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刹那の風景 第一章  作者: 緑青・薄浅黄
『 カーネーション : 忍耐強さ 』
65/126

『 俺と加護 』

「……で……」


「……い……う」


誰かの話し声がする……。

話し声……?


俺は……。


朦朧とした意識の中で自分が今何処にいるのかを考える……。


俺は……。

脳裏に、声が響く……。


"大丈夫です、だけどサイラスさんも少し寝ていてください。

 あの人の放つ殺気は、精神に作用するものだから"


-……セ……ツナ……?


セツナ!?


ぼんやりしていた意識が一気に浮上する。


今までの事を全部思い出し心に不安と焦りが浮かぶ。


寝ていたであろう場所から一気に体を起こし叫ぶ。


「セツナっ!!」


俺の叫び声に、吃驚したように2つの顔がこちらを向いた。


「あ、サイラスさんおはようございます」


焦りを含んだ俺の呼びかけを、いつもの落ち着いた柔らかい感じの声で

返事を返すセツナ。


洞窟にいたというのは夢だったのか……?

そんな錯覚を起こしてしまいそうなほどセツナの声は穏やかだった。


俺の声に反応したのか、隣に寝ていたアルトが起きて一目散に

セツナのほうに駆け出す。


「し……ししょう!」


そして、座っているセツナにしがみついた。

そんなアルトの様子を苦笑交じりに見やり、アルトの頭を数回

安心させるようにぽんぽんと叩く。


「アルト、おはよう」


人の気持ちを緩めてしまいそうな声でアルトに挨拶をし

アルトも几帳面に挨拶を返す。


「ししょう、おはよう?」


そして、先ほどからアルトとセツナのやり取りをじっと見ている男に気がつき

アルトが息を詰める。


アルトの緊張が俺にも伝わったのか一気に緊張が走る。

アルトの尻尾は逆立っていた。


「アルト、サイラスさんこの人は敵じゃないから大丈夫ですよ」


俺もアルトも、そうは言われても眠らされる前の記憶が体に残っているから

簡単には信じられなかった。


アルトはセツナにしがみついたまま微動だにしない。


「アルト、この人はトゥーリのお兄さんなんだよ」


-……トゥーリ……?


俺には聞き覚えのない名前だけど、アルトにはあったようだ。

目を大きく開き、机をはさんでセツナの前に座っている男性に視線が釘付けだった。


「……」


男性は見られていても気にする風もなく、アルトを見返している。

その姿は先ほどの恐ろしいまでの殺気を纏っていた人物とは思えないほど

静かだった。


「おにいさん?」


アルトの呟きには返事をせずただ黙って見ているだけの男。


「……」


「トゥーリ、とめ、いっしょ」


アルトの言葉に男性の目がキラリと光る。


「トゥーリは私と似ていたか?」


男性の問いにコクコクと頷くアルト。

アルトの返事に満足したのかとても嬉しそうに笑う。


「そうか」


アルトと男性のやり取りにセツナが口を挟む。


「えー、アルトちゃんと見てごらん?

 全然似てないよ? トゥーリはこんな性格が悪そうな目はしていないでしょう?」


セツナの言葉に男性は不機嫌そうに片眉を上げた。


「それはどういう意味だ……セツナ」


「そのままの意味ですよ」


2人はそのまま暫く睨みあい、アルトがセツナと男性の間でオロオロしているのが

不憫だったので俺が口を挟む。


「セツナ? この方はセツナの知り合いだったのか?」


「名前だけ知ってました。お会いしたのは初めてだったんですけどね。

 彼は、リヴァイルさんといいます」


その後に続くセツナのセリフに俺は吃驚する事になる。


「僕の奥さんのお兄さんみたいですね」


「え!? 奥さん!? セツナ結婚していたのか!?」


「ええ、して……」


セツナが何か言う前に、男性がセツナより先に俺に答える。


「結婚はまだしていない、婚約を交わしただけだ」


「制約は交わしたんですけどね?」


「仮制約だろう……そんなのはすぐに破棄できる」


「僕は、トゥーリを妻だと思っているんですが?」


「思っているだけでは、婚姻を結んだ事にはならない」


ニヤリと意地悪そうな笑いをリヴァイルさんはセツナに向ける。

なにやら、複雑な事情がありそうだ……。


セツナは忌々しそうに、リヴァイルさんを見ていた。


-……セツナもあんな表情をするんだな……


どこか達観した感じに見えるセツナの少し意外な一面を

見たような気がして少し頬が緩んだ。


「……サイラスさん、何を笑っているんですか……」


「別に……仲がいいなっと思って……」


「何処をどう見れば、そうなるのだ」


リヴァイルさんが不満を零し、セツナは俺にそれは素晴らしい

笑みを向け俺を硬直させる。


「ええ、僕の妻のお兄さんですからね

 仲がいいのは当然ですよね?」


絶対腹の中ではそうは思っていないだろうと思われる言葉を吐く。


「私は、お前の兄ではない!」


2人がまた、にらみ合うのを見て

このまま不毛な言い争いを続けられるのも困るので

さっさと話題をかえることにする。


「セツナ……俺はどれぐらいの間寝ていた?」


正確にはセツナに眠らされたのだが……。


「1日ぐらいですね」


「そうか……」


セツナが俺の心の中を読んだように


「ここから、リペイド側の入り口まで4日ほどだそうです。

 リヴァイルさんが、転送魔法で送ってくれるそうですから

 思ったよりも早くリペイドにつきそうですね」


先ほどとは違った、暖かい笑みを俺に向けて頷いてくれる。

その笑みに少し安心しそして恥ずかしく思った。


-……自分が思っているより、セツナを頼りにしているようだ……。


セツナは椅子から立ち上がり、カバンから椅子を2脚出し

俺とアルトに座るよう促し、自分はお茶を入れに行く。


4人分のお茶を入れ、俺とアルトの前には簡単な食事を

それぞれの前に置きセツナも椅子に座った。


アルトはお腹がすいていたのだろうセツナの言葉に頷いて

すぐに食べ始めた。


「僕達はもう済ませたので気にしないで食べてくださいね」


俺も用意してくれたものを食べながら、セツナとリヴァイルさんの

話を聞いていた。


「リヴァイルさん、それで先ほどの話ですが……」


「断る」


俺達が寝ていたときにセツナはリヴァイルさんに

何かを頼んでいたんだろうか


「いいじゃないですか、減るものではないんですから」


「わからないのは、どうしてお前ではなくこいつに

 私の加護をかけなければいけないんだ」


そう言って俺を見るリヴァイルさん。


-……加護?


「僕にならかけてくれるんですか?」


「……」


リヴァイルさんが苦虫を噛み潰したような顔をする。


「加護ってなんですか?」


俺のことを話されているみたいなのでセツナに聞いてみる。


「竜の加護だよ」


「……え?」


「リヴァイルさんは竜だからね」


「……え……?」


俺の血の気がサーっと引いていく音が自分で聞こえる。

きっと今の俺は真っ青に違いない。


-……竜!?


ここ数百年、この大陸にいるという噂一つ聞かなかった種族だ。

数ある種族の中で最も長寿であり最強を謳う種族……。

その力ゆえに恐れられることも多い。


その竜族が神から与えられたといわれる能力の一つが、

自分が認めた相手に ”加護”を与えることができるというものだ。


竜の力の一部を与えられる事によって、身体能力だったり魔力だったり

力の底上げをしてもらえるらしい。

人間であれ獣人であれ、竜に認められ与えられる加護に、

憧れを抱く者は多いはずだ。


-竜が……なぜこんな所に?


ゴクリと喉がなる……。


俺だって、騎士を目指したときに憧れたのだ竜の加護に

子供の頃は、竜の契約騎士の物語も大好きだった。


できる事なら竜とあって見たいとも思っていたのだ。

その竜が、目の前に居る……言葉が詰まる……。


「リュ……竜?」


「ええ、そんな緊張しなくても……」


「え……あ……うーー」


俺の混乱振りを見てセツナが苦笑する。

なんで、セツナはこんなに落ち着いていられるんだ!

竜だぞ! 竜!


そこで気がつく、リヴァイルさんが竜だとするとその妹も竜のはず。

その妹がセツナの婚約者という事は……。


「セ……セツナも竜なのか……?」


「僕? 僕は人間ですよ。

 あんな、人を廃人に追い込むような殺気は出せません」


そう言って笑うが……あの殺気に飄々としていた姿を思い出すと

セツナも只者ではないのかもしれないと思った。


数回深呼吸し自分を落ち着ける。

チラチラっとリヴァイルさんを見ながらセツナに聞く。


「セツナはどうして俺に加護をつけようとしているんだ?」


「サイラスさんの主、リペイドの国第一王子、ユージン・リペイドさんの

 第一騎士に戻る為にはそれなりの大義名分が必要でしょう?」


セツナの口から出てきた、言葉に俺は固まる。


「……俺は……セツナにそこまで話してないよな?」


「ええ、でも主の名前を言ってましたからね、その名前を聞けば

 誰だか想像がつきますよね」


「……」


俺の質問をサラッと流しセツナが話を続ける。


「僕の推測でしかないのですが、宰相さんの計画では、

 この洞窟をサイラスさんが使い魔物を退治して、

 クットとの国交を回復させる為に、

 帝国に気がつかれない様に密命を受けそれを遂行し返って来た、

 というのがサイラスさんを騎士に戻す一番使いやすい理由かなと思います。

 それでもいいとは思うんですけどね。

 だけどこれでは、サイラスさんが洞窟を通ったという証拠がないんです。

 魔物もいなかったので、死骸を持って帰ることも出来ない」


「……」


「僕が証言してもいいですが……きっと納得はされないだろうと思います。

 後日、確認の為に兵をこの洞窟に派遣するとしてもサイラスさんが

 第一王子の騎士に戻れるまでとても時間がかかるのではないかと」


「……」


「今なら、誰もが納得するシナリオが作れそうですし」


「セツナの言うシナリオとは?」


「宰相さんのシナリオはそのままで、違うところは魔物との戦いに苦戦しているところを

 竜族のリヴァイルさんが見かねて助けたと、魔物に1人で向かっていく勇気に

 感心して" 加護 "をサイラスさんにかけた……そんな感じでしょうか?」


「なんだその茶番劇は」


リヴァイルさんが呆れたように言った。


「そう簡単には信じられませんが、実際加護をつけて戻ったら

 茶番劇も本当になりますよ」


そう言って笑うセツナ。


「私がここにいた理由はどう説明するつもりだ」


「そんなの人間にわかるわけないじゃないですか。

 教えてもらえなかったといえばいいんです」


「……」


「……」


セツナの、余りにも簡単なというか杜撰な言いように

閉口してしまう……。


「要は、リヴァイルさんの加護があれば誰も文句を言う事が出来ない。

 竜の加護はそれほど、貴重であり珍しいものであり……国が欲しがるものですよ」


「お前は、国家間の戦争に手を貸すのか?」


リヴァイルさんの言葉に、セツナがお茶の入ったカップを机の上に置く。

チラッと僕を見て


「僕としては……国家間の戦争に力を貸すつもりはありませんが

 このまま、帝国がリペイドを領土とし洞窟を通りクットにまで

 侵攻してくる様な事があれば、トゥーリの周りが血なまぐさくなってしまう。

 トゥーリに直接何かできるわけではありませんけど気分的に嫌ですしね」


「お前は自分の為にこいつを利用しようというのか」


意地の悪い質問をリヴァイルさんがセツナにぶつける。


「今回は、持ちつ持たれつというんですよ」


悪びれた様子を見せず、はっきりと言い切るセツナの言葉に

俺は嘘だと思った。


実際問題、この洞窟を通って帝国がクットに進行する事はほぼないだろう。

竜であるリヴァイルさんはこの洞窟を誰も

通る事ができないようにする事が出来るのだし


持ちつ持たれつではなく

セツナは俺の為に、その状況でできる事を出来る限りしてくれているのだ

確かに、婚約者の事も頭にあるんだろう。

でも今の段階ではそこまでする必要がない事も確かなのだから……。


セツナの気持ちに、胸が熱くなる。

その気持ちを静めるように、お茶を一口飲んだ。


「その宰相とやらのシナリオがお前と違うものだった場合

 どうするつもりなんだ?」


「納得しやすい方を選べばいいだけだと思います。

 選択肢がたくさんあるのはいい事ですしね」


「……ふーん、私があいつに加護をつけるとして

 あいつが暴走したらどうするつもりだ?

 私の加護は、身体能力の強化だ剣士ならピッタリの加護だろう。

 力が制御できるのなら、人間の中では最強に近くなるだろうな」


「別に、加護を持っている人がこの大陸にサイラスさんだけ

 ということはないのでしょう?」


「それはそうだが……」


「竜の大陸にも人間がいますし

 その人達が竜の加護をもらいこちらの大陸に渡ってくることも珍しくない。

 それに加護は、騎士契約とは違って破棄が簡単に出来るでしょう?」


セツナの言葉に頷くリヴァイルさん。

セツナは俺のほうを見ると、目をすっと細めて静かに言った。


「もし、力に溺れて暴走するような事があれば

 僕が責任を持って殺します」


いつもの菫色の瞳に違う色を見つけたような気がした……。

その視線に射られて息が止まる、今のセツナの言葉は本気だ……。


「そんな事はないと思いますけどね」


そういい、視線を俺から外す……。

鼓動がとてもうるさかった……。

あんな目をしたセツナを見たのは初めてだった。


-……セツナはいったい何者なんだろう……。


なぜ俺にここまでしてくれるんだろうか……。

色々考え出しそうな俺をリヴァイルさんの声で引き戻される。


「そうだな、セツナが私の願いを聞くならそいつに加護をつけてやってもいい」


「願い?」


「ああ、セツナ私と騎士契約をしろ」


リヴァイルさんのセリフに俺は驚愕する。

あの、物語に出てくる騎士契約!


良かったなっと声をかけようと隣を見ると……。

そこにはものすごく嫌そうな顔をしたセツナがいた……。


-……なぜ……そんなに嫌そうなんだ……。


「なぜ、寝首をいつかかれるかわからない人と騎士契約を

 結ばなければならないんでしょうか……」


セツナの言い分に少し納得する。

この2人の関係は複雑なんだろう。


「大体、騎士契約というのは竜が気に入った人とするものでしょう?

 リヴァイルさん……僕の事嫌いじゃないですか」


セツナのセリフにクククっと笑うリヴァイルさん。


「だからだろう? 何時でも殺せるから契約するのにちょうどいいんじゃないか」


……リヴァイルさんのセリフに絶句してしまう。

普通なら……ここは胸躍るわくわくするシーンのはずだ。

物語で言えば、一番盛り上がるシーンなのにこの盛り下がる感じはなんなのだろう。


『まぁ、それは半分本気だが……竜の国に戻ると

 竜王との契約をするように進められるだろうからな……』


『…… 確かに、そうかもしれませんね』


いきなり、リヴァイルさんの話す言葉が変わった。

セツナにはリヴァイルさんの話す言葉がわかるらしい……。

何を話しているのか気にはなるが、きっと俺は知らないほうがいいことなんだろう。


『それなら、お前でもいいから契約をしておいた方がいい』


『……トゥーリのためですか』


『それ以外に何がある』


『後悔しないんですか……騎士契約はどちらかが死ぬまで続くんですよ……』


『嫌になったらお前を殺せばいいことだろう?』


『僕を本気で殺せると思っているんですか……?』


『……』


『貴方に僕は殺せない』


『それでもいいさ……トゥーリが生きてくれるなら』


『……』


セツナが、何かを思案するように俯いた。

俺は2人の様子を見ている事しか出来ないが

何か深刻な話をしているだろうことはわかった。


「わかりました、僕はリヴァイルさんの条件を受け入れます」


セツナは真直ぐに、リヴァイルさんを見て返事をし

リヴァイルさんはセツナに頷いて答えていた。


竜の騎士契約を本当に見る事が出来るとは思わなかった。

俺が契約するわけではないが……子供の頃から憧れた情景に心動かすなという方が

無理だろう……。


本に書かれていた契約の方法は

竜が自分の剣を抜き、剣の柄を主に渡しその剣を主が受け取り

竜の剣の鞘に戻すことで契約の完了となるらしい。


その時に竜は主の願いを1つ聞くことになる。

その願いの内容は大体が、命を守って欲しいであるとか

死ぬまでそばにいて欲しいであるとか、自分の剣となり戦って欲しいとか

そういう類のものが多い。


物語の内容を思い出しながら、リヴァイルさんとセツナの契約を見守る。


「我が名、リヴァイルの名において

 セツナとここに契約す

 汝、我に何を求めるのか?」


そう言ってリヴァイルさんは剣を抜きセツナに渡す。

セツナは剣の柄を両手で握り、剣の刃を額に当て降ろす。


「我が名、セツナの名において

 我が望みをリヴァイルに乞う

 我、リヴァイルと対等であらん事を願う」


そう言って、セツナはリヴァイルさんの鞘に剣を戻した。

セツナの望みを聞いて驚愕の表情を見せるリヴァイルさん……。

そういう俺も、言葉が出ないほど驚いていた。


セツナの願い対等であるという事は、主従関係ではないということだ……。


「お前……何を考えている」


「別に……貴方と主従関係を結びたいわけではありませんし

 貴方は僕の兄ですからね?」


そういい、とてもいい顔で笑うセツナ


「私は、お前を弟とは認めていない!」


リヴァイルさんのセリフにセツナは笑い、ベルトから短剣を出し

右の手のひらをナイフで切った。


いきなり何をするのかと思ったが……契約はまだ途中だったらしい。


リヴァイルさんも右の手のひらを切りお互い握手を交わす……。


本当ならばこのシーンは……感動のシーンのはずなのに……。

2人の間には冷たい険悪な空気が流れている……。


それを見て俺は深い深い溜息を1つ吐いた……。

夢にまで見た……騎士契約をこんな形で見た事を少し恨めしく思ったのだった。


2人の体が淡く光り、契約が滞りなく完了したらしい。

自分とリヴァイルさんの傷を風の魔法で塞ぎ2人同時に溜息をついていた。


「……」


「……」


「おい……そこのサイラスという人間こちらに来い」


少し疲れた様子で俺を呼ぶリヴァイルさん。

俺は緊張しながらも、リヴァイルさんのそばに行く。


「我が名リヴァイルの名においてサイラスに竜の加護を与える」


リヴァイルさんがそう呟くと、俺の体が淡く光るそして俺の額に熱を感じる。

セツナが俺の額を見て


「あれ? サイラスさんの額に竜紋ですか……?」


「ああ、竜が騎士契約をした時や加護を与えた時につけるものだ」


「僕もトゥーリに加護を貰ったんですけどね?」


「別につけてもつけなくてもいいんだが

 お前は目に見えたほうがいいんだろう?」


そういいながら俺を見るリヴァイルさんに、コクコクと頷く。

俺は額をなでながらリヴァイルさんにお礼をいい、そしてセツナにもお礼を言った。


「リヴァイル様、加護をありがとうございました。

 この力大切に使わせて頂きます」


リヴァイルさんに、騎士の礼をとる。

俺の言葉に、リヴァイルさんは大仰に頷いた。


そしてセツナのほうを向き


「セツナ……ありが……とう」


俺の為に、たくさんの事を俺にしてくれたセツナにも

騎士の礼をとり……お礼を言った。言葉が詰まり俺は暫く顔を上げることが出来なかった。


「お礼は全て終わった後に受け取ります」


セツナの優しさを含んだ返事に、俺はただ頭を下げる事しか出来なかった。


読んでいただきありがとうございます。

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僕達の小説を読んでいただき、また応援いただきありがとうございます。
2025年3月5日にドラゴンノベルス様より
『刹那の風景6 : 暁 』が刊行されした。
活動報告
詳しくは上記の活動報告を見ていただけると嬉しいです。



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