7:だけども地上で光は消えず
眼鏡の上で
手が触れる
すぐ近くで
僕らの声は重なり合う
赤いフレームの
小さめのレンズが入った眼鏡
「これに決まりですね」
「似合うかどうかまだ分からない」
「絶対に似合います」
「どうしてそう言い切れるの」
ヨナは考え込む
答えが出ないことは分かっている
それでも考えるヨナは
きっと
諦めが悪いわけではない
ヨナは
自分が考えるということの意味を知っている
「ヨナがそう言ってくれるのならこれにするよ」
たとえ似合わなくても
ヨナが笑ってくれるのなら
きっとそれでいい
「待っててくださいね」
そう言って駆けていくヨナはもう笑っている
「幸せ」と呟く
それは今
僕らの皮膚に張り付いている
少し前まで
そこには胡散臭い死の臭いが張り付いていた
「お前たちもいつかは死ぬ」と言われているのに
僕らはその言葉を心の底から信じることができなかった
それは
よくある嘘のようだった
笑顔で
ヨナが戻ってくる
その姿が
世界と不自然に反発しているようで
僕は
「いつまで続くだろう」と
訊く
すると
ヨナは
立ち止まる——
全てを理解してうつむき
世界に溶けていったものたちに少しだけ触れようとしながら
「ごめん」
と、言葉を落とす
「僕らはまたすぐに
残酷な世界に連れ戻される
今はただ
夢を見ているだけなんだ」
「夢じゃないよ!」
差し出される
赤いフレームの眼鏡
「あなたが感じたことも
私が笑ったことも
絶対に
消えてなくならないから」
ヨナの言葉が
七月の地上で力強く光る
それは
勇気であり、ひとつの覚悟として僕を貫いていく
眼鏡を受け取り
レンズ越しにその光を見る
ヨナは
一瞬止まって
それから——
笑ってくれた
「ごめん
やっぱり、似合わなかったかも」
「いや、これにするよ」
「もっといいのがあるよ」
「ヨナが笑ってくれたんだ
きっと、これが一番いい」
首を傾けて
ヨナは笑う
きっと
今はこれでいい
あらゆる後悔を
今は
僕らの光で覆い隠せばいい