14:距離
固まることで存在感を取り戻す
誕生の十二月
僕らは冬にこそ
地上における本来の始まりを体験する
大地が目を開けるのは寒さゆえ
僕らが自分の体を確認できるのも
この寒さゆえ
だから
この季節はあらゆるものを近くに感じる
あらゆる虚しさが一時的に消え去って
やはり永遠は存在したのだと思えてくる
握った誰かの手は確かに手であり
誰かの喋る声は確かに声でありうる
ヨナは
どうだろうか
きっと彼女は図書室で勉強をしている
僕はそっと彼女の前まで行って
ただ一言
「ごめん」と言えばいい
だが
伝わるだろうか
僕らは確かに体を手に入れた
目に見え、触れられ、感じられる体
これまでのいつよりも
僕はヨナをヨナだと感じるだろう
彼女も同じように
僕の存在感に不安を抱かなくてすむだろう
それでも
いや、だからこそ
僕らの言葉は遠くなってしまった
口からでる僕の言葉は
きっとヨナの瞳にまでも届かないだろう
存在は存在を否定する
彼女の目は僕の体を汚いと言うだろう
だったらあらゆる言葉が
むしろヨナを傷付けていくだろう
図書室へ向かう足を
止める
どんな顔をすればいいか分からない
僕はヨナの期待に応えられない
だけど
ヨナが欲しがっているものなら
きっと持っているはず
遠い
ただ
ヨナまで遠い




