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WGS~あなたの願い実現します!~  作者: sevennight
wish1:芹沢愛奈編
7/14

①-5 閉ざされた過去

side:aina


「何してるんだ芹沢?」


当然のような疑問を先輩は私にぶつけてきました。


「先輩を向かえに来ました! 一緒に学校行きましょう!」


幸い?にもレミィ先輩は用事があるらしくて先に学校にいったみたいなので、天宮先輩と二人きりです。

そんな感じに浮かれていると先輩が現実を突きつけてきました。



「まぁとりあえず走るぞ。見ての通り遅刻寸前だからな」


「みたいです!」


実は学校の朝礼まであまり時間がなかったり。

実は私もちょっと寝坊してたんでした。

私と天宮先輩は小走りで学校に向かいました。




「ここまで来たら安心です…」


なんとか校門まで着きました。

まだ朝礼までには多少時間があるので校門からは歩く余裕がありました。

ちょっとだけですけど、これで天宮先輩と登校できます。



「……………ぬぁー! disc2だとー!? 持って来てねーし!!」



先輩は道中ずっとギャルゲーとかいう女の子を攻略するゲームをやっていましたが。

わ、わかってはいましたがここまでの人だとは!

まさか走りながらもゲームするとは思いませんでした!


「おはよーござまーす!!」


すると下駄箱あたりで大声で挨拶されたので私と天宮先輩は振り返りました。

後ろから赤岸君、原君、坂江君が走って登校してきました。

三人も遅刻なんでしょうか。


「おう」

「あ、おはよーございますっ」


折角挨拶してくれたのに返さないのは失礼です。

私は急いで頭を下げました。

3人は挨拶だけするとすぐに校舎に入っていきました。


「…なるほどな」


天宮先輩はそういうと再びゲーム画面に目線を移しました。

何がなるほどなんでしょうか。



side:seito



昼休み。

いつものように購買でパンを一個買い教室に戻り歌詞を見ながらアニソンを聞いているとこの教室では見慣れない奴と見慣れた奴がやってきた。


「先輩! 遊びに来ました!」

「こんにちわ聖人さん」


芹沢とクサレシスターだった。

しかもレミィのほうは何を思ったのか昼時の挨拶を優雅にしてきやがった。


「あれぇ? 先輩お昼これだけですか?」

「ああ、普段はあんまし食べないほう…」

「育ち盛りがそんなんじゃあ駄目ですよ! というわけでお弁当を作ってきました!」

「人の話を聞け」


俺の意思は見事に無視されなんとも可愛らしく包まれた弁当が目の前に差し出された。


「ふっふーどうですか先輩? 欲しいでしょう食べたいでしょう? 先輩がどうしてもというのならあげてもいーですよ?」

「いや別にいらないし」

「そーですか、全くしょうがない先輩ですねーそんなに言うなら特別ですよ?」

「……………」


といって俺の机に弁当が置かれる。

俺は芹沢とは会話にならないと判断し、クサレシスターに話しかけた。


「なぁ、これ俺に聞く意味なくね?」

「あらあら女心がわかってませんね聖人さんは」

「いやわかんねーし」


駄目だ、俺にはどうこうできるものじゃないらしい。

諦めて再び歌詞に目を通す。



「おいおい今度は後輩の女子だぜ」

「キモーい。今回を何を要求したのかしら?」



ふと、いつものような陰口がわざとらしく耳に入った。

それに反応して芹沢も顔を上げる。


「全く…自分が万能人間だってことを利用して頼んだ相手に無茶な要求ばっかしやがって」

「あーいうのを人間のクズっていうんだろーな」

「ってことは今度はあの子が報酬か? 気の毒になぁ」


見るとレミィもあまり、というかいい顔をしていない。

芹沢を見ると何故か泣きそうな顔になっていた。

俺は全然気にしないがこのままじゃ芹沢が泣きかねんな。


ガタッ!!!


俺は勢いよく椅子から立ち上がった。

この教室にいた全員が驚いて俺を見た。


「行くぞ」


それだけ告げると俺は芹沢の弁当を持って教室を後にした。


「あ、待ってくださいっ」


芹沢は目に涙を溜めついてきた。

レミィもそも後ろを無言で歩いた。

教室では再びざわつきが始まっていた。




「なんなんですかあれ!?」


屋上の隅っこに腰を下ろした瞬間、開口一番に芹沢はそんなことを言ってきた。


「なんだいきなり」

「なんだじゃないです! 酷過ぎませんかあれ!?」

「いつも通りだよ」

「いつも通りって…!」


俺が冷静に対応していると隣に座っていたレミィが口を開いた。


「確かにちょっと異常でした。何か理由があるのですか?」


的を射た問いだったと思う。

この機会だ。

俺がどういう人間か知ってもらうためには丁度よかったのかもしれない。


「俺は知っての通りの人間だ。俗にいうオタクって言われるし自分でも認めてる」


まずは確認も込めたことから始めた。


「んでもって人よりも多少優れているのも確かだ。で、それを知ったやつはなんとかして俺の力を借りようとした」


ここからは淡々と続けだした。



「最初は好意で続けたよ。でも用が済めばすぐに態度が変わった。下手に出てきたと思えばすぐに強気な態度に変貌する奴もいた。所詮はオタク、扱いがいいわけがない。それで俺はある日、そのお願いを叶える代わりに金を要求した。最初躊躇っていたがなりふり構ってられなかったんだろう、そいつは俺に金を渡した。それからだ、俺が叶える代わりに何かを求めるようになったのは」


一旦間を空ける。

すでに二人は俺の話に集中して一切の言葉も発しなかった。


「何かを要求されるくらいなら頼まないってのが大方の意見だ。当初、頼んでくる奴は一気に減ったよ。でもそれでも頼む奴がいた。バスケ部のキャプテンだってそうだ、一時流行った風邪と試合が重なって試合に出れないときに俺に頼んできたから俺は金を要求した。アイツは二つ返事で了解し俺は試合に出た。やっぱり人間だ、悩み事や困り事は尽きない。どうしても俺に頼る奴が現れる、そういう奴の揚げ足を取って利用してきた。金に困ったときは金を、人手に頼んだときは人を、それを繰り返すうちにただでさえ悪かった俺の評判はどん底まで落ちた。噂は当然のように教師の耳にも届いた。しかし教師が手を出そうにも実際にその現場を見たわけでもなければ俺は超成績優秀者だ、わかりもしない罪にかけるにはあまりにも悪い相手だったから教師も動けなかったってわけ」


ここで一段落尽き、俺を話を終えた。


「わかったか? 俺はそういう人間なんだよ」

「………………」


黙り込んでいた。

芹沢だけでなくレミィもだ。

まぁ当然の反応だろうな。

こんな人間だってわかって嫌いにならないやつなんかいないよな。


「だから、もう俺とは関わらないほうがいい。お前らのためにも、俺のためにもな」


俺は背を向け屋上を後にしようと思ったその時。



「待ってください!」



突然の呼びかけに俺は驚き後ろを振り向いた。

何故か芹沢は泣いていた。

レミィもとても悲しそうな顔をしていた。


「先輩…ずっと一人だったんですよね? ずっと寂しかったんですよね?」

「なに言って…」

「誰かが傍にいたら…きっと違ったかもしれません。けど今は私たちがいます!」


わけがわからなかった。

なんで泣いてるんだ。

なんで悲しそうなんだ。

同情を求めるともりなんかなかった。

突き放そうとしたのに、なんでまだいるんだよ。

わけわかんねぇ。


「先輩、本当はそんな酷い人じゃないです。まだ出会って間もないですけど私の知ってる先輩はそんな人じゃありません」

「それは…お前が俺を知らないだけで…!」

「私もそう思います。聖人さんは本当は優しい方です。ただちょっとだけ歪んでしまっているだけです」

「誰が歪んで…!」

「だからこれからは…私たちが傍にいます!」


なんでこんなに優しいんだよ。

なんでこんなに気にかけるんだよ。

なんで…。


「天宮先輩…?」

「お前ら…」


よくわからないが。

ともかく今は。

この気持ちを表さないといけない。

そう思った。



「ホント、変な奴だなっ」



なぜか俺は笑っていた。



その日の放課後。


「さぁいよいよ明日が試合だ。目標はベスト8以上! ここ数年初戦、二回戦止まりだが今回をその歴史を塗り替えるぞ!」

『はい!!』

「よし、解散!!」

『ありがとーございました!!』


キャプテンの締まった一言を俺は少し離れて眺めていた。

ミーティングにはあまり参加したくなかったからだ。


「よっしゃ居残り練すっぞ! 原、坂江、手伝えよ!」

「あー俺のリバウンドが先だぜ!」

「いーやパス練からだ。お前ら走れ」


一年3人はミーティングが終わるとすかさず練習を開始した。

すると俺の元へニコニコとキャプテンがやってきた。


「お前が気付かせたんだ。あれから毎日、居残り練と朝練もやっている。前とは別人だよ」

「へぇ」


見ると3人は前よりも活き活きとしているように思えた。


「お前のお陰だ」

「どうも」

「それはそうと…」

「なんだよ」


キャプテンが改まって言ってきた。


「今日は随分と機嫌がよさそうだったじゃないか。何かあったのか?」

「はっ? 別にいつもどーりだよ」

「ハッハッハ。まぁそういうことにしておくよ」

「意味わかんね。俺は先に上がるよ」

「ああ。明日は頼むぞ」


俺は妙な居心地の悪さを感じ、その場を後にした。



side:aina



「あ、せんぱーい!」


が、頑張った甲斐がありました!

急いでマネージャーの仕事を終わらせた私は校門までダッシュで向かいました。

丁度下校中の天宮先輩と遭遇しました。


「今帰りですか先輩?」

「見てわかるだろ」

「そ、そーですよね」


あうぅ。

やっぱり相変わらずですが先輩は普段冷たいです。

昼休みはちょっとは打ち解けたかなって感じでした。

お弁当も結局食べてくれましたし。


そういえば何にも感想もらってなかったです!

あ、でも今更聞くのも図々しいかもですし…。

こんなことなら聞いておけばよかったです。


「芹沢」

「は、はいっ?」


突然名前を呼ばれたので私はビックリしながら返事をしました。

天宮先輩は相変わらずゲーム画面に目を向けたまま、こう言ってきました。



「弁当…美味かった」



「あ……」


え?

今弁当美味しかったって…え?

確かにそう聞こえました。


「え? え? 先輩聞こえませんでしたもう一度言ってください!!」

「だー! なんでもねーよ! ゲームの邪魔だからしがみつくな!」


私は聞こえていたのにもう一度聞きたくて子供みたいにせがみます。


「ねーねーせんぱーい」

「あーもう! 鬱陶しいっつーの!」



私、今幸せです。

愛奈は明日も頑張れそうです。

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