷が私のことを指しているであろうことは容易に想像できる。

不穏な言葉に、私はこの男が善良な人間ではないことを理解した。

この状況では、私がこんな状態にされている件に関して、この男が関係していること疑いの余地がないだろう。


「首についたその痣も、体中の傷もすべて vぬhfewi!! vsdにfv人形のようなcfdすあf も良かったが、fyごfおpヴぁ なのも良い。」


このセリフで、こいつがケガの原因だということが確定した。


この野郎!!めちゃくちゃ痛いんだぞ!!貴様の骨もバキバキに砕いてやろうか!!


そう思ったが、言ったところで伝わらないので、心の中に留めておく。


ベッドの際に座って話続けていた男は、ベッドに乗り私の方へ近づいてきた。

手を伸ばせば触れられる位置に座ると、息を荒らげて男は言った。


「私の天使よ、fgsづgふぃふいおjv!!」


その瞬間、全身に鳥肌が立った。

言っていることはよくわからなかったが、気配から生理的嫌悪感を覚えた。


天使ってなんだよ…。めちゃくちゃ気持ち悪いな。


身を引こうとしたところを、男に二の腕を掴まれてしまった。

力が強く振りほどくことができない。


「dfごf な目! fdふぁうよふぇcvbヴぉ7ewfjqwい;おおふぁいvほえwfじゃhfヴぃおあうぇ;えgひおえ;rぎlcんsdじょfひあ;!!!」


全く分からねぇぇぇ!!!


興奮状態にある男の言葉は、私にはもはや全く聞き取れなくなっていた。

何も反応できず、固まってしまった私を見て男は満足げな表情を浮かべているようだった。

私が怯えていると思ったのだろうか。


その予想は正解だった。

自分に怯え、抵抗できまいと考えた男は、私が軽く小脇に挟んでいたシーツをはぎ取り、二の腕を掴んでいない方の手で、私の顎を下から掴んだ。


えぇっと、なんだっけ。

この状況、顎クイ?だっけ?


男の思惑と裏腹に結構冷静な私は、前世で語られていた、イケメンにやられたらときめく仕草について思い出していた。


しかし状況は、そんなに暢気なものではない。

男の目は、獲物を見つけた肉食獣のようにギラついていた。


これは…!アカンやつ!!


瞬時にそう理解した私は、考えるよりも早く、男の顎を下から手枷でえぐるようにぶん殴っていた。


ゴッ!と鈍い音がした顔と思うと、男の体が横にぐらりと傾いた。

男は自分が何をされたか理解できていないようだった。

ベッドに倒れ伏した彼は起き上がろうとするも体が動かない様子だ。


顎を思いっ切り殴られたことで、脳震盪を起こし平衡感覚を失ったようだ。

理解できない状況に、男は意味が分からない言葉を叫んでいた。


「fASUDVg・あgjvp:あpヴおあうg:!!!」


痛む腕で殴ったので、衝撃が私にも響いてしまいとても痛い。


「いっっったぁ~~~っ…。」


人を殴ると、殴った方も相応に痛いというのは本当だ。

物凄く痛いが、これは仕方ない。

自分の身に危険が迫っていたのだから。


痛みに涙目になっている私に対して男は、意味は分からないが、悪態をついて激しく抗議しているようだった。

男の声がとてもうるさい。

倒れたままひっきりなしに叫び続けている男を見て、私はおもむろに、両腕を振り上げ男の後頭部に手枷を振り下ろした。


ゴスッと鈍い音がして、男は静かになった。


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