やわらかな むね
柑橘の香りは小刻みに震え
翠はひたすら足音を刻んでく
水風船はボンボンと弾んで
軽やかに歌い出す君
大きな翼を広げる音
太陽のスポットライト
空の青い飛沫を掴んで
高らかに歌い上げる君
黄色く色付いた言の葉
詩集を抱えて眠る恋人
そっと口づけする瞳
愛しさを歌に差し込んだ君
冷たくて張り詰めた空気
明けない冬が降り積もる
それでも季節は動いてる
泣きながら歌い続ける君
たった一人で この広い大地の上
たった一人で 険しい風を背負って
胸を抉って 傷みに溺れて
たった一人で 探し続ける
僕らは皆 旅人
旅する道はそれぞれで
君とすれ違うことさえ出来なくて
見える景色が滲んでも
行きつく果てもたった一人
たった一人
旅人は いつだって
優しい言葉で歌い記す
強くて 不確かで 冷たくて温かい
自分勝手な 優しい歌を
やわらかな むねで