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BLOOD DONOR  作者: ソン
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「嫉妬」

ピンク色の天蓋カーテンが印象的なベットに少女は腰掛けていた。

美しい白髪は背中まで軽くカールして流れていた。

手には写真立てに入った写真があった。


写真の中で少女と思われる幼き時代の少女と同じ白髪した少年が笑顔で肩を並べて写っている。


扉をノックする音が聞こえて、少女は返事した。

『はい。どうぞ。』


扉が開くとメイドが現れた。

メイドは少女の背中に伝えた。

『ローズ様、旦那様がお呼びでございます。』


少女はメイドに背中を向けたまま返事をした。

『そう…。わかったわ…。』


少女の細長い指が写真の中の少年の顔をそっと撫でた。

少女は背中を向けたまま、部屋を後にしようとするメイドに尋ねた。

『お兄さん様は?』

その声は一定で、だがどこまでも冷たい。


メイドは顔色変えた。

『クラウス様でしたら、グレイン家に行かれたと…』

メイドは怯えながらこたえた。


その瞬間、少女の手が力み、持っていた写真立てのガラス面にヒビが入った。


『そう…』


そんな少女の背中にメイドは怯えていた。


『よく来てくれたね。クラウスくん。』

『お招き頂きありがとうございます。旦那様。』

玄関先でオリビアの父親はクラウスを笑顔で迎え入れた。


オリビアはそんな父親とは正反対に顔色一歳変えず、終始真顔だ。


結局、そのあと、クラウスはオリビアの父に連れられていき、オリビアは1人温室で過ごしていた。


オリビアは温室内にある小さな石像噴水に手をかざしては、ベンのことを考えていた。


今日の講義が終わった時のベンの様子と木の下で過ごしている時にベンが言いかけたこと。

また、ベンに婚約者クラウスの存在が知れてしまったこと。

オリビアとしては、クラウスの存在は隠しておきたかった。

ベンが婚約者と聞いた時の反応も思い出していた。

オリビアには、あの反応がベンが婚約者と聞いて、どう感じているのかは分からなかった。

ただ驚いただけなのか、ショックを受けていたのか。

オリビアはベンの自分への気持ちがずっと分からないままだった。

オリビアが言動で気持ちを示すとベンはいつもそれをかわしてしまう。

本当はどう思ってるのか、ずっと知れないままでいた。


『いいところだね。』

オリビアはハッとして声のする、入り口の方に目をやった。


クラウスが入り口で温室を見渡しながら入ってきた。


『そうね。ありがとう。』


クラウスはオリビアの側まで来て尋ねた。


『何か考えことをしてたように見えたけど?』


『そう?』


『もしかして、アイツのことかい?』


『アイツって?』


『クラークだよ。』

クラウスは真剣な顔でオリビアの顔を見て、一定の声でこたえた。


それに対してオリビアは焦りもせずにこたえた。

『ええ、そうね。』


そのこたえに少しムスッとした顔を浮かべるクラウス。

『クラークのことが好きなのかい?』

クラウスはオリビアを一点に見つめて尋ねた。


それに対して、オリビアはピシャリと返した。

『貴方には関係ないことね。』

オリビアはクラウスに背中を向けて、その場を離れた。


だが、その背中に向けてクラウスも負けじと発した。

『いいや。僕は君の婚約者だ。』


その言葉にオリビアは振り返って意地悪くこたえた。

『まだ候補でしょ?』


それに対して、クラウスは真剣な顔つきで返した。

『今はまだね。いずれは確実になるものだ。』


『何が言いたいの?』

オリビアは顔をかしげた。


『僕たち(ヴァンパイア)と人間では恋愛はできない。』

クラウスは真っ直ぐとオリビアの目を見て言った。


『…』

オリビアはその言葉に返す言葉が無く、視線を下に向けた。


しばらく2人の間に沈黙が流れた。

オリビアはただ視線を下の方にやり、そんなオリビアの姿をクラークはじっと見つめた。


だが、その沈黙を破る者が現れた。



『失礼します。ご夕食の準備ができました。』

使用人が夕食の用意が出来たことを伝えに来たのだ。



2人はオリビアの父が待つダイニングへと向かった。


ダイニングに入る、オリビアの父が待っていた。


2人が席につくなり、食事が始まった。

会話は弾み、話題はクラウスの妹、ローズの話題へと移った。


『クラウスくん、そういえば、妹さんのローズちゃんは元気かね?』

オリビアの父親はワイングラスに入った真っ赤な血液を口にした。


『はい。おかげさまで。元気でいます。』


『そういえば、婚約が決まったとか聞いたが。』


『いえ、、、実は、、。』

その言葉に歯切れが悪くなるクラウス。


『ん?どうかしたかね?』

オリビアの父とオリビアも不思議そうにクラウスの方を見た。


『実は破談になりまして…。相手の家から断られまして…。』


『なに?どこの家だね?』


『それは…』


『どうかしたかね…』


『…。

セドウェイです…。』


『…。

あー。セドウェイか…。』

オリビアの父親はその名前を聞いて、察してそこからそれ以上はローズのことはなにも言わなくなった。


『セドウェイって…。』

オリビアもその名前を聞いた瞬間、クラウスの方を見て、何か言いたげな顔をしたが

クラウスがオリビアの方を見なかったので

オリビアもその場はそれ以上言うことを諦めた。



その後もなんとなく、ローズの話題のおかげか何となく気まずい雰囲気で食事会は終わった。



食事会が終わって、2人きりになると

オリビアはクラウスにさっきの話の続きをしようとした。


『セドウェイって…。』


『…』


『私の婚約者候補に最近なった、あのセドウェイで間違いないわよね…』


『…』


『ねぇ。』


『あー。そうだよ…。

そのセドウェイだよ…。』


『どうして…。最初はローズの婚約者だったんでしょ?』


『セドウェイ側が君の候補になれるならって、後からローズの婚約者を取り下げたんだよ…』


『そんな…。まるで、それじゃ…。』


『ローズが可哀想ってかい…

大丈夫だよ。君は全く悪くないからさ…。』


『最近のローズはどうなの…?』


『…』


『ねえ』


『婚約が決まった時は良かった。親の決めた縁談といえど、彼女自身も納得がいっていたし、僕への気持ちも昇華しつつあった。でも…。』


『でも…?』


『婚約が破談になってからは荒れてるよ…僕への気持ちもまた以前みたいに…。はぁ…。まいってるよ…。』


『御両親は?』


『新しい縁談を探してる。でも、難しいんだよ…。』


『そう…。』


そのあと、クラウスは客室に、オリビアは自室に戻った。


オリビアは自室で幼き日の写真を見ていた。


白髪の色白の女の子が写る写真を見ていた。

『ローズ…。』


その夜は外では雨が激しく降っていた。

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