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②-1 厳つい訪問者

side:??



だ…駄目だ。


俺はもう本当に駄目だ。


どうしようもないこの感情。


晴らすことのできないこのモヤモヤ。


本当にどうしようもない。


どうすればいい!?

どうすればいいんだぁぁぁあああ!!!




side:seito


「な…」


久しぶりだ。

こんなにいいモノに出会ったのは久しぶりだ。

俺は授業中であるにも関わらず声を漏らした。



「泣けるっ…!」



こんなにいいアニメは久しぶりやー!

キャスト良し作画良し音楽良しなにより話がいい!!

今年度ナンバーワンはこれに決定だな。

今度これで二次創作でもするかな。


「随分楽しそうだな天宮」

「ええ、先生。今丁度今年度最大の神作であろうアニメを見終えたところです」

「大変結構。だが私の授業はどうしたぁ?」


全く何を怒っているんだこの男は。

別に俺は授業の邪魔なんかしていないしイヤホンだってちゃんとしてる。


「じゃあこの数式を解いてみろ!!」


見上げると黒板には長い数式が。

面倒だがコイツの怒りを静めるため、俺はその数式を暗算かつ口頭で答えた。


「正解だぁーー!!!」


なんなんだコイツは。

なにやらぶつけ様の無い怒り駆られているようにも見えたが俺は見たアニメの感想を書くために再び視線を落とした。



昼休み―――。


「平和だ」


この前の芹沢の一件以来のこの数日、依頼など一つも来なかった。

クサレシスターエンジェルはどうにもご不満みたいだが俺としては願ったり叶ったりだ。

おかげで昼休み、優雅にこうして漫画を読んでいる。


この漫画、原作があのアニメの人と一緒なだけあってかなり深いストーリーが楽しめる。

こういう人間を世にもっと排出するべきだよなぁ。


さて、買ったパンでも食べるかね。

と、カバンに手を掛けたその時だった。



「頼もぉぉぉぉぉおおおううぅぅ!!!」



なんか変な人が教室にやってきた。

当然の如く一同の視線はその声の主に集まる。


しかし俺はと言えば声を聞いただけで危険を察知し、視線を漫画に移した。


うわぁヤベェよ。

なんかもう面倒事の塊みたいなオーラ出てるわこの人。

まぁ俺には関係ない――――



「天宮聖人はこのクラスかぁ!!?」



ことなかった。

おいぃ!

なんで俺!?

しかもクラスの奴ら一斉にこっち向くんじゃねーよ! なんだその統一感!?


いや、まだだ! 

俺は速やかに机の間は這うように教室を出ようと―――



「ここにいます!」



と、クサレ天使がこの日一番の笑顔でそう告げた。


ぬぁーーー!!

こんのクサレ暴力エセ天使ぃ!!

アッサリ面倒事をゲットしやがった!!


「実は天宮聖人に頼みがあるんだがぁ!!」

「断わ―――」

「ただでは無理ですね。彼に勝てばきっとOKが貰えるでしょう!」

「そうか! ならば天宮聖人! 俺と勝負しろ!」


駄目だ、レミィの前じゃ俺はツッコミどころか意見もマトモに通せねぇ!!

ていうか単なるコイツの暇つぶしだろこれ!

さっきからめっちゃ笑顔だし!

しかもなんかもう完全に『キモオタと厳つい人が決闘するって』雰囲気になってるし!


「頑張ってくださいね聖人さん」



いつか泣かす。




場所は移って校舎裏。

なんかもう変なギャラリーいるし相手戦う気満々だし。


「自己紹介が遅れた! 俺は響彰吾!(ヒビキショウゴ) 3年だ!」


胸元の校章の色見ればわかるっての。

ちなみに一年が青、二年が赤、三年が黒だ。


「すまんが我が野望のためお前には惨めな思いをしてもらうぞ」


もう完全に決闘だこれ。

もう逃げようねーよ。

だって周り生徒が囲んでるもん。

正直目立つほど嫌なことはない。

しかし状況が状況だけに俺への興味を必然的に集まった。


「お前のような駄目そうなやつで本当に大丈夫かわからんが、今俺は藁にも縋る思いなんだ。あのお方が言うことを信じて俺は貴様を倒す!」

「わけわかんねぇよアンタ…」


あのお方って誰だよ。

てか、話の経緯が全くわからん。

だが、こいつは勝手に盛り上がっているが、俺も俺で先ほどからストレス溜まりまくりなのだ。


「よくも俺が漫画読んでる最中に邪魔してくれたなコノヤロー。あれ昼休みに読むのが今日の俺の楽しみだったんだぞ」

「ふ、ようやくやる気になったか」

「最近じゃ史上最強の弟子も最新刊まで読破してなんとなく強くなった気がすんだよ!」


発言がまったくもってオタクっぽいがそんなことは気にしない。

それが俺だから!


「では両者先にギブアップしたほうが負け、よろしいですね?」

「おう」


いつも間にか事の発端が審判じみた立ち位置にいたがツッコむのも面倒なのでスルーした。


「レディー…ファイ!」


どっから出したか知らないコングの音を鳴らすと同時に周囲がさらに沸いた。

決闘の始まりである。


「血祭りじゃあーー!!」

「悪いが…」


俺は一言だけ告げる。



「こっから先は俺の独り舞台だ」




数分後――――


「二度と来るなクソ筋肉ダルマ!」


文字通り俺の独り舞台、ボコボコにしてあげました。


見てた生徒はどうやら俺がボコられる姿を期待していたのか序盤ですでにコイツが劣勢なのを感じるとゾロゾロと帰っていき最後は誰もいなくなっていた。

にしても案外できるもんだな無拍子。

漫画読んでてよかったわ。

響とかいう先輩には悪いけど俺に勝つには修行が足りないみたいだな。

グラップラーでも最初から読んできな。


「ぬおぉ…その強さまさに本物…! 俺の願いを叶えてもらうに相応しい…」

「何言ってんだアンタ?」

「ふふふ…謙遜しなくてもいい。貴様のことは天から舞い降りた天使様より聞いている」

「頭おかしいんじゃ…」


ちょっと待てよ? 天使?

まさかとは思うが俺は念のため確認を取ることにした。


「まさかとは思うがその天使、服装はシスターじゃなかったか?」

「おおよく知ってるな。最近はミニスカシスター天使が流行りなのだろうかなぁ…」


レミィを見る。

えへっ、とウインクしてきた。



「お前が原因かぁぁぁぁぁぁああああ!!!」


「ぬぉう! どうした天宮!」

「うるせぇ!! 今日という今日はもう許せねぇ!」

「あん、聖人さん暴力はいけませんわ」

「だからその猫被りっぷりが腹立つんだよー!!」


その後二人で校舎裏に行き。

ものの数分で完敗しましたとさ。




side:syougo



ああ、いつ見ても可愛いなぁ。

思えば今までの俺の人生、喧嘩に明け暮れていたが、彼女と出会って俺は変わった。

一目惚れというやつだ。


しかし話しかけようにもきっかけが無い。

知り合いに女友達がいるわけでもなければ自分から積極的に女子に話しかけるような人間でもない。

困った俺の下になんと天使が舞い降りた。



『天宮聖人を訪ねなさい』



その言葉を頼りに俺は天宮聖人を見つけた。

しかし見つけたはいいがどうにも頼りなさそうで、それでいて顔がカッコいいから無償に腹が立った。


なんだか見覚えのある女子の話の流れで天宮と決闘することになったが俺は久しぶりに敗北を味わった。

しかも圧倒的な。


コイツだ。

コイツならなんとかしてくれる。

そう思って俺は俺の願いを告げた。



「好きな子と友達になりたいだぁ?」

「ああ」



くそ、めちゃくちゃ恥ずかしい。

この前まで殴り合いばっかりだった俺が人を好きになるなんて。

天宮の反応は。


「アッハハハハハハハ!! 聞いたかレミィ? この筋肉ダルマはどうやら脳まで筋肉でできたるらしい。ゴリラが人に恋するなん…手が変な方向にぃ!!」


やはりコイツは凄いがもの凄く腹の立つやつだ。


「すまんすまん。で、誰なのそれ?」

「人の真剣な話を聞きながら漫画を読むやつを始めてみたぞ」

「そりゃよかったな。こっちはアンタが邪魔したおかげで読みきってないんだよ」

「聖人さん?」

「ぐっ…わかったよ」


なにやらレミィさんの言うことだけには従うようだ。

尻に敷かれるタイプか。

それよりも俺は本題に戻った。


「俺が一目惚れした相手…この学園の2年坂嶺愛華(サカミナマナカ)さんだ」

「へぇ」

「聖人さん…」

「で、具体的にどうすりゃいいんだ!?」


なにやらこの二人の人間関係が目に見えてわかるところだなと俺は思ってしまった。


「とりあえずはまず彼女と俺との接点を作ってくれ。話せるような状況でもいい」

「んで報酬は…」

「いりませんよね聖人さん?」

「ウン、ボクムショウデハタラク」

「そ、そうか?」


さっきまで天使のように見えたレミィさんだが、だんだん別の生き物に見えてしょうがなかった。

しかしそんなことに気を配る余裕はなく俺は思いをぶちまけた。



「俺は本気なんだ! 一目惚れなんだ! 今まで喧嘩ばかりしてた俺にとって彼女は奇跡だ! 少しでもいい、なんとかして接点がほしい!!」



言い終えると一瞬沈黙が流れた。

そして天宮はふうっ、とため息を吐き。



「まぁ断りようもない状況だからな、わかったよ。アンタの願い、叶えてやる」



一瞬天宮が別人のように思えた。




side:seito



響が帰った後。

俺たちは少しの間部室に残っていた。

俺は読み損ねた漫画も読み終え、二次創作の構想も練り終えさっそく帰って実行に移そうと帰り支度を始めた。

なんか頼まれた気もするが明日考えればいいだろう。

と、椅子から立ち上がった時、部室のドアが開いた。


小柄な感じの女子生徒が独り入ってきた。



「あの、願望実現委員会って、ここで合ってますか?」



その言葉にいち早く反応したのはレミィだった。


「ええ。ようこそいらっしゃいました。いかなる悩みもこの天宮聖人がたちどころに解決してみせます」

「なんで俺なんだ」

「それで今日はどんな悩みを?」


相変わらずの一方的無視が発動していた。

コイツに対して人権とは通用するものなのだろうか。



「実は…最近帰宅中に誰かに見られている気がするんです」



予想外の悩みに俺とレミィは驚いた。


「それってストーカーってことですか?」

「はい…たぶん」

「警察に通報は?」

「してません。あまり大事になるのも嫌なので…でもストーカーされるのも嫌でどうしようって悩んでたらたまたまここの張り紙を見つけて…」

「そうですか、わかりました。後はこの天宮聖人にお任せください」

「散々でしゃばって最後はそれか!」


もはやコイツのいい加減さには諦めすらついている。

俺も結局は悪態を吐きながらも暴力に屈してしまうか弱い男なのさ。

と、そんなことを言ったらまた面倒なので心の内に秘めることにした。


「じゃあ状況を詳しく教えて貰えますか?」


レミィと俺は椅子に座り女子生徒を座るように促す。



「私、坂嶺愛華といいます、よろしくお願いします」



と言って深く頭を下げた。

ん? 坂嶺愛華?

どっかで聞いたことがあるような…。


「あ!」

「どうしました聖人さん?」

「いや…なんでもない」


レミィはちゃんと話を聞いていなかったっぽいから気づいていないが。


この坂嶺は響が惚れたって言う女子生徒だ。

ということはまさかストーカーの犯人って…。


どうやら思ったよりもややこしい事態になりそうだった。

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