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16 カラオケ店にて

えーと・・・バトル勃発?

 今日は約束の土曜日。私は円花と翔琉と共に、みんなと待ち合わせた駅前に翔琉の車で行った。


 あの月曜日。私の言葉にみんなは引き気味の顔をしていたけど、ちゃんと今日の約束はしてくれた。

 迎えに来た円花と翔琉は妙に愛想がよかった。普通にみんなと挨拶を交わして、土曜日にみんなとカラオケに行けるというと2人ともすごく喜んでいた。


 翔琉が佳代も送ると言ったので2人で後部座席に乗り込み彼らと別れた。

 寺田君と宮本君は深見君が送っていった。


 佳代を先に送り降ろした後、私は2人に先程までのことを簡単に話した。

 まず、土曜日に私が王子呼びしたせいで、3人が王子と呼ばれているとか。私のファンクラブが出来るとか出来ないとか。を話した。

2人は笑って「なんだよ。それ!」と言っていた。

 それから、なんで今日はみんなと会っていたのか聞かれたので、伯父との関係を聞かれたと答えた。それから翔琉と円花の関係もと。それで、翔琉が作家していることを話したことと、佳代が翔琉の本を知っていたこと、宮本君が竜爪黒羽の大ファンだとも伝えておく。


 そんな話をしていたら家に着いた。車を止めて2人も家の中までついてきた。

 台所でお茶を入れて2人の前においた。


「水月の話は分かったわ。ところで深見と何か進展でもあったの。別れる時嫌に切ない目をしてたじゃない、彼」


 そんな目をしていたんだ。気がつかなかった。


「水月は気がついてなかったの」

「うん。車に乗ったら彼の方は見なかったし」

「あらー、冷たいのね。で、何かされたの」


 ウッ、また、こいつは答え難いことをズバッと。

 答えるのを躊躇っていると重ねて言われてしまった。


「花火大会の時のような失態したんじゃないでしょうね」


 私は溜め息を吐くと観念して話すことにした。心配かけているのは確かだしね。


「今回は大丈夫だと思うわよ。えーと、まず先に深見君の部屋に私と彼と2人で行って、彼のお姉さんが作り置きしていった料理を温めたの。用意ができても佳代たちが来なくて、ちょっと後ろから抱きしめられてキスをされただけよ。そのあとは上手く躱したつもりだけど」

「言葉としては何か言われたのか」


 ウッ。だから、翔琉が訊くなよ。話す分にはいいけど、翔琉からじゃ気恥ずかしいだろ。


「えーと、まず、「まだ恋愛する気にならないか」に「ごめん。まだ無理」と返して「あの時少しは意識してくれたんじゃないのか」に「あの時って」答えたら、キスされて「この前キスをした時」と言うから、ニヤリ笑いで「悪いけどあれは気の迷い」と答えたら、「それなら気の迷いと思わせないようにしないとな」とまた近づいて来たから、「トイレを借りる」と離れたの」


 円花と翔琉が顔を見合わせた。


「攻めたな」

「ええ、攻めたね。頑張ったじゃん深見。でも、水月は嫌なんだ」

「嫌ってわけじゃないけど・・・」


 つい本音が漏れる。私だって好意を向けられるのはうれしい。でも、だからこそ拒絶された時が怖い。


「水月は話さなかったんだな」


 翔琉の言葉に素直に頷く。


「それはみんながいたからか」


 翔琉の問いに肩がビクッと震える。


「ううん。多分2人だけでも言えなかったと思う」


 私は俯いていたから気がつかなかった。2人が悲しいような微笑ましいような諦めたような複雑な表情をしていたことに。


「なら、水月は今まで通りつかず離れずの距離を希望するのね」

「そう・・・なるのかな」

「だって恋愛したくないんでしょ」

「うん。まあ・・・」

「分かったわ。丁度いいから、カラオケの時に牽制しといてね、翔琉」


 円花は明るい声で言った。それに翔琉が情けない声を出した。


「俺か~」

「他に誰がいるのよ。翔琉が嫌なら私がするけど」

「はぁ~。分かったよ」

「ごめんね。2人とも」


 私の言葉に2人は笑って「気にするな」と言って帰って行ったのだった。


 そのあとお風呂から出て携帯を充電しようとして、宮本君にメールすると言ったのを思い出した。なので急いでメールを打った。送ってホッとしたらすぐに返信がきた。それにも返事を書いて送る。また、メールがきて、もう一度送ったら、私が言いたいことが分かったようで「ありがとうございます。もう少し頑張ってみます」と返信がきた。

 それを見てから私は寝たのだった。


 そんなことを思いだしながら、駐車場から駅前の待ち合わせ場所に行った。待ち合わせ場所には寺田君以外もう来ていた。

 まずはみんなで挨拶を交わした。

 宮本君が何かソワソワしているのがおかしかった。


 約束の5分前に寺田君が中島さんと現れた。挨拶もそこそこにカラオケ店に移動した。

 カラオケ店に着くと寺田君が予約していてくれたので、直ぐに部屋に通された。かなり広い部屋で8人入ってもまだかなり余裕があった。

 ドリンクと軽くつまめそうなものを頼み(昼間なのでお酒を頼む人はいなかった)改めて自己紹介をした。翔琉だけみんなと面識がなかったから。


 まずは私が挨拶、というより司会進行かな? をした。


「今日はお集まりいただきありがとうございます。とりあえず知らない人もいるので、自己紹介から始めたいと思います。なので、私から。大谷水月です。今日はこの2人のお目付け役ですので、失礼なことをされたら遠慮なく言ってください」


 そう言ったら翔琉が抗議の声をあげた。


「お前な、最初からそれはないだろう」

「仕方ないでしょ。どうせすぐボロが出るんだから。おばさん達にも頼まれているし」

「それは円花のことだろう」

「翔琉、それは私に失礼だよ」


 円花も翔琉に言い返す。


「いや、だから最初からやる気を削ぐようなことはしないで欲しいんだけどな」

「翔琉はやる気を削いだ方がちょうどいいのよ」


 いつものように軽いじゃれ合いをしたら中島さんが感極まったように声をあげた。


「すごーい。本当に田所さんと片羽さんと佐野さんだ~」

「ああ、そういえばあなた、私達の後輩ですって」


 円花が中島さんに話しをふった。


「はい、そうなんです。あっ!私、中島優葵なかじまゆうきと言います。城北小の1年下になります」

片羽円花かたはねまどかよ。よろしくね。なんか昔のことを知られてるなんて、気恥ずかしいわ」

「そんな。憧れの方々とご一緒出来てうれしいです」

「私もよ。ところで中島さんは何を歌うの?」

「私ですか?私は・・・」

「優葵、待った。まだ自己紹介の途中だから」


 円花と中島さんの会話が続きそうなのを見て、寺田君が待ったをかけた。


「あっ、ごめんなさい」

「そうだったわね。じゃあ、次は寺田君がどうぞ」


 中島さんは顔を赤くして身を縮こまらせた。円花はシレッと寺田君に続きを促した。

 一瞬寺田君は口を開けて何か言いかけたけど、口を閉じて軽く息を吐き出して自己紹介をした。


寺田恒星てらだこうせいだ。よろしくな」


 そう言って翔琉のことを睨むようにみた。って、まだなんにもしてないよね、翔琉は?


「私は宮本宜和みやもとよしかずです。よろしくお願いします」


 宮本君は軽く頭を下げると翔琉のことを憧れ?尊敬かしら?の、眼差しで見つめた。


「俺は深見遼ふかみりょう。よろしく」


 深見君も簡単に挨拶をした。


「えーと、安西佳代あんざいかよです。改めてよろしくお願いします」


 佳代もペコリとおじぎをした。


「俺は田所翔琉たどころかける。よろしくな」


 翔琉は胡散臭いくらいににこやかに挨拶をした。なんか碌でもないことを考えてそうで嫌だったけど、翔琉のことだから変なことにはならないだろうと思うことにした。


 それから、みんなして曲を入れた。


 珍しく翔琉が一番に歌った。全部英語の歌詞だけど、日本のアーティストの曲。

 そう言えば円花がこの曲を気に入っていたっけ。女性たちに流し目をくれて歌う姿はとても様になっていて、円花だけじゃなくて佳代と中島さんもうっとりと翔琉を見ていた。

 その様子を見ながら、そういや翔琉も無駄にハンサムだっけ。と思い出した。こいつは容姿の事より性格に難がありすぎて、つい忘れてしまうんだよね。


 歌い終わった翔琉はドヤ顔で男達の方を見ていた。このカラオケ機は採点してくれるものだった。よくテレビ番組でカラオケ対決に使われる機種とおなじらしい。89点と高得点を出した。


 ・・・って、翔琉。何を挑発しているんだ。


 見事挑発に乗ったみんなは自分の18番を歌いまくることになったのだった。


 午前の10時に入って午後の3時まで5時間を予約してあった。お昼過ぎに軽食を頼んでそれをつまみながら歌合戦は白熱していた。特に翔琉が歌った後は女性たちがうっとりとするので、寺田君と宮本君も張り合って歌っていた。


 前の時も思ったけど、なんでみんな歌が上手いかな。一人ぐらい上手くない人が混ざっていてもいいのに・・・。


 私は円花と佳代に引っ張りだされて歌ったけど、君達一人でも十分歌えるよね。


 2時を過ぎたところで私がお手洗いに立ったら、円花も佳代と中島さんを連れて追いかけてきた。4人で話しながらお化粧を直したりしていたら、少し時間がかかってしまった。


 部屋に戻ると微妙に雰囲気が悪くなっていた。私はそれに気がつかないふりで翔琉に円花と歌わないのかと聞いた。それに円花が歌いたいといい、翔琉が乗っかって、どうせならデュエット対決しないかということになった。


 って、おい。お前は誰の味方だ、翔琉。デュエットするなら必然的に私は深見君と組むことになるだろうが。


 まず、翔琉と円花が歌う曲を決め、寺田君と中島さんが決めた。佳代と宮本君も楽しそうに曲を選んでいる。

 深見君がデュエット曲のところを出して曲名を見せてきた。


「大谷はどれを知っているんだ」


 フムッと、端末を見ながら考える。無意識に舌をぺろりと出して上唇をなぞるように触る。


「ちょっといい?」


 そう言って端末を受け取りある曲を探し出す。それを見せたら深見君が驚いた顔をした。


「これってどうかな」

「大谷はこれを歌えるのか」

「歌えなきゃ選択しないよ」


 私の答えに深見君が笑っていった。


「じゃあ、これで」


 それぞれが曲を決めたのでじゃんけんをして順番を決めた。

 まずは佳代と宮本君。定番のデュエット曲に恥ずかしいのか少し頬を染めて歌う佳代が可愛かった。73点だった。

 つぎは寺田君と中島さん。中島さんは元気な曲ばかり歌っていたから、しっとりとした感じのこの曲にまた、別の姿を見た気がした。78点をだした。

 翔琉と円花は男女混合グループの曲を選択した。これは9人グループでボーカルがコロコロ入れ替わりそれも掛け合うように次々被せてくるから歌いにくい曲だ。それをやすやすと歌っている。・・・というか、歌詞をみてないよね。どんだけ歌い込んでんのよ。点数は95点。全国でも1位を獲得した。

 最後は私と深見君。選択したのはアニメの曲。主題歌を主役声優2人が歌ったことでも話題になった。 ちなみにその作品はロボットアニメだったりする。甥がいる深見君なら知っているかと思ったけど、やはり知っていた。

 この曲は珍しく男性の方が主旋律を歌うもの。深見君の声に絡めるように歌っていく。拓輔たすくにつき合わされて歌った事もあり、かなりいい感じに歌えたと思う。点数は92点。おおー、今までで最高点だ。


「やった。今までの最高点!」


 私の喜びようにみんなが驚いていた。


「水月、誰と歌ったの。この曲」


 言外に聞いてないんだけどという、副音声が聞こえた。あー、円花知らなかったっけ。


「大学の時に拓輔につき合わされたの」

「あー、拓輔かー。なら仕方ないか」


 なにが仕方ないのかな。翔琉よ。


「だから、誰。拓輔って」


 円花が少しイライラした声で言ってきた。翔琉と顔を見合わせる。話したことなかったっけ?


毅司つよしさんの息子よ」

「中平伯父の長男の息子。御年9歳」


 翔琉もフォローしてくれた。


「ああ。いとこの子供か~。大学の時下宿してたんだっけ」

「下宿はしてないけど、近かったからね。のんちゃんが生まれて大変そうだったから、たまに子守りしに行ったかな」


 そう答えたら円花が笑った。


 時間になりカラオケ店を後にした。延長はしなかった。


 駅前で皆と別れて家へと戻ったのだった。



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