願い箱
その日、私の中に慈愛が入ってきた
家族は大騒ぎしている、彼女が出産したのだ
新しく家族に迎え入れられた少女を祝して慈愛をそして信じる心、これらを私に入れていく
私自身には何も出来ないが少女の成長を見守っていこう
この日は私に純潔が入ってきた
少女が学校に通う様になったのだ
真っ直ぐな気持ちと優しさを持った子供になってほしい、そう願った彼女は私の中へ大切にしまう
彼女の願いを守りながら少しずつ大きくなっていく少女を見ているのは悪くない気分だ
これから先はどんな姿になるのか…楽しみだ
私の中にまた新たに願いがしまわれた
再会、彼女と少女は離れて暮らす事になるらしい
「これを持って行きなさい」
彼女は少女に私を託しその場を去る……
少女は幼いながら涙を堪え私と共に彼女の後ろ姿を見送った
それ以降、私に新しい願いを入れる事は無かった
父と少女の暮らしは裕福とは言えず、それでも強く純粋に生きて日々成長していく少女の強さに私は心を打たれていた
ある日の冬、恋人と二人で庭に出ている少女の姿を私は見つめていた
二人は何を話しているかは聞こえないが恋人が何かを手渡した時それを見つめて少女の時は止まっていた
恋人が改めて少女に何かを語りかける、その言葉を聞いた少女は顔を上げて小さくうなずくのだった
少女の目は薄っすらと濡れていた…空から降る天使の羽が二人の頬を濡らす
きっと、二人には忘れられない時間になるだろう
少女はこの日、険しい顔つきで電話を掛けた
相手はどうやら彼女のようだ
結婚することになったと彼女に伝え「うん・・・うん・・・」とうなずきながら涙を流している
どうやらあの日の願いが叶う時が近づいてきたらしい
運命の日、何年かぶりに彼女と少女が再会した
大きくなった少女の姿を見て彼女は口元を押さえて震えている
私の中に再会の願いを入れたことを話し親子二人で今までの事を話している
願いが叶った事を喜びながら彼女は私の中に新たな願いを入れた
健康・愛・永遠の誓い、これを私の中にしまい彼女は去って行く
彼女の願いを秘めながら、私はまた少女の成長を見守っていく
いずれまた少女の子供に託される日が来るのかもしれない、それもいいだろう
私には何も出来ないが、二人の願いが叶うことを祈る・・・それくらいならば出来るだろう・・・
少女は私の中から慈愛の首飾りを取り出し身に着ける
彼女の願いを身に着け物思いにふける少女の姿は以前の彼女と重なっていた