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手にした災難

物語が動きます!

久しぶりだなー……更新。

「ん……」


目が覚めると、そこは自室のベッドの上だった。

寝起きのせいか、頭がうまく働かない。


「昨日、あれからどうしたっけ」


ズキズキと痛む頭を押さえて起き上がり

自分の体を確認して、少しだけ驚いた。

昨日と同じ服。

こびり付いた血。

どうやら、帰って来てすぐ眠ってしまったらしい。

自分の体からする、血と汗が混ざった匂いが

とてつもなく不快だ。


「とりあえず、風呂入るか……」


二度寝しようとする自分にそう言い聞かせ

だらだらとベッドから下りる。

目指すは、風呂場。




シャワーを浴び、服を着替えて

やっとこびり付いた血を落とした。

気分も少し楽になったから

妹と俺の二人分、朝食を作る。

昨日は和食だったから、今日は洋食。

トーストとハムエッグ、あとは

……サラダでいいか。

卵といくつかの野菜、食パンを用意して

作り始めたとき


ガチャン、とリビングのドアが開いた。

同時に響く、車輪の回る甲高い音。


「おはよ、お兄ちゃん」

「おう。おはよう、桜花(おうか)


器用に車椅子を動かし、実の妹である桜花がキッチンに入ってくる。


「お兄ちゃん、今日朝ごはん作るの

私が当番じゃなかったっけ?」

「んー?ああ、今朝はたまたま早く起きたからな」

「……ずるい。私も起こしてくれれば良かったのに」

「起こしてどうすんだよ」


桜花は俺の手元を覗き込み、複雑そうな表情を見せた。

起こさなかった、というより

起こす余裕がなかったという方が正しいんだけど。


まぁ、昔からそうだ。

桜花が俺に頼るのを嫌うのは。

俺の負担になりたくない、とかで

自分で出来ることも、出来ないこともしようとする。

兄としては、もう少し頼って欲しいものだが

『歩けない』というコンプレックスからなのかもしれないから

あえて口には出さないことにしている。


「あ、桜花。

コーヒーと牛乳、どっちにする?」

「へ?え、あ

カフェオレで」

「ん」

「……じゃなくてお兄ちゃん、私がやるってばー!」


それに、押し切ろうと思えば押し切れるし。

口に出す必要はあんまり無いんだよな。

わたわたとカップを取り上げようとする桜花から身をかわし、コーヒーメーカーにセットする。

この辺は車椅子どうこうと言うより

単純に(リーチ)の差だ。


「むう……ありがと。ごめんね」

「別に?それよりほら、あっちで待ってろ」

「はーい」


素直に返事をしリビングに向かう桜花を見送って

丁度焼きあがったトーストを皿に盛る。

あと二、三分で、コーヒー淹れ終わるだろうから

先に朝食一式を、テーブルに運ぶことにした。


「お兄ちゃん、今日も帰り遅くなるの?」

「んー、いや

今日は早いと思うぞ」

「そっか、じゃあお夕飯作って待ってるね」


いつも通りの会話をしながら、後ろ手にエプロンを外す。

ふにゃりと緩んだ笑みを浮かべ

手の届く範囲で皿を並べ始めた桜花が転んでも助けられるよう、 手早く正確に。

……あ、言い忘れてたけど

俺は別にシスコンとかじゃないからな。

そんな妙な性癖は持ってない。


「あはは。

どっちかっていうと、私がブラコンなんじゃないかなぁ?」

「え?」

「何でもないよー」


桜花は悪戯っぽい表情で言って、誤魔化すようにテレビのリモコンを手にとった。

途端に響く、ニュースキャスターの神妙な声。

……心読まれた?

いやいや、俺の妹が読心術なんて使えるはずがない。

どこかで聞いたことのあるようなフレーズの言い訳をして

何気なく

本当に何気なく視線をテレビ画面に移す。


ーーその瞬間、俺は背筋が凍るのを感じた。


思わず、間抜けな声が漏れる。


「は、?」

「ん?どうしたの、お兄ちゃん」


桜花の声が、どこか遠く聞こえるけれど

今の俺には、それを気にしている余裕も無かった。


『未だ逮捕されていない殺人鬼の手に渡ってしまった、日本を救う唯一の術!』


そんな見出しで語られる、情報の群。

連続殺人犯が、テロリストの一人を殺しただとか。

そいつはテロの計画やテロリストグループの情報をUSBメモリーに入れ持ち歩いていただとか。

そのUSBメモリーは、連続殺人犯が

意図せず持っている可能性が高いだとか。


「テロリストは連続殺人犯を探して、USBメモリーを奪うつもりでしょうね」

「その前に逮捕しなくては、日本は終わりです」


コメンテーター達がそれぞれの意見を口にする中、変わらない現実が一つ。

それは、これから連続殺人犯(おれ)が追われるのは

警察とテロリスト、その両方であると。


「えええええええええええええ!?」

「え、何、お兄ちゃん!?」


俺はエプロンのポケットに突っ込んだままの

血に濡れたUSBメモリーを思い出して

驚愕と悲鳴の交じった声を上げた。


ああ、もう

恨むぞ神様。





どうでもいいけれど

連続殺人犯はめっちゃ家庭的な設定です。

料理、洗濯、掃除、何でもオーケーな

むしろ主夫?な高校生。

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