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刹那の風景 第一章  作者: 緑青・薄浅黄
『 椿 : 控えめな優しさ 』 
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『 僕と旅立ち 』

「じゃぁな、刹那、椿のように生きろ」


カイルはそう告げると、魔法と思われる言葉を詠唱し始める。

その詠唱を、止めたい気持ちと戦いながら

僕は、拳を握り締めた。


そんな僕の態度を見て、カイルは少し笑い僕に手を伸ばしてくる。

その手が、僕の額に触れた瞬間……僕の中に様々なものが流れ込んできた。


記憶と呼ばれるものや、知識と呼ばれるもの

技術、能力そういったものが、津波のように一気に僕に迫ってくる。


その全てを、こぼすことなく

受け入れようと、僕は必死に足掻く。巨大な波の合間をもがくような感覚

カイルと花井さんが、培ってきたものを1つも落とすことなく

僕に受け継がれるように、そう僕は何1つ無駄にしたくはなかったから。


そしてゆっくりと、波が収まっていく感覚に目を開けると

僕はベッドの横にたち、ベッドの中で横たわっている僕を見下ろしていた。


27年間、見慣れた僕の姿。

今は閉じているが、黒い目に黒い髪。こちらに来た時に

少し若返ってしまったみたいだけど、僕であることに間違いなかった。


そして、僕の右腕の腕輪がサラサラと崩れるのを見る。

その瞬間、杉本刹那という人間は死に、カイルと言う人間も

またこの世から消えたんだと、実感した。


僕はここにすべてを捨てていく……。


遠くの方から少し慌しい気配を感じる。

僕が死んだ事を、察知したのかもしれない。


見つからないうちに、移動しなければ

そう思い、カイルがどうやってこの部屋に来たのかを検索する。


カイルの話していた事は、妙に現実味を帯びており……。

頭の中に、パソコンが入っているような感じだ。

カイルは、僕の日本人としての気配を探ってここに来たらしい。

どのような方法で、それが分かったのかは漠然としかわからないけど

追々、分かってくるだろうか?


魔法が使える、使えないの不安は一切なく

自然と魔法が、体になじんでいるそんな感覚。

まるで、僕が僕で無いみたいな感じを抱くけどそのうちなれるだろう。


少し集中すると、この建物から人の気配を感じる。

人が何処にいるかという、詳細な気配。

もう少し意識を研ぎ澄ませるような感覚で

その意識を、建物の中から外へと向ける。


沢山の人が集っている場所、これが城下町だろうか?

その人が集っている場所から、少し離れた位置

人の気配を感じない位置に向かって、僕は初めての魔法を使った。


” 転移 ” そう、心に思い浮かべるだけで

僕は、1年間過ごしたこの部屋を逃げ出したのだった。


僕の全てを捨て、カイルとの思い出を胸にしまい。

そして彼の言葉を胸に刻み込んだ。


『椿のように生きろ』


焦燥と多大な寂しさを胸に、僕は3度目の人生を歩きはじめる。



読んでいただき有難うございました。

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僕達の小説を読んでいただき、また応援いただきありがとうございます。
2025年3月5日にドラゴンノベルス様より
『刹那の風景6 : 暁 』が刊行されした。
活動報告
詳しくは上記の活動報告を見ていただけると嬉しいです。



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