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BLOOD DONOR  作者: ソン
9/9

「婚約者候補」

 煌びやかな装飾を施された電飾が目立つ部屋に人々が集まって談笑していた。

女性は赤や青などのドレスに身を包んで首元や手元にはキラキラと光る宝石を身につけていた。


男性は黒いジャケットスタイルだ。

多くの人が片手にはワイングラスを持っている。

ワイングラスの中に赤い血が入っていた。

ワイングラスを傾けて血を口にしている。


談笑する者たちは皆、ヴァンパイアだ。

ヴァンパイアの貴族達が夜会に集まっていた。


ドレスコートをするヴァンパイア達の中にはクラウスとローズもいた。


『見なよ、クラウスがいるよ。』

『あーほんとだ。』


クラウスに声かけてきたヴァンパイアがいた。

少し小柄でメガネをかけた青年とクラウスより少し低く細身の体型をした

クラウスと同じオリビアの婚約者候補だった。


『君たちもきてたんだね。』

クラウスは2人を見るなりあまり歓迎しない素振りを見せた。


『当たり前だよ。僕たちもオリビア様の婚約者候補だからね。

もっとも僕達は君みたいにズルはしていないけどね。』


『何のことだい。』


『有名になってるよ。君の親がグレイン家の旦那様に頼み込んだってね。

元々、君の家はグレイン家の遠縁だからね。

つまり縁故だってね。』


『お兄様もお父様もそんなことはしないわ。

勝手なこと言わないでくれるかしら。』


『これは、これは、ローズ嬢じゃないか。

セグウェイ家から破談にされたばかりだったね。』


『…』


『彼も今日は来てるみたいだよ。もちろん、オリビア様の婚約者候補としてね。』


『ローズのことは関係ないはずだ。』


『そうだったね。でも、このままズルをした君がオリビア様の婚約者に選ばれるようなことがあれば、きっと誰も納得しないだろうね。』


メガネのヴァンパイア達はそう言い残すと2人から離れていった。


『お兄様…』


『気にすることはない。』


その時、会場中がざわざわと騒がしくなった。

入り口の方に目をやると青色のマーメイドドレスに身を包んだオリビアが入ってきた。


会場中がオリビアのことについて口々に言い合った。


『グレイン嬢だ。』


『珍しい、あのお嬢さんはなかなか夜会には滅多にお見えにならないのに。』


『きっと、今日は婚約者候補者のために来たのよ。』


『でも、聞いた話では、どうやら人間の同じ年頃の男の子に特別な感情を抱いてると聞いたわよ。』


『それも、その男の子、ブラッドドナーかもしれないんですって。』


『え、うそ…そうなの?』



その会話はクラウス達にも聞こえていたし、もちろんオリビアにも聞こえていた。

オリビアはその会話を聞いて、少し顔を曇らせたことをクラウスは見逃さなかった。


そして、しばらくオリビアは次から次へと貴族達に囲まれては愛想よく相手をした。


そのうちにクラウス達の番が来て、オリビアの前にクラウスとローズがいった。


『オリビア』


『クラウスにローズ。ごきげんよう。2人ともドレスコートがとても似合ってるわ。』


『ありがとう、オリビア。

君も青いドレスが君の肌によく映えて、よく似合って、綺麗だね。』


ローズはクラウスのその言葉に不満げな顔を浮かべた。


『ローズ、貴方もとても素敵よ。』


『貴方には敵いませんわ、オリビア嬢。』

ローズはピシャリといった。


『ローズ、、、あの、、婚約破棄のことは本当にごめんなさい…』

オリビアはとても言いにくそうに言った。


『別に貴方様には関係ないことですわ。』


『ローズ、王家の血筋の方だぞ。』

クラウスは妹の態度を叱責した。


『ふん。』


ローズはくるりと振り返りドレスの裾をヒラリとさせて2人から離れていった。


『すまない。ローズの態度を許してくれないか。』


『ええ。私の方こそごめんなさい。』


『君が謝ることはない。』


その瞬間、音楽が流れ始めた。


『踊ってくれるかい?』


『ええ。』


そして、クラウスはオリビアの手を取るとステップを踏んで踊った。

クラウスのエスコートも完璧だがオリビアの踊りはとても美しかった。

会場にいた人達はオリビアとクラウスに釘付けだ。


『あのエスコートしてるのって、クラウス君よね。妹のローズちゃんは破談になったとか。』


『それも、破談になったセグウェイはオリビア嬢の婚約者候補になったとか。』


『クラウスはオリビア嬢の遠縁だから、婚約者候補になれたんだよ。』


『1番、今、内定に近いとか。』


クラウスの話題を口々に言い合った。


そんなオリビアとクラウスが踊ってる姿をローズは離れたところから唇を噛んで見ていた。


そんなところ、ローズは前にいる青年に目がいった。

セグウェイの御子息だ。


セグウェイの御子息はオリビアとクラウスの踊りを見ながら、隣にいる同じ年頃の青年に嬉々として喋っていた。


『クラウスなんて、屁でもないよ。

きっと僕が内定もらうね。』


『でも、クラウスの妹のローズは君の元婚約者だろ?』


『あーそうだよ。ローズよりグレイン嬢の方が格も上がるだろ。』


そう言うとケラケラと2人で笑っていた。



ローズには会話が全て聞こえていた。

そんなセグウェイの御子息の言葉に拳を握りしめて、涙を浮かべていた。


そうこうしてるうちに音楽が終わった。


ダンスが終わると最後はオリビアの婚約者候補の内定者発表だった。


『只今より、オリビア・グレイン嬢の婚約者内定者を発表いたします。』


会場中が拍手で沸いた。


『内定者は…

クラウス・シルバニア』


会場中がざわざわとざわめいた。

ローズは不満そうに扇子を仰いだ。


クラウスはオリビアの婚約者候補から晴れて婚約者になったのだった。

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