18:隔たり
寒波のなかでなら
僕らは互いを見失わない
正確に距離を把握して
あと何歩進めばいいかを数えられる
手を伸ばして
互いの体に触れる
長い冬はそれを当たり前にする
だから
壁に阻まれたとすれば
僕らはすぐに互いを見失う
ヨナの声が聴きたい
そう
思ってしまう二月
教室の壁の向こうで
同じように机に座って先生の話を聞いているヨナ
どんな顔をして
どんな格好をして
聞いているのだろう
休み時間になると
僕らは電波でやり取りをする
そこに
ヨナはいるのだろうか
僕の知っているヨナは
電波に何を乗せているのだろう
「雪、だな」と
先生が窓の外を見て口にする
大きめの雪が
重たそうにゆっくりと降っている
僕らの間の電波は
雪という重力に押しつぶされて
地面に激突するかもしれない
伝えたいことが伝えられない
断絶の二月
僕らが体を意識するということは
そういうことだ
ヨナが
遠い
だから
僕らは求め合い
素手で相手を傷付けていくのかもしれない
ヨナは笑ってくれるだろう
積もった雪を踏みながら
さらに地球を固めようとするだろう
名前を呼んだら
返事をしてくれるだろう
ヨナの
頰に触れてもいいだろうか
柔らかくて温かい頰は
僕の冷たい手をどう受け止めるだろう
いいや
僕は
自分の全ての欲求を黙らせる
それをヨナが不満だと言うなら
きっと僕らは
死に取り憑かれている
いや
違う
たぶん
僕らはすでに
死なのだ




