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刹那の風景 第一章  作者: 緑青・薄浅黄
『アネモネ : 貴方を…… 』
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『 僕達と準備 』

 ドアをノックする音がする。


「はい、どうぞ」


僕の返事を確認してから、ドアを開けるサイラスさん。

この人の口調や態度からは想像できないのだけど

一つ一つの仕草がとても優雅に見えるのは騎士だからだろうか?


そんな風に考えながら、部屋に入ってきたサイラスさんを眺めていた。


「セツナ少しいいか?」


「大丈夫ですよ」


アルトはベッドに座って僕とサイラスさんを見ていた。


「船を使わずにリペイドに戻る方法が1つある……」


「そうなんですか?」


「ああ、ただ……そのルートはもう長い間使われていない上に 

 今どうなっているのか分からない……」


ゼグルの森から少し離れたところにある洞窟が

リペイドの国に通じている……か……。

頭の中で検索をかけ位置を確認する。


カイルも場所は知っていたが、通った事はないらしい。

転移でどこでもいけるのだから

わざわざ歩く必要もなかったのだろう。


ということは情報のない場所を歩く事になるのか……。

それはそれで新鮮かもしれないが

魔物というのが気になるところだ。


魔物の生態というのは余り解明されていないらしく

どれぐらいの間生きるのか、わかっていないらしい。


生きて戻ってきた人間が居ない事から

どのような魔物が居るのかもわからない。


-……生きているとしたら、戦闘になるのは避けられそうにないな……。


「それでだな、俺一人で帰ろうと思っている。

 もしかしたら、もう居ないかもしれないし……」


「サイラスさんらしい考え方ですね」


「……」


「僕達を危険に巻き込むのを心配してくれているんでしょうが

 もし、国王の毒が僕達が考えている毒じゃなかった場合どうするんですか?」


ほぼ、僕が考えている毒であっているとは思うが、もしかしたら違うものを

使っているかもしれないという可能性は少しだがあるのだ。


「それは……」


「また引き返してくるんですか? 僕は別にそれでもかまいませんが

 リスクは今以上ですね」


「……」


僕はサイラスさんに苦笑を向け


「1人で行くよりも生存率は上がると思いますよ?」


「……だが、生きてリペイドにつくかどうか保障できない」


「それは、僕に依頼をしてきたときから予想できていたことでしょう?」


僕の言葉に視線を床に落とす。


「それに、報酬を払わずに済ませるつもりなんですか?」


落とした視線をもう一度僕に戻し目があう


「僕はどこまでも取り立てに行きますよ?」


茶化すようにそうサイラスさんに告げると、本当に困ったという顔をして

僕に複雑な笑いを向けた。


「僕の命は僕のものです、僕が決めます。

 だから、サイラスさんは僕の命に対して責任を持たなくてもいい。

 アルトは僕が守ります、サイラスさんは自分の命だけを優先させてください。

 貴方が帰らなければ……国が1つ沈むんですから」


「おれも、たたかえる」


アルトが守られるだけはいやだと主張する。


「……すまない……」


僕は返事をせず頷いた。


「サイラスさんはいつもどのような武器を使ってたんですか?」


「俺は、クレイモアだな」


サイラスさんの話しを聞きながらカバンの中でクレイモアを作る。


-……体力回復……物理・魔法攻撃軽減でもつけておくかな……。


洞窟に何がいるかわからないので少し魔法を付与しておく。

完成したものをサイラスさんに渡す。


「サイラスさん、この剣をつかってください。

 その剣は差し上げます」


「え……? 」


僕から剣を受け取り、その剣をまじまじと見る。


「この剣……俺が前使っていたものよりもいいものだ。

 貰うわけには……金を払うといっても俺の貯蓄額より高そうだ……」


「お金なんていりませんよ、僕は使わないですし」


-……僕が作ったものだし……。


「しかし……」


「サイラスさん専用にならしてもらってかまわないですからね。

 武器になれてなくて、怪我をしましたなんてお話にならないでしょう?」


「……」


「武器屋に行って調整してきてもらってくださいね」


僕は、有無を言わさない笑みを作りお金を渡す。


「洞窟に何がいるのかわからないんですから」


「セツナは本当……言葉の丁寧さが余計話す内容に

 凶悪さを放っているよな……」


サイラスさんが少し溜息をつき、僕に視線を合わせ


「ありがとう、大切に使わせてもらう」


「ちょっとやそっとじゃ折れませんから

 ガンガン使ってください」


僕はカバンの中身でもう1つナイフを作りながら

サイラスさんに返事をする。


「それと後は……護身用のナイフ」


これにも少し魔法をかけておく、一度だけ自分の命の身代わりなるように。

これはアルトにも渡しておいた。


「少し特殊な魔法がかかったナイフです。 

 いつも持ち歩いてもらえるといいかもしれません」


アルトはベルトの隠しポケットに、サイラスさんは隠し武器を入れておくための

胸ポケットにしまいながら


「俺は今から武器屋に行って来る」


そういい、扉の方へ向かうサイラスさんに声をかける。


「そうだ、サイラスさんギルドに行って

 冒険者の登録をしておいてくださいね」


「冒険者……?」


「ええ、サイラスさん追放されていますから

 そのままだとリペイドに入れませんから……」


サイラスさんは、手の甲を口元に当て少し考えている。

やはり、一国の騎士が冒険者ギルドに登録するのは躊躇するものなんだろうか。


「嫌なら無理にとはいいませんが」


「あー、そうじゃない大丈夫だ登録時の名前を考えていただけだ」


「そうなんですか?」


「ああ、前々から興味もあったしな」


サラッとそんな事をいう。


「セツナは行かないのか?」


「挨拶した方がいいんですが

 ここで活動するわけではないので今回は行きません」


「わかった」


「……サイラスさん、1つ質問いいですか?」


僕を見る事で返事とするサイラスさん


「サイラスさんはリペイドの国で有名なんですか?」


「……それなりに……」


「それでは、髪の色と目の色を変えたほうがいいかもしれませんね

 それだけでも感じが変わりますし」


「そうだな……」


サイラスさんの髪の色は金色、瞳の色は濃いブルーだった。

リペイドの国の人達は金色の髪に、ブルーの瞳の人が多いらしい。


「髪の色がブルーブラック、瞳の色がダークグレーの魔道具ならありますが」


「セツナは何でも持ってるのな?」


「これはもらい物ですけどね……」


「貸してもらえるか?」


「ええ、指輪を外すと元に戻るので気をつけてくださいね」


僕はかばんの中から指輪を出しサイラスさんに渡す。

その指輪をすぐに指に嵌め鏡を見る。


「……」


「とても落ち着いた感じですね……。正直サイラスさんだとは

 誰もわからないんじゃないでしょうか……」


元の色が派手な感じだったので、少し地味に感じてしまうが

元がいいので、悪い感じではない。


自分の姿に違和感があるのか鏡の中の自分を見つめ

溜息をついていた。そして扉を出て行こうとする

サイラスさんの背中に、声をかける。


「サイラスさん、しっかり調整してきてくださいね」


暗に、気遣いをして中途半端に調整することがないように

釘を刺す。


サイラスさんが振り向き、眉間にしわを寄せ一言


「セツナにはもう遠慮なんてしねえ!」


そういい笑いながら出て行った。

そんなサイラスさんの態度に僕も笑いながらアルトに


「アルト、僕たちも買い物に行こうか」


洞窟の中がどうなっているのか、どれぐらいの距離がかかるのか

おおよそでしかわからないので念入りに準備をしたほうがいいだろう。


「はい」


アルトと一緒に出かけ、必要なものを買い宿屋に戻ってくる。

洞窟の場所はわかっているので、情報を集める必要はなさそうだ。


下手に情報を集めて、噂が広がるのも良くない……。

通行止めになっている洞窟なのだから、こっそりと向かうのが正解だろう。


夜宿屋に戻ってきたサイラスさんが登録した名前はラスだった。


「……サイラスさん、上半分を取っただけじゃないですか」


「しょうがないだろう? 思いつかなかったんだから!」


そんな話をしながら食事を一緒にとり2日ほどその村で過ごして


サイラスさんの武器の調整が終わるのを待って僕達はリペイドへとつながっている

洞窟へ向けて出発したのだった。



読んでいただきありがとうございます。


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2025年3月5日にドラゴンノベルス様より
『刹那の風景6 : 暁 』が刊行されした。
活動報告
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