『 小話:わいと人間 』
* 気の毒な魚視点。
今日ものんびり、泳いでたんや~。
そこに、うまそうなエビが目の前におよいどるように見えたんや。
食ったれと思って、口をあけて食いついたら逃げやがるから
むかついて、追いかけて食べたった。
それが……わしの運のつきやったんやな……。
エビを食った瞬間、口が引っ張られたんや!
なんや! 何事やっとあせってあわてて反対方向に泳ぐのに
口から糸がでてるやんけ!
こんなもん見たことないさかい、俺は必死に外そうともがくんやけど
とれへん……引っ張られる方へ行ったら嫌な予感がするもんやから
必死になって逃げるけど、とうとう岸にあげられてしもうた……。
その時気がついたんや……ああ人間につかまったんやと。
口から出ていた糸を外されて、小さい水の中に入れられた。
そこでくるくるくるくる不安にかられて泳いでたら。
小さい人間が、わしを持ち上げるんや!
わしは口をぱくぱくさせながら
水の中に入れろ! 入れやがれ! 苦しいやないか!
と叫ぶが人間には聞こえないんだろう。
大きい人間が、小さい水を指差しなんか言ったらあわてて
小さい人間がわしを水の中にもどしてくれたんや。
あ……死ぬかと思った。
これで安全かと思ったら、また小さい人間が持ち上げるやないか
いい加減にしやがれ! 殺すきか!
しっぽだけ水につけてどうするねん!
しっぽから呼吸してるんちがうんや!
泳ぎながら口から水を取り入れてえらで酸素を供給するんじゃ!
早く戻さんかぼけぇ!
必死になって口をぱくぱくさせるが気がつかない小さな人間
大きい人間が何か言ったら、また水の中に戻してもらえた。
もう少しで意識がなくなるところやった危なかった……。
大きい人間と、小さい人間が何か話しとる……。
小さい人間が、なにやら可哀想な目でわしを見とる……なんやねん。
だけど、大きい人間がわしにとって嫌なことを言ってる気がする。
おい、小さい人間わしのために頑張れ! わしの未来がかかってる気がする!
しかし、次に小さい人間がわしを見た目つきは……。
獲物を狙う目をしとったんや……。
あぁ、わしの人生……いや魚生が終わったっと思った。
アルトの日記
さかな、くち、ぱくぱくしてた。
じぶんで、つったさかな、おいしかった。
あした、またつりたいな。
読んでいただきありがとうございます。