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②-5 好きな子のために

side:syogo


それからというもの、俺は坂嶺の"相談相手"となっていた。

とはいっても話すことは天宮のことばかり。

それでも、その話を楽しそうにする彼女を見ていると、なんだか俺も自然と笑えてくる。


そのおかげといってはなんだが、最近では毎日坂嶺と登下校は一緒だしメールもよくするし電話だってたまにする仲にまでなっていた。


しかしそれも全て天宮のことなんだが、それでも俺は今の現状に甘えていた。


このままでいいかなと思っていた。



「よーお二人さん」



「あ、天宮さんおはようございます」

「おはよ」

「相変わらずゲームばかりだな。というか会話するときぐらい顔こっちに向けろや」

「うっせーな。今『姉妹メーカー2』やってんだが、これがまさかの格ゲー要素満載のゲームでさ、次の選択肢ごとにバトルイベント発生勝敗で選択肢が決まるというかなりカオスなゲームなんだがそれでもキャラグラフィックの完成度の高さに(ry」


すでに俺らが住む世界とは別の言葉を使い出したので、聞く事を諦めた。

そんな天宮の姿を、坂嶺は楽しそうに眺めている。


まぁ、天宮だったら、俺は諦めがつくしな。


「それでは私たちは先に行きますね」

「はい、失礼します」


ついに動かなくなった天宮の首根っこを掴んでレミィさんは引きずりながら学校に向かった。

それでもゲームをする天宮は筋金入りのオタクなんだなぁ…。


「面白い人ですよね、天宮さん」

「そうだな」


それに関しては心から同意できる。



「よー」



ふと、俺の肩に手が乗せられた。

その声には、わずかに聞き覚えがあった。


「お前…!」


そう、先日坂嶺を襲った連中の一人だ。


「ちょーっとお話があるんだけどさ、もちろん来てくれるよね?」

「誰が行くか!」

「あらら、いいのかねそんな口利いて?」


後ろを振り返ると坂嶺の周りに3人の男たち、先日の奴らだ。


「坂嶺には手を出すな」

「んーどうしようかなぁ、とりあえず君ら二人には来て貰うからね」


逆らうこともできず、俺と坂嶺は旧校舎に連れて行かれた。



「ねぇみっちゃん、今のって…」

「うん、まなちゃんと最近一緒にいる人だよね?」

「どうしよ…なんかやばそうな人に連れて行かれてたよ」

「と、とにかく誰かに知らせよう!」

「うん!」




「おらぁ!」

「ぐっ…」

「まだまだ!」

「ぐぁ!」

「どうした? とっとと立てよ」


旧校舎に連れこまれたかと思えば、一人が坂嶺を拘束し残りの3人が寄って集って俺をボコボコにしていた。


「おま…えら、俺を殴ってなんのメリットがある…?」

「ああ? メリット? そんなのねーよただの腹いせだっつの」

「そーそーこの前俺らさアンタの連れにやられたじゃん? それの腹いせだよ」


下品な笑いを続けながら、ひたすら俺に攻撃を続けた。


「もう止めてください!」

「ああ?」


坂嶺がそう叫んだ。


「おいおい、女が口挟むんじゃねーよ」

「もう止めてください! 響さんを…これ以上傷つけないで…」

「坂嶺…」


それを聞いてキレたのが、坂嶺を拘束して隣で見張っていた工藤という男だ。


「傷つけないでだぁ? ちょーしにのるなよ女ぁ!」


パァン。

乾いた音が坂嶺の頬をぶった。


「おいおい工藤、気をつけろよ」

「ビンタ一発くらい問題ねーよ」


しかし坂嶺は泣くことなくむしろ立ち向かうかのように毅然とした目をして工藤を睨んだ。



「これ以上響さんを傷つけるっていうのなら私を殴ってください!」



「この女…なら望み通りもう一発くれてやるよほぉ!?」

「工藤!?」


その右手を振りかざした瞬間、俺は両手が縛られているのも忘れ奴の顔面に蹴りを入れていた。


「てめぇ…あれだけ殴られてなんで立ち上がるんだ!?」


俺は坂嶺の前に立った。



「お前ら、坂嶺には指一本触れさせないぞ!!」



「響さん…」

「ひゃっはー! よくいったよお前! じゃあお前が殴られな!」


気づいたときにはすでに遅く。

工藤は持っていた鉄パイプを俺の頭部目掛けて振り切ろうとしていた。


「響さん!!」


あー…これはさすがに頑丈な俺でもやばいな。

だが、俺が倒れたら坂嶺が一人になってしまう。

なんとしても倒れるわけには…。


「死ねやーーー!!」


万事休すか…!



「いやお前が殴られろ」

「ぐほぉ!!?」



その鉄パイプは俺に触れることさえなかった。

なぜなら工藤はそれを振り切る前に殴られ気絶したからだ。


「天宮!」


また、こいつに助けられたな。


「大丈夫ですか響さん?」


レミィさんも一緒だ。

持ってきたのかカッターナイフで俺の手首を縛っていた縄を切ってくれた。


「どうしてここが?」

「いやな、たまたま坂嶺の友達たちがお前らが悪そうなやつらに連れて行かれるのを見てたまたま、教室にいた俺を見かけて声をかけたまたま、暇だった俺がたまたま、助けにきただけだたまたまな!」


そこまで強調せんでも。


「愛華ちゃん大丈夫ですか?」

「ありがとうございますレミィさん」

「さてと人質も解放したことだし、やれるか響?」

「当然だ」


先ほどの痛みは嘘のように消えていた。


「調子にのんなよてめーらぁ!!」

「そりゃこっちの台詞だっての。一回痛い目見た程度じゃ足りないみたいだな!」


その後は、まぁ言うまでもなく俺と天宮でそいつらをボコボコして事件解決だ。





「しかし本当に助かった天宮。正直かなりやばかったんでな」

「だからたまたまだっての」


まだ言うかコイツは。


「感謝するなら坂嶺の友達に言っとけ。あの二人が見つけなかったら本当にたまたまでもない限り助けられなかったしな」

「そうか」


本当に、最近の俺は助けられてばかりだな。


「んじゃ俺らは教室帰るわ」

「響さん、一応愛華ちゃんを送ってあげてくださいね」

「ああ、わかってる」


二人はあっという間に去っていった。


「あの、響さん。ありがとうございました、また助けていただいて…」

「ん、何気にするな」

「いえ、そういうわけには」

「それに坂嶺があの時身を挺して俺を庇ってくれなかったら俺だって危なかったしな。お互い様だ」

「あ、はい」


一緒にこうして廊下を歩けるだけで、俺は幸せだ。


しかし、これも長くは続かないだろう。

なぜなら坂嶺は天宮が好きだからだ。

きっと、もうすぐこの隣を歩くのは俺ではなく天宮。

今日だって天宮が助けにこなければ本当に危なかった。

たまたまとか言っていたが実際は定かではない。

案外後を付けていたと言われてもあいつなら頷けるしな。


だからそろそろ、俺も本当に諦めようかと思う。

もう今の関係は終わらせるのが互いのためなんじゃないだろうか。

そう思えて仕方がない。


「…さんっ響さんっ」

「お?」

「聞いてますか?」

「あ、ああ」

「じゃあ今なんて言ったか言ってください」

「すみません聞いてませんでした」

「ほらやっぱりー」


そういって頬をわずかに膨らます坂嶺。

この行動一つ一つが愛らしくて仕方がない。


まぁ、どうせ天宮のことだろうな。



「今日の響さん、天宮さんよりもかっこよかったですよ」



……へ?


「今なんて?」

「もー言いません! 私教室に帰りますね!」


坂嶺は走っていってしまった。


「う…」


ううううううう。



「嬉しいじゃねーかこんちくしょーーーーーー!!!」



やっぱ好きだ坂嶺ーーーー!!!


『うるさいぞ今授業中だろうが(でしょう・だろ)!!!』

「す、すみません」


後で職員室でみっちり叱られました。



side:seito


「聖人さーん」


その日の昼休み、レミィが俺に声をかけてきた。

まぁ当然の如くこんなやつとの会話パートを展開するよりゲーム内の美少女ときゃっきゃっうふふの会話パートを展開したいのだが、ここでコイツを無視すると死亡フラグが立つ暇すらなくデッドエンド直行なので俺は渋々反応した。


「なんだよ」

「今日もお手柄でしたね聖人さん。おかげで僅かですが愛華ちゃんの友人二人から『満足』を得ることができましたっ」

「そりゃよかったな」

「それにしても先日に続いてあの活躍。ますます愛華ちゃんは聖人さんにゾッコンじゃないですか? もーモテモテですねー」


そう言ってバンバンと背中を叩いてくる。


「何言ってんだお前?」


しかし俺はその解釈が間違ってると指摘した。


「え? だって愛華ちゃんは聖人さんのことが好きなんじゃ?」

「はぁ、バカだなお前」


突然飛んできたボディブローを未だ回避する術を持たない俺はやはりモロに喰らってしまう。


「ギ、ギャルゲ、やってりゃ、わかるっての。坂嶺の好きなやつは、俺じゃ、ねぇ」


俺は腹を押さえながらなんとか言葉を発した。


「じゃあ一体…ああ、そういうことですかっ」


ようやく察したようで。


「でもそれだと聖人さん寂しくなりますねー。あ、聖人さんには私がいるから大丈夫ですね」

「いやそれはない」


それはもうズバっと。


「……」

「ぐぼぅ!」


無言で必殺のパンチ繰り出すの止めていただけますかねぇ!


「あらまだ喋れたんですか? 次で息の根を止めてあげますね?」

「ちょ…ま…やめろぉおおお!!!」


へぶーーーーーーーーん…。


あ、ばあちゃん久しぶり。

え? 帰れって?

うんわかったぁ。


その日、死んだはずのばあさんに会いました。

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