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【第壱怪】その出逢いは吉か、凶か。

初投稿。

色々と拙い文ですが読んでいただけると幸いです。


アドバイス等ありましたらコメントいただけると嬉しいです。

幽霊に足がないとか馬鹿なことを言い出したのはどこのどいつだ。

透けてるわけでもなけりゃ浮いてるわけでもない。ただただ普通の人間と変わらずそこに佇むだけだ。





だから幽霊が見えようと、日常生活には何一つとして支障はでない。










ありがとうございましたーという店員の声を背に歩き出す。

さっきのレジの子可愛かったな…深夜のコンビニも捨てたもんじゃないなと考えながら、その子から受け取ったレシートを丁寧に折り畳んで財布に入れる。



おまわりさんコイツです!と言われかねない行動をとってる俺氏。

神崎玲(かんざきあきら)、二十歳。

職業は、一年前に大学生からガードマン(自宅限定)へ転職した。いや、大学生をやめてはいないから兼業といったところだろうか。

どちらにせよ、大学には長らく行っていないため

『名前なんて読むの?れい??』『いえ、あきらです……』

なんてやりとりともおさらばしてる。

大学に行ってキャンパスライフをエンジョイしてるはずの俺に…という両親からの暖かい仕送りをジャンプとコンビニ弁当に使う日々。ごめん母さんと父さん。







そんな俺でも、一つだけ特集な能力がある。決して厨二病ではない。




(…あ、アレ)







少し先の電柱の側に一人佇む女性。散歩中らしき犬に吠えられているが、なかなか綺麗な人だと思う。



いや、正確には人「だった」か。




その証拠に飼い主は首をかしげて犬を引きずっていった。





あぁ、やっぱり。



俺には幽霊が見える。所謂『霊感』というものが強いらしい。

だが、別にこんな能力があっても何の役にも立たない。

昔は『うおおお俺すっげえ!!これアニメの主人公みたいじゃね!?女の子と一緒に異世界のヒーローになれちゃう系!!?』などとはしゃいだが、所詮ただのモブに女の子など寄ってこなかった。





「アンタも大変だな」


電柱の側の女性に一声かけて通り抜ける。

それでも女性はこちらを見ずにただ来るはずのない誰かを待ち続けているようだった。




それにしても今夜は冷える。


寒さで思考がおかしくなったのだろう。

せっかく星も綺麗だし自販機でコーヒーでも買って近所の公園で飲もうなんて思ってしまった。



後にこれを死ぬほど後悔するなんて考えもせずに。








「うぅ…寒い…」


綺麗な星空はどこへ行ったのか。

俺が公園に着いたらすぐ曇りやがって。

あぁ俺の馬鹿。

外で缶コーヒーなんて飲んだところで暖まるわけがないだろう。

家で布団に潜ったほうが暖まるに決まってるじゃないか。

よし帰ろう、そうしよう。



そうしてブランコから降りて振り替えると、一人の女性がいた。

長い髪にコート、マスクをしているがなかなかに綺麗な女性だ。

まあどうせ死んでるんだろうけど。





「あの、何…」

「私……キレイ?」

「………はぁ?」


女はいきなりそんなことを言い出した。

いや確かに綺麗だけど俺の好みはもう少し幼い子で……って違う。


何だその口裂け女みたいな質問は。

多分アレだ。死にたてほやほやのヤツによくある

『うっひょー私幽霊!!よっしゃ貞子やっちゃおう驚かせちゃおう!!』

的なノリで後に黒歴史になるヤツだ。

今までもそういうヤツに会ったことはある。

最初は驚いたりもしたが今はもうどうってこともない。



「あのさぁ…そういうの後で恥ずかしくなるからやめたほうがいいぞ?」

「………私、キレイ?」


俺が忠告してやっても聞かないとは…。

…仕方ない。驚かない俺に一生のトラウマを抱け、厨二病幽霊よ。


「あーはいはい、綺麗だと思うよ?でもまあ俺の好みはロ…」

「……じゃあ、」


…てめぇ。

人が好み教えてやろうとしてんのに遮りやがって。

どうせアレだろ?

『これでもキレイ?』つってマスク外してギャーッて驚かせるつもりなんだろ?

てかお前マスクの下絶対何もねえだろ。もうやめとけ恥ずかしくなるから。


「これでも……」


そう言ってマスクに手をかける女。

ほら、どうせ何もない……









「これでも…キレイィ……?」

「………は、」






そこにあったのは、口。

耳まで裂けてて、まるで本物の……




「っ、うわあああああっ!!!」



何だコイツ!!?

特殊メイクか!?それとも死んだ時にできた傷か!?

いや幽霊が特殊メイクはないだろうし、こんな傷できるとかどんな死に方だよ!!



「イヒヒッ………キレイ、私キレイ…」

「ひっ……、来んなバケモノッ!!!」


急いで逃げる。

悪いが、いくらガードマンといえ小中高と12年間リレーの選手か補欠だった俺。

足には自信が…



「イヒヒッ、ウガッ…アアァァァ!!!」


うわあああああ何だよコイツ超足速え!!人間かよ!?

あ、人間じゃねえじゃん!!!


そんな馬鹿なことを考えてるうちに距離はどんどん縮まっていく。

あ、ヤバい。




「がっ!!…は、ぁ……」

「ギギッ!捕マェダァァ……!!」



痛い痛い痛い!!!

思いっきり背中蹴られて倒れこんだ上に馬のりになられるなんて。

あぁどうしようヤバいどころじゃねえ!

ええっとなんだっけポマードだっけ!?


「ポマッ……は、ポマードッ!!」

「ヒヒッ、キレイ?私ギレイ…」


全然効かねえじゃん!!

ポマードの馬鹿!!



女は何処から出してきたのか片手にノコギリを持っていて。

その片手をゆっくりと上へあげる。


あぁ、俺死んだな。

母さん、父さん。本当にごめん。

俺は目を閉じて死を受け入れる準備をした。


痛くないといいな……。












「ウ、ギャアアアアアアッ!!!!」






悲鳴が響きわたる。







俺ではなくて、女の。




「……ッ!?」


突然のことに目を見開くと、そこには女の姿はなかった。


代わりに立っていたのは、金髪の青年。





「おい、大丈夫か」

「え、あ……は、い?」





その時俺は、あまりの驚きに差し出されたその手をとることはなかった。

ただ、手を差し出した青年の後ろに綺麗な星空が広がっていたことを鮮明に覚えている。









この出逢いが吉か凶か。

そもそも今後も青年と付き合うことになるなんてその時は考えもしなかった。

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