「訪問者」
昼下がりの午後、1人の女学生の目に校門の前に白髪の青年の姿が映った。
彼女は課題のレポートを提出するために学校のきたのだったが、青年の美しい容姿に見惚れて、校門の前でつい立ち止まってしまった。
女学生がぼーっとしていると少しすると青年がこちらを向いた。
『君はこの学園の学生かい?』
青年の美しい声音に女学生の心臓は飛び跳ねた。
同時に返事する声も裏返った。
『はいっ。』
青年は口角を少し上げて微笑んだ。
『初めてで、中のことをあまり知らないんだ。案内をしてくれる者がいると助かるんだけどね。』
『私でよければ。』
女学生と青年は学内を一緒に歩いた。
話を聞いているうちに青年はこの学園に通う婚約者に会いにきたことがわかった。
女学生は青年に婚約者がいることを知り、少し残念な気持ちになった。
青年が立ち止まった。
青年の目線の先にはオリビアとベンがいた。
「とても綺麗な方でしょ。」
女学生はオリビアのことを青年に話した。
「3年のオリビア・グレイン様。
才色兼備な方でお優しくて、この学園のものは皆、オリビア様とお呼びしているんですよ。」
「彼は?」
「え」
「彼女の隣にいる彼は誰だい?」
青年はベンの方をじっと見た。
「あー、あの方は、同じ3年でオリビア様の幼なじみとか。オリビア様がいつもお連れになっていて」
「いつも?」
「えー。まぁー。でも、お付き合いはしてないとか。」
「へー。」
青年はオリビアとベンの様子を見たまま、何も言わなくなった。
しばらくの間、沈黙が流れたが先に口を開いたのは青年だった。
「ありがとう。」
青年はくるりと向き直して女子学生に背をむけた。
「どちらえ?婚約者様にお会いには、ならないんですか。」
「うん。今日は辞めとくよ。」
「ちっ、見ろよ。
またクラークが一緒にいやがるよ。
全く、オリビア様もあんなの何がいいんだか。」
「クラーク…。」
「どうかした」
オリビアの目に白髪の後ろ姿が映った。
「いいえ、なにもないわ。行きましょ。』
ベンは遠くの方で黒い雲が見た。