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WGS~あなたの願い実現します!~  作者: sevennight
wish1:芹沢愛奈編
5/14

①-3 アナタに入ってほしくて…

その日の夜---


side:seito



先ほどからギャーギャーと騒がしいクサレシスターを他所に俺はポータブルゲームに打ち込んでいた。



「だから説明したでしょうっ? 私は人の願いを叶えて生まれる『満足』したっていう気持ちが欲しいんだって! その『満足』のエネルギーを溜めないといけないの! じゃないと私は帰れないのよ!」

「だから知ったこっちゃねーっての! それこそお前が直接解決すりゃいいじゃねーか!」

「だからそれができたらアンタなんかに頼まないわよ! 向こうのルールで手伝いならよくても直接の解決までしちゃ駄目なのよ。だからパートナーを作って一緒に解決していくの」

「だったらなんでそれが俺なんだ?」

「アンタあの画像クリックしたでしょ?」

「ああ、したけど」

「あれはね、そういった問題を解決しやすそうな人に送られてるの。そしてそれをクリックして向こう側の判断でokがでればその人はパートナーになるって訳」


もはや訳がわからん。

最近のファンタジーはこんなくだらない展開になるのか?


「つまりアンタは選ばれたって訳」

「今までで一番不名誉な称号をありがとう」

「だから手伝う義務があるのよ」

「断る」

「だから無理だって」

「無理矢理にでも断ったら?」

「さぁ? 死ぬんじゃない?」

「随分適当だなおいっ!!」


さすがにそれは困る。

まだやりたいことがたくさんあるんだ。


「わかったら明日から練習に参加しなさい」

「やだね」


さすがにそれはノーと言った。


「なんでよ!?」

「さっき言っただろ? あんな下手くそな連中となんかやりたくないっての」

「けど…!」

「それにもう芹沢の願いは叶えただろ?」

「は?」

「だからあいつの言った通りバスケ部にこの身を差し出してやっただろ? 成立したじゃねーか」

「それは…そうだけど」

「それに主将の願いは試合に勝つことだ。練習に参加することじゃねー」

「同じようなものでしょ? 試合に勝つために練習するんだから」

「知るかよ。とにかく俺は練習なんかいかねー」


そういうと俺はイヤホンを耳に差し込んで本格的に会話しない姿勢をとった。


「…いいわよ…そっちがその気なら…」


なんか言ってた気がしたが気にしないことにした。




翌日---


目覚ましの音で目を覚ます。

基本的にあまり睡眠を摂らない俺は平均して3時間くらいしか寝ない。

遅くまで起きている理由はいまさら言う必要もないだろう。

だが朝はきっちり目覚ましの音で目を覚ます。

この生活をしてきて自慢じゃないが一回も遅刻したことがない。


さてと―――起きるか。


体を起こそうと手をついたその時。


むにゅっとした感触と


「きゃあっ」


という女の子の悲鳴で俺は朧の世界から一気に引き戻された。

布団を勢いよく捲ると。


「お…おはようございますです、先輩」


制服姿の芹沢が横たわっていた。


俺はその場で停止した。



side:aina



き、来ちゃいました。

天宮先輩の家に。

昨日あの後でレミィ先輩と相談した後に教えてもらった場所。

朝早くにレミィ先輩に呼ばれて急いで来ちゃいましたけど、男の人の家って始めてだから緊張します。

レミィ先輩に電話をかけたら玄関にいるので入って来いとのことでした。


「おはよう愛奈さん」

「おはようございます先輩。それで今日は…」

「聖人さんを誘惑するんです」

「誘惑…ですか?」

「ええ。どんな男性でも可愛い女性には弱いものです」

「か、可愛いだなんて…」


ほ、褒められちゃいました。


「作戦名はそう…『聖人さん大誘惑作戦』です!!」

「おー!!」


私たちは家の人に迷惑にならない程度に叫びました。



「わ、わ、これが男の人の部屋」


レミィ先輩に誘導されて上がりこんでしまいました。

ここが男の人の部屋なんですね。

レミィ先輩は作戦内容だけ言うと部屋から出て行きました。


「さ、早速みっしょんすたーと、です」


天宮先輩の布団をそっとめくって入り込みます。

ちょっと狭いですがなんとかすっぽりと入ることができたので私は顔を上げました。


目の前には天宮先輩の顔がありました。

改めてみると、端整な顔立ちに長い睫毛、とてもオタクさんには見えないです。

やっぱりカッコいい…。


って改めて考えると私なにやっちゃってるんでしょうか!

考えてみるとめちゃくちゃへんな人です私!

今更ながら顔の火照りが止まりません。

すると目覚ましの音が鳴ります。

モゾモゾしながら目覚ましを止める先輩。

そして起き上がろうと手を置きました。

私の胸に。



「きゃあっ」



思わず声が出ましたがなんとか抑えました。

そしてココロの中で叫びます。


きゃああああああああああっ!


お、男の人に胸を触られました!

ますます顔は赤くなっていく一方です。

私に気付いた天宮先輩は顔を赤らめるどころか顔を青ざめて。


「うおわあああああっ!?」


そう、悲鳴を上げました。


チクリ。


と、なぜか私は胸が痛んだ気がしました。


「な、何してんだお前っ!?」

「何って…誘惑ですっ!」

「わけのわからんことを…ってお前の差し金かクサレシスター!」

「あら、バレまして?」

「お前ぐらいだろこんなことやらすの!」


聖人先輩はベットから飛び降りるとレミィ先輩を追いかけました。

私はなぜか痛い胸の理由を考えてました。



「あ、あの…先輩」

「なんだよ」


き、気まずいです。

あの後で誘惑作戦の続きだということでそのまま聖人先輩と一緒に登校することになりました。

しかし今朝の一件のせいか先輩はものすごく不機嫌そうです。


「あ、あの…」

「ああっ?」

「ひっ、すみません…」


怒った先輩、やっぱり怖いです。


「なぁ」

「は、はい!?」

「どうしてそこまでするんだ?」

「え…それは…」


聞かれて初めて考えました。

そういえばどうしてこんなに必死なんでしょう。

考えれば考えるほどわかんなくなります。


「わ、わかりません…」

「は? わからない? そんな曖昧な理由で俺の生活を邪魔してたのか?」

「す、すみません…」


また怒られました。

先輩はぶつくさいいながらカバンからゲーム機を取り出すと歩きながらプレイし始めました。


もう…関わらないほうがいいんでしょうか。

確かに先輩がバスケ部にいてくれたらきっと勝てます。

けどそれは先輩の意思があってのものです。

無理矢理やらしたってきっといい結果は生まれません。

もう諦めよう。

そう思うとなんだか目が潤んできました。


「あれ…おかしいな」


なぜか悲しいのが止まりません。

悔しいのが止まりません。

やっぱり私は駄目な子です。

頼まれ事一つこなせません。


「………………なぁ」


不意に背後から声がかかりました。

先輩はゲーム画面を見つめたまま私に話しかけます。


「アンタ…そんなに俺に入ってほしいのか?」

「え…?」

「どうなんだ?」


いきなりの質問に私は涙を拭うのを忘れ、その言葉の意味を理解しようとします。


「は、はい! 私のお願いですっ!」

「そっか…」


天宮先輩はゲーム画面から目を離しこちらに顔を向けました。


「アンタ、変なやつだなっ」


そう笑顔で言われました。

たぶん馬鹿にされたはずなんですが、それ以上に私はこの人の笑顔が見れた喜びで胸がいっぱいでした。


「わかったよ。アンタの願い、俺が叶えてやる」


そういうと先輩はまたゲーム画面へと視線を落としました。


なんでしょう、この不思議な気持ちは。

なんだか体がぽわぽわしてる感じです。

でも不思議と…


嫌じゃなかったです。


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