wish:0 願い、始まり
side:??
「二年の天宮には気をつけな」
入学してから入部して間もない私に先輩が最初に言った言葉がこれでした。
私、芹沢愛奈はバスケット部のマネージャーとしてこの蓮城学園に入学しました。
元々運動オンチだけどスポーツは人一倍好きでだからマネージャーをしたんです。
そしてキャプテンの気になる一言。
「二年の天宮には気をつけな」
一体誰なんでしょうか。
入学したての私の興味はすぐにその人に注がれました。
side:seito
学校とはなぜこれほどまでに退屈なのか。
そう思いだしたのは小学に入ったばかりのときだった。
そのときたまたま親父が買ってくれたプラモデルが俺の人生を変えた。
「師匠! もうすぐ完成じゃないですか!」
「ああ任せとけ。それより金は用意したか?」
「はいこちらに!」
「いいだろう。その願い叶えてやる」
俺は慣れた手つきでそれを完成させる。
そして完成と同時にその男を泣きながら膝を突いた。
「完成だ」
「やったあぁぁぁ! 念願の亜美ちゃんフィギュア!!(着せ替え可能)」
俺は満足気味にそのフィギュアを差し出した。
「いやぁまさかまだ作られてもないフィギュアまで作り出すとは! さすがは二次元の帝王!」
「ふ、言ったろ? 願いを叶えてやるって」
周囲から「キモい」とか「帰れ」とか「学校くんな」とかの囁きが聞こえるがもはや日常茶飯事、気にすることはない。
もう慣れたからな。
俺の名前は天宮聖人。
名前の通り両親は俺に聖人みたいな人になって欲しいらしくこの名前をつけたらしいが、残念ながら現在歪みに歪みまくっているのは周囲の反応をみても定かだろ。
まあ世間一般的な部類のオタクというやつだ。
それも極度の。
オタクと迫害されるようなものからそうでないものまで手を出し続け極み続け今では二次元の帝王という通り名まで得てしまい学園内外問わずにこの手の層の人間から崇拝されるまでになってしまったのだ。
「ねぇ天宮ってアンタの幼馴染でしょ?」
「やめてよ。私の人生最大の汚点なんだから」
そう。…もう、慣れた。
「はうぁ! きた! ネタきたーーーー!!」
現在同人誌用の小説を執筆中。
この通りオタクという括りの中であらゆるステータスを高めてしまったため、くしくも多忙な毎日を送っている。
同人用の小説、漫画、フィギュア製作、イラスト、動画作成、ボイス投稿etc…。
挙げればきりのがない。
周囲からは白い目で見られるがこれでいい。
俺は二次元が好きだからしょうがない。
これからもきっとこの生活を続けるだろう。
惨めだと言われてもこれが俺なのだ。
しょうがない。
「さて…ブログの更新でも…」
アクセスランキング毎週TOP10入りするまでに人気となった主にゲームの攻略をしている俺のブログ『god tear』でも更新するか…。
ふと掲示板に目がついた。
最近の書き込みの一番新しいところに画像つきのファイルがあった。
画像つきの掲示板書き込みなんて今時珍しくもなんともないが、珍妙だったのがその被写体がシスターということだ。
気になった俺は思わずその画像をクリックした。
「うわっ!?」
とたんにパソコンのデスクトップが光りだしたかと思うとその光りで俺の視界は潰された。
「な…なんだ!?」
その眩い光りに目を開けることもできずに俺は収まるまで目を閉じていた。
「な…なんだったんだ?」
ものの数秒足らずでそれは収まった。
しかし不幸なできごとが一つ。
「ぬあぁ! パソコン落ちとる!」
先ほどまでブログが映っていたデスクトップは見事に真っ暗だった。
暗い画面はときに鏡のような役割を果たす。
自分の後ろを映してくれるのだ。
俺がその映った光景に目を疑った。
先ほどのシスターが立っていたのだから。
え…? 何この展開?
「あなたを探しておりました」
「…………」
絶句して声もでない。
シスターは続ける。
「どうか私に協力していただけませんか?」
「は? いきなり何いって…」
「お願いします! あなたしか頼れる人間がいないのです!」
「いやいやいや」
待て待て待て。
こいつはヤバイ。
なんかヤバイ臭いが…しかもリアルな面倒事を持っている気がバンバンする。
そうゆうのがわかるあたり俺が普段からいかに現実から目を逸らしているかがわかるな。
じゃなくて!
とにかくなんとかしてこの場を切り抜けなければ。
いやしかし相手は女でシスター。
いくら摩訶不思議な登場したやつだからってこれなら勝てるんじゃね?
いやいける。絶対いける。
よっしゃ!
俺の安息を守るためにも…俺は全く不本意に思わずもリアル女子に拳を振り上げ…
「ふん!」
る手前で俺の顔面スレスレを拳が高速で通過したのでその場で固まった。
「全く…人が下手にでていればこの態度…アンタ、ホントにそれが人に頼まれる態度なの?」
「お前こそ人に頼む態度かよ…?」
こえぇぇぇ!!
なんだこの暴力シスターは!
完全に猫被ってやがった!
見た目に完全に騙されたわ!
「はっきり言うわ。アンタ、あたしを手伝いなさい」
「断る」
「ふん!」
再び拳が頬を掠める。
「手伝うわけないだろ! リアルの面倒事なんて死んでもゴメンじゃあー!」
「じゃあ死ぬ?」
「待て待て待て! 一体なにが目的だ!?」
「だから手伝ってほしいのよ」
「だから何を!?」
「人助け」
「は…?」
まあこのとき一つだけわかったことがある。
これが俺の面倒事の始まりだと。