第71話「その手が掴む栄光(後編)」
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相馬が『そのこと』に気がついたのは、ちょうど土師と鶴木が視界に入るところで相手選手と装具を交えていたからだった。
今のところ鷹津封術学園が獲得点の上で優位に立っているとはいえ、赤の妖精が出現する時間を過ぎたここからが、『妖精の尻尾』の勝敗を分ける本当の戦いであることに変わりはない。
そんな矢先に、相馬は『それ』を目撃した。
「……何?」
一瞬、相馬の視界の端で何かが不自然に揺れ動いたような気がした。
その方向に視線を向ける。
そこには鶴木と葛城の姿があった。二人は互いに得意の間合いに入ろうとして大立ち回りを繰り広げている。その運動量で最後まで体力が保つのか不安を覚えたが、心中で心配していてもどうにかなるものでもない。
(いいや、今懸念すべきことはそうじゃない)
相馬は飛びかかってきた相手の装具を刀の形をした自身の装具で防ぐ。刃の腹を滑らすようにして相手の攻撃をあしらうと、膂力を強化した腕で装具を振り下ろした。それを間一髪のところで受け止めた相手の身体がわずかに沈んで硬直する。続けざまに相馬が装具を水平に振るうと、彼の装具は相手の胴に吸い込まれるようにヒットして、その身体を吹き飛ばした。
隙が生まれたところで、相馬はもう一度その『何か』を目撃した方向へと眼を向けた。
しかし、その方向には既に誰もおらず、何もなかった。
(……気のせい、だったのかな)
極力セーブしていたつもりだったが、競技が始まってから半分以上が経過して、だいぶ疲労も蓄積しているようだ。
(鶴木君のことを言えた義理じゃないな)
一つのことに専念できないということは、それだけ多方面に神経を使うということだ。
剣術部(剣道に装術を組み合わせた武術)に所属している相馬は、どちらかといえば現状のような一対一による戦いを得意としている。しかしそれはあくまでも短期的な決闘に対するものであって、また、剣術では相手を圧倒するためだけに意識を集中すれば良いため、今のような状況とはまるで異なる。
だからといって、それで本調子が出せないのだと言い訳するつもりはない――つもりはないのだが。
(さすがに疲れが溜まってきたのかもしれないな)
だから何てことのないことにも過剰に反応してしまったのだろう。
そう思うことで意識を切り替えようとした相馬が、飛び跳ねるようにして起き上がった相手選手へと視線を向けようとした――。
そのとき、相馬の視界に再び『何か』が見えた。
「……え?」
今度こそ、相馬は見た。
彼の向けた視界の先には鶴木と葛城がいる。競技場内を移動している彼らの動きに合わせて、『それ』は動いていたのだ。
いや、その表現は適切ではないだろう。
相馬の見た『それ』は領域ではなく物体に作用しているようなのだから。
(鶴木君は気づいているのか)
『それ』にもっとも近いところにいるのに、端から見る限りでは鶴木が『それ』に気づいているようには見えない。
(ひょっとしたら余計なお世話かもしれないけれど)
それでも相馬は伝えずにはいられなかった。
これが個人戦ならば他人に気を掛けている場面ではないが、『妖精の尻尾』は団体戦だ。
相馬は共に戦うチームメイトのことを思う気持ちと、胸に宿った不安の種を払拭しなければ自分自身の戦いに集中できないと思う気持ちを半々にして、オフにしていたマイクのスイッチを切り替えた。
『鶴木君、葛城の周囲に「何か」が集まっているぞ』
しかしながら『それ』を見たことのない相馬は、そんな曖昧な情報しか鶴木に伝えることができなかった。
いよいよ時刻は夕闇から夜へと変わる時間となった。
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「マズいわね……」
観戦席で競技の成り行きを見守っていた星条悠紀が左眼を見開き、葛城の周辺を観察するようにじっと見詰めてからそう呟いた。
「あの封術式は間違いない……でも、どうして葛城会長が?」
頤に指の背を当てて思案する。葛城の周辺を包んでいた『それ』は、いつしか相対する鶴木の周囲にまで広がっていた。
「烏丸家の術式……状況……あぁ、そういうこと」
やがて悠紀が納得した様子で頷くと、彼女と一緒に観戦していた朝倉が怪訝な顔を向けた。
「どうかしたのか?」
「いいえ、何でもないわ。ただ、星条家の知らないところで烏丸家が跡継ぎを探してコソコソと動いていた理由がようやくわかっただけだから。……いいえ、これは無関係ではないわね」
悠紀は前言を撤回すると左眼の瞼を静かに落とした。すると彼女の視界に映ったのは『夜』と『何か』の微かな境目だけとなった。
「開催校、選択競技の特性、決勝戦の開始時間と終了時間、そして相手選手。ヒントはたくさんあった……だけど」
結果的に、悠紀たちは烏丸封術学園の作戦を読み切れなかった。
それが今の状況を許してしまったのだから。
「……朝倉君、非常に残念なのだけれど」
そして悠紀は重々しくそう切り出すと、この決勝戦の行方を朝倉に伝えたのだった。
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「え、あれは……」
悠紀たちのいる観戦席とは離れたところで顔なじみの友人たちとともに『妖精の尻尾』を観戦していた綾は、鶴木を視線で追っていたためにいち早く『それ』に気がついた。
「どしたの、綾?」
驚きの入り交じった声を聞いた玲衣が横から声を掛ける。綾の視線は『それ』に釘付けになっており、ジッと見詰める視線は何かを思い出そうとしている様子だった。
「……綾さんが見ているのは『あれ』のことではないですか?」
午後の競技が始まってからはずっと玲衣たちと一緒にいた聖奈が綾の視線を追って『それ』を見つけた。
「え、え、どれのこと?」
「鶴木さんと葛城選手の周辺です」
「えー……あたしにはよく見えないんだけど」
玲衣がそう言うので、気になった奈緒と沢村、伊万里も同じ方へと眼を向ける。数秒間ジッと視線を固定していたが、やがて彼らも首を小さく捻った。
「確かに『何か』あるね」
「俺にはよく分からないな」
「沢村先輩に同じくです」
すると、綾が何かを思い出したように瞳を瞬かせた。その後でギュッと瞳を閉じ、もう一度食い入るように葛城と鶴木の周辺をじっくりと眺めてから、納得するように頷いた。
「思い出した……『あれ』は、『夜』」
「夜?」
玲衣が尋ね返すと、綾は首を縦に振って肯定した。
「うん、そう。以前に『あれ』と似たものを見たことがあるの。たぶん『あれ』の正体は――『暗黒』烏丸家の封術式だと思う」
「それでは、葛城選手の周囲に見えているのは事象改変によって創り出された『夜』なのですね?」
独学で身に付けた『星鳥の系譜』の知識と照らし合わせた聖奈が確認の問いかけをすると、
「うん、きっとそうだと思う」
奈緒の反応が玲衣たちと違っていたのは、彼女もまた綾と同じく烏丸家を知る『星鳥』の十三家であり、代々受け継がれてきた封術師としての血統が感覚的に事象の『夜』と事象改変の『夜』を見分けたのだろう。聖奈が一目見ただけで『夜』を見分けたことには正直驚いたが、それ以上に気に掛かることが綾にはあった。
「……でも、あの術式は」
綾の知る限りでは、烏丸家の操る『夜』の封術は調律の術式に該当するはずだった。しかもその術式を展開しようとしている人物は烏丸家とは何の関係もないはずの人物で――。
「どうして……それに、一体何の意味が……あぁっ」
自問しながら『夜』を創り出す術式が持つ性質を思い出した綾が突然声を上げた。皆の視線が一斉に綾へと集まるが、彼女はそれをまるで意に介することなく、祈るように両の指を組み合わせると、葛城と相対している鶴木を見詰めた。
「鶴木さん……お願い、早く離れて」
しかし綾のその願いはすでに遅く――。
『妖精の尻尾』決勝戦は終盤を迎えていた。
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太陽の光は競技場に隠れて場内まで届かない。
競技場に設置された光源も、『妖精の尻尾』という競技の特性を考えて通常よりも光量が抑えられている。それによりいっそう暗がりに満ちた競技場内を舞う妖精たちの光が夜空に鮮やかな光の尾を引いており、実に美しく、幻想的な光景を創り出していた。
その闇の中を鶴木は駆ける。篭手から射出した振子が場内を照らすライトを反射させて煌めき、最後の青の妖精を捕獲した。
これで残る妖精は赤の妖精の二羽だけだ。
鶴木は周囲に視線を向ける。高速で飛翔する妖精の姿が光の線となって見えるほどに周囲は暗くなっている。
残り時間は六十分を切ったところ。
誰もが赤の妖精を目視で見つけていたが、その速さと回避能力によって未だに二羽とも捕獲できずにいた。
(だけど、僕にならできる)
『星鳥の系譜』序列第七位である鶴木家は、その血統が有する才能と装具の性質によって警察機関に強いコネクションを持っている。
その理由の最たるものとして、ワイヤーと振子を用いた捕縛術がある。
鶴木家の人間の多くは篭手の形をした特殊な装具を用いて、封術で生み出した振子とワイヤーを自在に操ることができる。これを利用した捕縛術のおかげで日本国内の治安は先進国の中でも類を見ないほど高度に保たれていると言われている。
そして鶴木も、その身体に鶴木家の血を色濃く宿している。
鶴木家に生まれて十六年。装具を手にして三年半。己の創り出した振子はもはや自身の手足のように扱うことができるようになっていたし、『糸繰り』の名に恥じないだけの実力は十二分に備わっていると自負している。
鶴木は宙を舞う赤の妖精の一羽に視線を向ける。
黄のタグを持つ自分が赤の妖精を捕まえたとしても加算されるのはたったの二点にしかならない。
それでも相手チームに――特に自分の相手である葛城に妖精を捕まえられるわけにはいかない。
赤のタグを持つ葛城に妖精の捕獲を許してしまえば、鷹津封術学園の敗北は免れないだろう。
葛城が妖精を捕獲できないように妨害するという手もあるが、両者の得点が僅差である今、万が一にも他の相手選手に赤の妖精が捕獲されてしまったら逆転を許してしまうことになる。
(それなら、精神的に優位に立っているうちに攻めるべきだ)
鶴木はそう判断して振り返る。
そういえば青の妖精を捕獲しようとして行動し始めたあたりから、葛城の攻撃が和らいだように感じられた。
それでも鶴木は彼の気配をすぐそばで感じていたため、過剰に応戦する真似はしなかった――もちろん葛城が青の妖精を諦めて赤の妖精を狙うようであれば全力で阻止できるように常に警戒はしていた。
一抹の不安を覚えながらも、鶴木は葛城の姿を探して視線を動かす。気配は近くから感じられているのに、彼の姿が見当たらない。
(どこにいった?)
おかしい。確かに気配はすぐ近くからしているのに、全く姿が見えない。
間接的に作用する術式が使えない以上姿を隠せるはずがないのに、葛城がどこにもいない――。
「どこを見ているのかな?」
声がした。
葛城の声だ。間違いない。
しかし、どこから聞こえた?
「こっちだよ」
「そこか!」
意識を集中させた鶴木は声がしたと思われる方向に振子を射出した。
「残念、ハズレだ」
背後から風切り音が聞こえたときには、鶴木は背中に強烈な殴打を受けていた。予期せぬ方角からの攻撃に身体が前のめりに倒れこむも、すぐさま受け身を取って起き上がる。
「……ごほっごほっ」
肺から口へと勢い良く空気が吐き出される。咳き込みながら周辺を警戒するが、一向に葛城の姿は見当たらない。
(くっ……僕は一体何の攻撃を受けている?)
鶴木は高鳴る鼓動を無理矢理落ち着けながら、冷静に状況を探ろうとした。彼は見習いであっても『星鳥』の名を持つ封術師であり、こういう場面で冷静さを失うことの恐ろしさを良く知っている。
「……暗がり…封術……姿の見えない相手……封魔と調律………死角からの攻撃……黒の衣装……夜…烏丸…………そうか!」
思いつく限りのキーワードを並べることである可能性にたどり着いた鶴木だったが、「……いや」と彼はすぐに考え付いたことを否定した。
それは有り得ない、と。
確かに今の状況を創り出せる封術式があるとすれば、それしか考えられない。
だけど、あの術式は間接的に作用する術式であって競技既定に反するはず……。
「いいや、待て。確か競技のルールは……」
封術協会による認定がされていない封術・装術の使用は禁止とする。
殺傷力C判定以上の干渉力を有する封術・装術の使用は禁止とする。
間接的に干渉する封魔術・装術の使用は禁止とする。
干渉範囲十メートル以上の感知系術式の使用は禁止とする。
(……封術協会に認定されていて、間接的に干渉するが封魔術ではない封術ッ!?)
「ようやく気づいたようだね」
再び葛城の声が聞こえた。相変わらずその声はどの方角から響いてくるのかわからない。
「だけどもう遅いんだよ」
ああ、そうだ。
この状況が鶴木の想像したとおりであるならば、もう何もかも遅すぎた。
(でも、一体いつから……)
そう思った瞬間、鶴木の脳裏によぎったのは青の妖精を見つける少し前に相馬から送られたある通信だった。
――鶴木君、葛城の周囲に「何か」が集まっているぞ。
しかしそのときの鶴木にはその通信内容はあまりにも抽象的すぎていて要領を得なかったため、葛城に対する警戒心こそ強めたものの、それ以上の深入りはしなかった。
その正体が『これ』であるならば――、
(あぁ、そうか。そのときから始まっていたのか)
常に葛城だけを相手にしていた鶴木は、長い時間をかけて少しずつ葛城と自分の周囲を染めていった『何か』の正体――光の屈折変化と闇の濃度変化が創り出す『夜』の存在に気づけなかったのだ。
(違う。そのときにはもうすでに僕は取り込まれていたんだ)
「そうだよ。競技場に影が落ちたそのときから、僕の術式は始まっていた」
葛城の言葉を聞いて、鶴木は理解する。
この封術式は『星鳥の系譜』序列第十三位の烏丸家が『夜』を解明し、保有している調律術式であることに。
そしてその術式の性質についても、鶴木は思い出していた。
「僕は二つの『夜』を使った」
葛城は言う。
全てが整った今ならば、状況から逆算して理解できる。
ひとつは自身の周囲に『夜』を創り出して己の姿を隠す調律術式『隠伏』。
もうひとつは『領域隔離』の発展系で、『夜』によって対象の五感を奪う調律術式『暗転直下』。
いずれも調律術式であって、間接的に干渉する封魔術・装術の使用を禁止とする競技ルールには該当しない。また、干渉範囲も限られているため一定範囲以上の感知系術式の使用を禁止とする競技ルールにも抵触しないし、領域の隔離すること自体の殺傷力はゼロに等しい(花鶏家の操る領域隔離は別格であるが)。
それでも、鶴木にはまだ疑問が残る。
それは、なぜ烏丸家の人間でない葛城が烏丸家の有する封術式を使えるのかということ。
いくら葛城が烏丸封術学園に通う学生であり学生自治会長であるからといって、封術師の名家が持つ特殊な封術式を一般学生が容易に教われるとは思えないのだが……。
そこまで考えたところで、鶴木はハッとした表情を見せた。
それをどこかから見ていた葛城が苦笑した。
「君が考えたとおりだよ、鶴木真君。僕は卒業後、烏丸家の婿養子になることが決まっているんだ」
『星鳥の系譜』に連なる十三家は何よりも優秀な才能を持つ封術師の血を求める。
そしてその名を受け継ぐ者となるのならば、その家が持つ特殊な封術の秘密についても知っていて然るべきだ。
「僕の家はそれなりに歴史のある封術師の家系なんだけどね、身分で言えば一般家庭とほとんど変わらなかった。だから烏丸封術学園の学生自治会長になって、学園長から縁談の話を持ちかけられたときには正直驚いたよ」
だけどね、と葛城俊輝は続ける。
「僕は葛城家のためを思ってこの縁談を受けたわけじゃない。ましてや特別な封術の秘密を知りたかったわけでもない。これは僕自身が決めたことで、僕は一生彼女とともに歩いていくと決めた。だから――」
『夜』が一層深みを増し、領域隔離の影響で遠くに見えていた妖精の赤い光がさらに遠ざかった。
周囲が見えなくなって、目を開いているのか閉じているのかわからなくなる。
足下が不安定になり、地面を踏みしめているという感覚までもが消失したと錯覚してしまう。
「だから僕は、僕にとっての最後の大会で、大切な彼女に僕の勝利を捧げると決めたんだ」
葛城の声が『夜』の中で反響していて、思わず耳を覆いたくなる衝動に駆られる。
「くっ!」
それでも鶴木は残る気力を全て振り絞って全身全霊で駆け出すと、遙か遠くに見える赤の妖精めがけて、右腕の篭手から大量の振子を射出した。
無限に感じられる距離を飛翔する振子があらゆる方位から赤の妖精を捕えようとして迫る。
(距離感はまるで掴めない。だけど、振子に全ての意識を傾ければ!)
最大加速をした振子の一つが赤の妖精を掠める。ここで自分が倒されたとしても、その前に赤の妖精を捕獲することができれば、勝利の可能性を仲間に繋ぐことができる――。
「そうはさせない。君にはここで脱落してもらうよ」
その正面――否、背後から葛城の声が聞こえたような気がした。
それが鶴木の意識に残った最後の記憶だった。射出していたすべての振子は鶴木の制御下を離れたことで干渉力を失い、『夜』に溶けるようにして消滅した。
「……全く、最後の最後まですばらしい執念だったよ、鶴木君」
鶴木が最後に捕えようとしていた赤の妖精を視線で追いながら、葛城はそう呟いた。
「まさか五感を失った『夜』の中で、妖精を捕まえてしまうなんてね」
葛城の言葉どおり、鶴木が一心不乱で放った振子のうちのひとつは赤の妖精を捕まえていたのである。
しかし、妖精は選手の手で捕まえなければ捕獲したことにはならない。
赤の妖精は己を縛っていた振子が消滅したことで再び空をひらひらと飛んでいく。
葛城の声は鶴木に届くことなく、彼の意識はそうして深い『暗黒』の底へと沈んでいった。
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第一演習場に競技終了のブザー音が鳴り響く。
『夜』に身を潜めた葛城が最後の一羽となった赤の妖精を捕獲したところで、『妖精の尻尾』男子決勝戦が決着したのだ。
競技場内には両膝に手を突いて息を切らしている選手が三名、折れた腕をぶら下げている選手が一名、気を失って倒れている選手が一名、『夜』を解除して姿を現した選手が一名いた。
競技の終了と同時に、救護用として控えていたスタッフたちが骨折をした烏丸封術学園の選手と気絶している鶴木のもとに急いで駆け寄った。烏丸封術学園の選手は救護室へ、鶴木は選手控え室へと運ばれていく。
それを見届けた四名の選手が最後に握手を交わし合うと、競技を終えた選手たちと女子に引き続き優勝を果たした烏丸封術学園の代表選手たちに向けて、観戦席から盛大な拍手が贈られたのだった。